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1.二兎湊の四季園入学 〜ライオン獣人との出会い〜
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僕、二兎湊は名前の通り兎族である。白色の髪に銀色のクリクリした目。そして兎族特有の長く垂れ下がった耳。それが兎族の特徴だ。兎族は普通の人間よりはお金持ちたが、獣人の中では下の方である。
兎族は警戒心が強く滅多に関係者以外は家に入れたりしない。だが、先日から珍しく他人の出入りがあった。
「これで、荷物は全てでしょうか?」
「はい。ではよろしくお願いします」
「しっかりと学園の方に運ばせて頂きます」
それでは、と父が引越し屋を玄関まで送り届ける。
白色で統一されたリビングの食卓には豪華な食事が並んでいた。父に見送りを任せて早々、母が僕の前で膝をついた。
「本当に学園に行っても大丈夫?」
僕の手を不安そうに包み込む。母は心配なのだろう。しかし、この国の法律上獣人は16歳になったら必ず四季園に入学することになっている。
「大丈夫だよ母さん。肉食と草食でも分かれてるし第2性のΩでも寮は分かれてるから。」
そう、僕は兎族だけでなくΩなのだ。タダでさえ兎族は発情しやすいのにΩなんて...と思ったことはある。でも薬も開発され普通に暮らせるようになった。
「もう...こんなに立派になって!」
すぐに戻ってきた父も目を潤ませていた。
「もう、成獣の準備期間なのか...」
そう。四季園に入学するということは、すなわち大人としての知識を付けるということだ。
将来家を継ぐ者としての勉強、そして結婚などについて学ぶのだ。
結婚....ついに来てしまった。まだ立派な大人では無い僕は婚約しか出来ないが相手を探さなければいけない。
「湊...あれについてはすぐじゃなくていいからね?」
父が見兼ねて言葉をかけた。
「礼儀に習って必ずしも従わないといけない訳じゃな─」
「それでも探してみるよ」
なんとしても探さなければいけない理由があるのだ。それは、二兎家には僕しか子供がいない。会社の後継者としても血を絶やすわけにはいかない。会社にも沢山の人が働いているのだから。
「まず、入学したら一通り探してみるよ」
「あぁ。そこまで言うなら応援するよ」
「では、明日の入学以降婚約者を探してみます。」
----------------------------------------
~四季園入学~
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」
学園長の話も終わり入学式はあっさりと終わった。肉食系獣人と一緒に参加するのはびっくりしたが距離も取られていたため本能的に逃げ出す者はいなかった。
「それでは寮に各自戻るように」
僕は草食系獣人のΩなので草食Ω棟に部屋が設けられた。寮は完全に何科や第2性によって分かれているから安心だ。1人1人に部屋があるのは助かる。
今日から3年間ここで暮らすんだ...しっかりやらなくてはと意気込んだ。
「じゃあまずは、荷物の整理を...─!!!」
その時だった。なんだ、この気配....こんな気配さっきまでしなかったのに...
「まさか、肉食系獣人?...」
兎族は気配に一段と敏感な種族だ。この気配、草食Ω棟に向かって来てる!?
「いやいや、本能的に凄く怖いんですけど?」
長い耳が音を拾う。段々近づいてる...?
──コンコン
「はぇっ?」
いやいや、扉がノックされたとしても出れるわけがない。だってノックしてる人がその気配を出している張本人なのだから!!
「あれ~?いるはずなのになぁ。出てこないならこの扉壊しちゃうよ?」
え、待って待って!脅迫はズルいって...
僕はおそるおそる扉を少し開けた。
「あ、あの~帰ってもらってもいいです──!」
「やっと...やっと会えた」
何言って...そう考えた時だった。いきなり正面から抱きつかれてしまった。
「う、うわぁぁあ!!!」
僕は悲鳴をあげた。目の前には金色の髪、陽気なように見える金茶色の目。端正で優雅さもある。いや、一体何が起こってるんだ?
「と、とにかく離してください...」
「あ、急にごめんね。俺は神楽雷。君の婚約者になりに来ました!」
にっこりと笑えばまるで猫みたいに愛想が良い。
──ん?いや待て...?神楽家って、ライオンの獣人種族!
それは湊にとって天敵の『ネコ科』のトップに位置する種族だった。
ま、まさか婚約立候補者が肉食系だなんて考えてもなかった。
「俺は、世界有数の企業の子息だし生活にもなんの問題もないと思うんだ」
目の前には愛想たっぷりの神楽雷で心臓がバクバクいっていた。
「どう?俺、相手としては最高のオスじゃない?」
オ、オスって.....
「なんなら、試してみる?絶対に気に入るよ?」
いきなりの混乱続きで頭がショートしそうになる。
「あ、あの...試す...とは?」
「テクニックは負けてない自信があるんだ」
「!?!?」
普通、初対面で関係を持とうとする人がいるだろうか。やっぱり危ない人だ!!!
「お、下ろしてぇぇぇっ!」
本能的にも人間的にも食われる!必死に抗ってもビクともしない。
「慌ててるのも可愛い」
と、言いながら頬をスリスリされた。大型の猫みたいだ。まぁ、ライオンだからあながち間違ってないけど。
「俺は、君が望むなら『いつでも』『何度でも』愛するからね」
化け物過ぎる。。普通は求婚して首を噛んでから....のはずなのに最初からベッド・インを提案されている。しかもそっちは絶倫とか絶対ムリ!!
