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魔法少女遭遇編
20話 最強スキル
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シンプルで明白な一言。
僕の言い放った言葉に対し、ゴルンが大爆笑しながら、
「ぷっふーっ! 死ね? 死ぬのはお前だっつーの! 俺とカルン兄貴に勝てるとでも思ってるのか? 最近ここいらのガルフの生息域がおかしくなったのはな、俺たちがレベル上げで狩り尽くしてたんだよ。その意味わかる? 理解できます? つまり、俺とカルン兄貴のレベルはもう余裕で20を超えてるんだよ!」
「ああー、今の一言は宣戦布告と受け取るぜ? 馬鹿が、そんな紙みたいな装備で俺たちとやろうなんてーなぁっ!」
躊躇なく、カルンが刀を振りかぶる。
これで僕も最後の良心をかなぐり捨てることができる。その凶行が僕の首もとに触れる直前、カルンの動きがピタリと静止した。
「……ぉ、い。お前、俺になにを、した? なにを、しやがった?!」
「ど、どうしたんだ? カルン兄貴?」
急なカルンの叫びに、ゴルンが動揺する。
「ああ、動けないだろう。僕が縛ってるんだよ」
触手の大きさ、太さは自由自在に変化できる。
僕が触術師であること、カルンの身体が今どういう状態にあるのかということ。僕は一字一句正確に、わかりやすいようゆっくりと伝えていく。
――触手を糸状にして、カルンの体内に張り巡らせているのだと。
「この触手、もとの大きさに戻したらどうなると思う?」
「……ま、待って、くれ」
現状を理解したであろうカルンが震え声で言う。
「ほ、ほ、本当に待ってくれ! 謝る、謝るっ! 謝るがらやめでくれえぇええええええええええええぁああええぇごびゅばぶぅっ!!」
僕は触手をもとの大きさに戻す。
カルンの身体が水風船のように爆散、四方八方赤い液体を撒き散らしながら弾け飛んだ。
――べちゃり、べちゃり。
泥濘んだ水溜りを歩くような音が鳴り響き、カルンであったものの肉片がゴルンとヒーラーの衣服にへばり付く。
リーダー格を先に潰すのは鉄則だ、残党はもうまともに機能することはない。
「ひぃ、ひひぃいっ! カルン兄貴ぃい?!」
「ぎぃやぁあああああああああああああっ!」
腰を抜かすゴルンとヒーラー、僕は同じく触手をゴルンの体内に張り巡らせる。
スキルの創意工夫、触手が自由自在に変化できる時点で、生物相手には最強に近いスキルだと想定はしていた。
――極限まで細くした形状。
視認すら難しく、触手が体内に侵入したことを察知できるものはまずいない。
最早、蚊に刺されたくらいのレベルだろう。息をしている間にも『死』が全身にまとわりつく。
僕は腰を抜かすゴルンに目線を合わせるよう屈み、
「いくつか聞きたいことがある」
「は、はひ」
「手配書と言っていたけれど、僕のことはどこで知った?」
「ぁ、アクアニアスで配っていたんだ。緊急の依頼で報酬も高額で」
コールディンだろう、想像以上に手回しがいい。
すでにアクアニアス中に情報が広がっているのか、一刻も早くウィンディア・ウィンドに移動せねばならない。
ゴルンはガチガチと歯を鳴らしながら、
「べ、別に俺たちはお前をメインで探してたんじゃない! いつものようにガルフを狩ろうと森を探索していた時、あのミミモケ族の男が話を持ちかけてきたんだ! 本当にたまたまなんだよっ!」
「そのたまたまで村を焼き払って、村人を殺し回っていたのか?」
「カルン兄貴の指示なんだ! 俺は無理やり付き合わされだだけなんだっ!!」
見苦しい。
「俺はなにも悪くないんだよぉ」
保身だけに走る。
「最後にもう一つ、君はいつからこの世界に来た?」
「い、一ヶ月前くらいだ。オンリー・テイルはカルン兄貴とハマってずっと一緒にプレイしてたんだよ。いきなり世界があんなことになって、気付いたらここに」
「なるほどね」
触手を一部戻し、ゴルンの両腕を弾き飛ばす。
「ぐゎわぎゃぁああっ! 俺の、腕? 痛い、痛い、痛いぃいいっ! 話したら助けてくれるんじゃないのかよぉおおおおおお?! おいヒーラー、早く治せ、治せ、俺の腕を治せぇえええええええええええええええええっ!」
ゴルンがヒーラーに吠える。
「む、無理! というより無駄ですっ! こ、こんな原型をとどめていないもの回復できるわけが」
「ごめんごめん。操作を間違えちゃったよ」
僕は苦しませたことをゴルンに詫び、訂正して言い直す。
「頭とね」
「ごびゅばぶぅっ!!」
ぱちゅんと、ゴルンの頭が弾け飛ぶ。
部屋に侵入した害虫を駆除するよう、この残虐な行為に対し――なんの感情も湧くことはなかった。
「は、はふ、はひひはぁっ」
ゴルンの死を間近で見たヒーラーが、声にならない声を上げ走り出した。
申しわけないが、このヒーラーが無理やり連れて来られただけとしても関係ない。目撃者という時点で――全て消す。
絶対に逃しはしない。
僕はゴルンから触手を解き、ヒーラーに標的を変更しようとしたその瞬間、一陣の風と共にヒーラーの胴体が真っ二つにされる。
誰がどうしたかは――すぐに理解できた。
「……ナコ」
「クーラ一人だけに背負わせたくありません」
