月が僕らに送ったものは

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プロローグ

ロータス

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「眠れねぇ」
ロータスは窓際に腰掛けたまま緑の髪を揺らして溜息をつく。
等の昔に短針は0時を越え、自分の村は無音。何の音も光もなく、ロータス自身にも、何かをするアクティブな気持ちすらも持ち合わせておらず、ただぼう、とするだけであった。時折欠伸を洩らすがそれだけ。それ以外には何をするのでもなく、何を思ったかほんのりと淡く輝く月を見つめるだけだ。
つまらない、と思うのだが何をする気も何故か起きなかった。ロータスは相も変わらず月を見つめ続けると、1つ。チカと月ではない何かの反射の光が見えた。目を細めそれが何かを見ようと凝らす。

チカ、チカ。

それは少しずつ反射を増やしていることに気づいたロータスは1つ思い当たる。
(隕石か…?!)
驚き、困惑、そして好奇心。バタバタと音を鳴らして外へ出た。こんな経験誰も無いだろう!!
荒々しく扉を開けて夜空を見上げる。チカチカと光るその何かはまだ遠かった。
「こんな非日常、ありえないだろ…!」
上がる口角を手で押さえてじっ、と見る。誰も見てない、誰も気づかないこんな夜中に隕石が落ちてくるなんて!
その隕石とおぼしき何かの1つがボコン、とロータスの足元に鋭い刃のように落ちた。
「…え、?」
チラリ、と横を見ると黄の光を放つその拳程度の大きさの何かは地面に鋭い穴を開けていた。ヒヤリ、と背筋が凍る。何だこれは。こんなものが頭に当たれば流血沙汰どころの話ではない。慌てて扉を閉めるとほぼ同時にゴツリ、と鈍い音を鳴らしてそのなにかが家のドアを叩いた。
死ぬかもしれない、そんな恐怖に肩を震わせる。岩がドアを叩く音はやがて家のそこら中から聞こえた。慌てて耳を塞ぐ。きっと村人の皆も起きるだろう。何だ何だと皆がドアから出てくるのだ。そうしたら伝えれば良い。光る石が落ちてきたんだと。
ぐるぐると回る思考の中でロータスはキツく目を瞑った。早く、早く!さっさとあんな恐怖が消え去れば良い。むしろ夢ならば尚更良い。
五感を出来るだけ塞ぎ早く時間が過ぎれば良いと必死に願う。

(音が消えた…?)
手をゆっくりと耳から話す。耳が痛くなるほどの沈黙に少し安堵の溜息をついた。恐る恐る立ち上がりドアを開けた。皆もきっとそうしてるはずだ。
がちゃ、と無機質な音と共に目に飛び込んできたその光景にロータスは息を飲んだ。
「う、わ」
キラキラとイルミネーションのように、色とりどりの光に包まれたいつもの景色は似ても似つかないほど綺麗だった。
黄、青、赤、緑。認識できる色だけでも数え切れないほどカラフルに輝いている。
先程までの恐怖も忘れロータスは地面を踏み締めて外へ出た。近くの光る石に魅入られるようにフラフラとどこかへ歩きだす。どこへいくかなんて本人ですらよく分からない。
そしてやがて止まった。そっとしゃがみこみ緑の光を放つ拳大のそれの目前で立ち止まった。何故光っているのかもなにも分からないが、ロータスにとってそれが一番惹かれたのだ。何かは分からないが、その何かに来い、手に取れと言われているようなそんな不思議な感覚をもちながらもしゃがみ、そして手に取った。
「きれぇ、だな」
眠たいのか自分でもよく分からないまま、うまく回らない口を動かす。じっと見つめているとその緑色の石に似た何かは手の中にじわじわと溶けそして消えた。あぁ、溶けたと妙に納得したような様子でロータスは意識が途絶えた。

「ロータス!」
頭に衝撃を感じ、慌てて起きると村の友人が呆れたように首を降った。チカ、と空の光に目を向けるとそれは大きな太陽。全く状況が分からないまま慌てて両手を見ても何もなく、周りを見ても光る石どころか穴が開いたようすもなかった。
朝になっている……?
「昨日さ、石降ってきたよな…??」
ロータスの言葉に「はぁ?」と返す友人にふざけたような様子は見えなかった。だれも知らないそれは話さない方がいいのかもしれない。ロータスは慌てて夢だと訂正する。友人は鼻を鳴らして寝惚けてんなよ、と笑った。口角がひきつったことに友人は気付かなかったらしい。
(あれは、きっと夢だったのか)
手のひらを見ても溶けた石は何もなく、ただのいつも通りの自分の手のひらだけがあった。妙に心音が高くなった。
(隠さなくちゃ)
いつも通りの日常がやってきた。
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