「湊、俺を婚約者に選んで?」
う、上目遣いからの涙目!あざとい...いやいや、流されるな二兎湊!
「お、お断りします!」
僕は生まれて初めて肉食系獣人に求婚されました。。
NEXT.....
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兎族は警戒心が強く滅多に関係者以外は家に入れたりしない。だが、先日から珍しく他人の出入りがあった。
「これで、荷物は全てでしょうか?」
「はい。ではよろしくお願いします」
「しっかりと学園の方に運ばせて頂きます」
それでは、と父が引越し屋を玄関まで送り届ける。
白色で統一されたリビングの食卓には豪華な食事が並んでいた。父に見送りを任せて早々、母が僕の前で膝をついた。
「本当に学園に行っても大丈夫?」
僕の手を不安そうに包み込む。母は心配なのだろう。しかし、この国の法律上獣人は16歳になったら必ず四季園に入学することになっている。
「大丈夫だよ母さん。肉食と草食でも分かれてるし第2性のΩでも寮は分かれてるから。」
そう、僕は兎族だけでなくΩなのだ。タダでさえ兎族は発情しやすいのにΩなんて...と思ったことはある。でも薬も開発され普通に暮らせるようになった。
「もう...こんなに立派になって!」
すぐに戻ってきた父も目を潤ませていた。
「もう、成獣の準備期間なのか...」
そう。四季園に入学するということは、すなわち大人としての知識を付けるということだ。
将来家を継ぐ者としての勉強、そして結婚などについて学ぶのだ。
結婚....ついに来てしまった。まだ立派な大人では無い僕は婚約しか出来ないが相手を探さなければいけない。
「湊...あれについてはすぐじゃなくていいからね?」
父が見兼ねて言葉をかけた。
「礼儀に習って必ずしも従わないといけない訳じゃな─」
「それでも探してみるよ」
なんとしても探さなければいけない理由があるのだ。それは、二兎家には僕しか子供がいない。会社の後継者としても血を絶やすわけにはいかない。会社にも沢山の人が働いているのだから。
「まず、入学したら一通り探してみるよ」
「あぁ。そこまで言うなら応援するよ」
「では、明日の入学以降婚約者を探してみます。」
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~四季園入学~
「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」
学園長の話も終わり入学式はあっさりと終わった。肉食系獣人と一緒に参加するのはびっくりしたが距離も取られていたため本能的に逃げ出す者はいなかった。
「それでは寮に各自戻るように」
僕は草食系獣人のΩなので草食Ω棟に部屋が設けられた。寮は完全に何科や第2性によって分かれているから安心だ。1人1人に部屋があるのは助かる。
今日から3年間ここで暮らすんだ...しっかりやらなくてはと意気込んだ。
「じゃあまずは、荷物の整理を...─!!!」
その時だった。なんだ、この気配....こんな気配さっきまでしなかったのに...
「まさか、肉食系獣人?...」
兎族は気配に一段と敏感な種族だ。この気配、草食Ω棟に向かって来てる!?
「いやいや、本能的に凄く怖いんですけど?」
長い耳が音を拾う。段々近づいてる...?
──コンコン
「はぇっ?」
いやいや、扉がノックされたとしても出れるわけがない。だってノックしてる人がその気配を出している張本人なのだから!!
「あれ~?いるはずなのになぁ。出てこないならこの扉壊しちゃうよ?」
え、待って待って!脅迫はズルいって...
僕はおそるおそる扉を少し開けた。
「あ、あの~帰ってもらってもいいです──!」
「やっと...やっと会えた」
何言って...そう考えた時だった。いきなり正面から抱きつかれてしまった。
「う、うわぁぁあ!!!」
僕は悲鳴をあげた。目の前には金色の髪、陽気なように見える金茶色の目。端正で優雅さもある。いや、一体何が起こってるんだ?
「と、とにかく離してください...」
「あ、急にごめんね。俺は神楽雷。君の婚約者になりに来ました!」
にっこりと笑えばまるで猫みたいに愛想が良い。
──ん?いや待て...?神楽家って、ライオンの獣人種族!
それは湊にとって天敵の『ネコ科』のトップに位置する種族だった。
ま、まさか婚約立候補者が肉食系だなんて考えてもなかった。
「俺は、世界有数の企業の子息だし生活にもなんの問題もないと思うんだ」
目の前には愛想たっぷりの神楽雷で心臓がバクバクいっていた。
「どう?俺、相手としては最高のオスじゃない?」
オ、オスって.....
「なんなら、試してみる?絶対に気に入るよ?」
いきなりの混乱続きで頭がショートしそうになる。
「あ、あの...試す...とは?」
「テクニックは負けてない自信があるんだ」
「!?!?」
普通、初対面で関係を持とうとする人がいるだろうか。やっぱり危ない人だ!!!
「お、下ろしてぇぇぇっ!」
本能的にも人間的にも食われる!必死に抗ってもビクともしない。
「慌ててるのも可愛い」
と、言いながら頬をスリスリされた。大型の猫みたいだ。まぁ、ライオンだからあながち間違ってないけど。
「俺は、君が望むなら『いつでも』『何度でも』愛するからね」
化け物過ぎる。。普通は求婚して首を噛んでから....のはずなのに最初からベッド・インを提案されている。しかもそっちは絶倫とか絶対ムリ!!
「湊、俺を婚約者に選んで?」
う、上目遣いからの涙目!あざとい...いやいや、流されるな二兎湊!
「お、お断りします!」
僕は生まれて初めて肉食系獣人に求婚されました。。
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