大剣を振りかざしながらナコは言った。
「私はクーラと共に行きます」
僕の言い放った言葉に対し、ゴルンが大爆笑しながら、
「ぷっふーっ! 死ね? 死ぬのはお前だっつーの! 俺とカルン兄貴に勝てるとでも思ってるのか? 最近ここいらのガルフの生息域がおかしくなったのはな、俺たちがレベル上げで狩り尽くしてたんだよ。その意味わかる? 理解できます? つまり、俺とカルン兄貴のレベルはもう余裕で20を超えてるんだよ!」
「ああー、今の一言は宣戦布告と受け取るぜ? 馬鹿が、そんな紙みたいな装備で俺たちとやろうなんてーなぁっ!」
躊躇なく、カルンが刀を振りかぶる。
これで僕も最後の良心をかなぐり捨てることができる。その凶行が僕の首もとに触れる直前、カルンの動きがピタリと静止した。
「……ぉ、い。お前、俺になにを、した? なにを、しやがった?!」
「ど、どうしたんだ? カルン兄貴?」
急なカルンの叫びに、ゴルンが動揺する。
「ああ、動けないだろう。僕が縛ってるんだよ」
触手の大きさ、太さは自由自在に変化できる。
僕が触術師であること、カルンの身体が今どういう状態にあるのかということ。僕は一字一句正確に、わかりやすいようゆっくりと伝えていく。
――触手を糸状にして、カルンの体内に張り巡らせているのだと。
「この触手、もとの大きさに戻したらどうなると思う?」
「……ま、待って、くれ」
現状を理解したであろうカルンが震え声で言う。
「ほ、ほ、本当に待ってくれ! 謝る、謝るっ! 謝るがらやめでくれえぇええええええええええええぁああええぇごびゅばぶぅっ!!」
僕は触手をもとの大きさに戻す。
カルンの身体が水風船のように爆散、四方八方赤い液体を撒き散らしながら弾け飛んだ。
――べちゃり、べちゃり。
泥濘んだ水溜りを歩くような音が鳴り響き、カルンであったものの肉片がゴルンとヒーラーの衣服にへばり付く。
リーダー格を先に潰すのは鉄則だ、残党はもうまともに機能することはない。
「ひぃ、ひひぃいっ! カルン兄貴ぃい?!」
「ぎぃやぁあああああああああああああっ!」
腰を抜かすゴルンとヒーラー、僕は同じく触手をゴルンの体内に張り巡らせる。
スキルの創意工夫、触手が自由自在に変化できる時点で、生物相手には最強に近いスキルだと想定はしていた。
――極限まで細くした形状。
視認すら難しく、触手が体内に侵入したことを察知できるものはまずいない。
最早、蚊に刺されたくらいのレベルだろう。息をしている間にも『死』が全身にまとわりつく。
僕は腰を抜かすゴルンに目線を合わせるよう屈み、
「いくつか聞きたいことがある」
「は、はひ」
「手配書と言っていたけれど、僕のことはどこで知った?」
「ぁ、アクアニアスで配っていたんだ。緊急の依頼で報酬も高額で」
コールディンだろう、想像以上に手回しがいい。
すでにアクアニアス中に情報が広がっているのか、一刻も早くウィンディア・ウィンドに移動せねばならない。
ゴルンはガチガチと歯を鳴らしながら、
「べ、別に俺たちはお前をメインで探してたんじゃない! いつものようにガルフを狩ろうと森を探索していた時、あのミミモケ族の男が話を持ちかけてきたんだ! 本当にたまたまなんだよっ!」
「そのたまたまで村を焼き払って、村人を殺し回っていたのか?」
「カルン兄貴の指示なんだ! 俺は無理やり付き合わされだだけなんだっ!!」
見苦しい。
「俺はなにも悪くないんだよぉ」
保身だけに走る。
「最後にもう一つ、君はいつからこの世界に来た?」
「い、一ヶ月前くらいだ。オンリー・テイルはカルン兄貴とハマってずっと一緒にプレイしてたんだよ。いきなり世界があんなことになって、気付いたらここに」
「なるほどね」
触手を一部戻し、ゴルンの両腕を弾き飛ばす。
「ぐゎわぎゃぁああっ! 俺の、腕? 痛い、痛い、痛いぃいいっ! 話したら助けてくれるんじゃないのかよぉおおおおおお?! おいヒーラー、早く治せ、治せ、俺の腕を治せぇえええええええええええええええええっ!」
ゴルンがヒーラーに吠える。
「む、無理! というより無駄ですっ! こ、こんな原型をとどめていないもの回復できるわけが」
「ごめんごめん。操作を間違えちゃったよ」
僕は苦しませたことをゴルンに詫び、訂正して言い直す。
「頭とね」
「ごびゅばぶぅっ!!」
ぱちゅんと、ゴルンの頭が弾け飛ぶ。
部屋に侵入した害虫を駆除するよう、この残虐な行為に対し――なんの感情も湧くことはなかった。
「は、はふ、はひひはぁっ」
ゴルンの死を間近で見たヒーラーが、声にならない声を上げ走り出した。
申しわけないが、このヒーラーが無理やり連れて来られただけとしても関係ない。目撃者という時点で――全て消す。
絶対に逃しはしない。
僕はゴルンから触手を解き、ヒーラーに標的を変更しようとしたその瞬間、一陣の風と共にヒーラーの胴体が真っ二つにされる。
誰がどうしたかは――すぐに理解できた。
「……ナコ」
「クーラ一人だけに背負わせたくありません」
大剣を振りかざしながらナコは言った。
「私はクーラと共に行きます」
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