上 下
19 / 28

エルフの里の結婚式 エルフの民はノリがいい!?

しおりを挟む
「では、改めまして、エルフの里を救った英雄。今野純平様と、マール王女の結婚の儀を執り行います」
「はい?」
 すでに、お祭り騒ぎは佳境に入っていた。
王族の結婚式と言っても、儀式の様の物が延々と繰り返される退屈なものではなく、飲めよ食えよの大騒ぎだ。
 古くから伝わる伝統の歌や、演奏。その音に合わせて、若い男女が踊るという、里の者なら誰もが参加できるものだった。
 気になるのは、人間や獣人。そして、エルフとその人たちのハーフらしき者が、結構な割合を占めている事だ。
 勝手なエルフのイメージは、排他的で純血主義なのだが、どうもそうではないらしい。
 マールによると、先ず排他的なのではなく、こんな森の奥深くに、腰を落ち着けようという人間があまりいないらしい。そりゃそうだ。
 純血主義に関しては、エルフ同士は非常に子供ができにくい。
そのため、ある程度大人になるまで、非常に大切に育てられる。
王になる者に関してのみ、純血のエルフである事が求められるが、それ以外は差別などもないらしい。
 それが何故か、排他的で純血主義という事になってしまったらしい。
確かに、このお祭りに参加している、他種族とエルフ達はとても仲がよさそうだ。

 リアナは祭りが始まってから、今まで延々と食べては飲みを続けている。もうベロンベロンになっているが、それでも、必死に肉にかじりつこうとしている。お腹は空かないはずなのだが。

 エリはエルフの男性とおしゃべりしている。イケメンエルフとお話ししながら、顔を赤らめたり、微笑んだりしているのが分かる。そして、何よりすごく楽しそうだ。完全に、女の子になってしまっている。
 いつも俺の感情が分かってしまう、エリの気持ちが分かった。これはかなり辛い。
そんな事を思っていると、エリが近づいてきた。
「純平が変な事考えている時、私がどんな気持ちか分かった? 反省しなさい」
そう耳打ちして、エリは去っていった。ホント、ごめんなさい。
 その後は、エルフの男性とではなく、女性の方に行ってお喋りしていた。
どうも、俺に反省させるためだけに、男性と話していたみたいだ。
 結構性格悪くないですか、神楽坂さん!! 
そんな事を思った瞬間、今度はこっちを見て、舌をペロリと出す。
 くそ、今度は可愛いじゃねえか!

 そして俺とマールは、お祭り会場となっている、広場に設置させられた壇上で、王様が謁見の間などで座っていそうな、豪華絢爛な椅子に座らされていた。
 そして、人間、エルフ問わずに次々と上がってきては、結婚のお祝と、今回の事件解決のお礼を言って下がっていく。
 さっき俺に話しかけに来たエリも、他の人たちに交じってやってきたのだった。

「純平様。私、純平様と結婚できて、とても幸せです」
 とても幸せそうなマール。どうしよう、本当にどうしよう。俺、責任なんて取れないよ?
「マール。なあ、マールが俺の事好きって思ってくれるのは嬉しいんだが、マールはまだ小さいんだから、もっと素敵な人に出会えるんじゃないのかな?」 
 今更、往生際が悪いのも分かっているが、心変わりしてもらえるなら……
「純平様。エルフは、少し人間と年の取りか方違うのですよ。私は今二十歳です。
リアナから、純平様が十八歳だと聞いておりますから、姉さん女房という事になりますね」
「そ、そうか、マールは二十歳だったんだな。もう大人だったんだ」
 まさかのリアナに続き、合法ロリ二連発である。しかも年上だった。
「そうですのよ、だから、大人のお勤めも問題ないのですよ」
 そんな事を耳打ちしてくるマール。もう僕の自制心は限界突破しそうです。
エルフの里の皆さんも祝福している。
 こ、これは良いってことですよね?

 う?背中に強烈なプレッシャー!?
しまった奴か!
回避は? いや、間に合うはずが合い!
俺はゆっくりと両手を上げる。
『エリ、俺は今、貴方の脳内に直接語り掛けています。どうか怒りをお沈め下さい。この場での争いは、必ずや禍根を残すことになるでしょう。後、僕は大変反省しております』
「チッ」
 舌打ちと共に、背後のプレッシャー場消えた。
危うく、エルフの里花婿殺人事件が起きるところだった。

 しかし、本当の事件はこれから起きるのだった。
「では、改めまして、エルフの里を救った英雄。今野純平様と、マール王女の結婚の儀を執り行います」
「はい?」
 会場は熱狂に包まれている。何だこれは?
改めて、結婚の儀?この結婚式の事ではないのか?
 会場では既に、早くやれだの、接吻コールが始まっている
王族の結婚式とは思えない砕けっぷりだ。

「純平様、皆の前で改めて、誓いの契りを結びましょう」
 あの時は急にキスされたから、止められなかったが。
今から改めてなんて、心の準備ができていない。
 すでに、マールは席を立ち、こちらを向いて目を瞑っている。
おいおい、無理だって。童貞舐めんなよ!
「純平様、王女である私に、恥をかかせるおつもりですか?」
 何か、昨晩も同じセリフを聞いた気がする。
 ど、どうしたらいいんだ!?

「ちょっと待ったーーーーーーー!」
 掛け声とともに、檀上中央に現れたのはエリだった。
「だ、駄目よ。こればっかりは見逃せないわ」
 会場がざわめきだす。
これに気付いたリアナも壇上に登ってきた。
「エリ、なんっすか?」
「今からマールと純平が、またキスしようとしてるのよ!」
「旦那様! それは許さないっす!」

 どうしよう。これは、戦争か? 戦争が起きるのか?

「ちょっと待ったコール入りましたー!」
 うおーーーーーーーーーーー!
司会の宣言と共に、会場がさらにヒートアップする。

 俺も、エリも自体が飲み込めず。キョロキョロしてしまっている。
リアナはシャアシャア、言っている。何度も言うが、お前はうさぎのはずだろう。

「仕方ありませんわね。お二人とも、勝負ですわ!」
 幼女エルフが腕組をみして、宣戦布告した。

 うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
 マールのその一言で、会場の熱気は最高潮に達する。

 もう、意味が分からない。
しおりを挟む

処理中です...