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氷迷宮の迷い子編
30話 シークレットバトル 前編
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「リーナの話はこれで終わり。クーちゃんに黒猫ちゃん、付き合ってくれてありがとうね。明日に備えてキャンプ地に戻ろっかー」
僕とナコは頷き、リーナのスキルに身を任せる。
リーナが教えてくれたことは、僕たちの旅路に置いて大きな礎となるだろう。未知のエリアがあるなんて想像もしていなかった。
リーナの言葉通り、僕の概念は見事に壊された。
知識だけでは通用しない領域が確実に存在する。"さらなる警告を胸に"、気を引き締めていかねばならないだろう。
刻み込め――軽視してはいけない。
キャンプ地に戻る最中、僕の身体が赤く光り始めた。
早速とばかりに、未知なる現象が僕に襲い来る。問いかけるようリーナに視線を向けるが、リーナも不測の事態のようで――首をブンブンと振り返してきた。
「僕の持ちもの、なにかのアイテムに反応しているのか?」
アイテムボックスを開くと、ゴーレムの魔核のアイコンが赤く光っていた。
……反応し合っている?
いやな予感がしたと同時、ガチャリとなにか砕けたであろう金属音――大きく蠢く物体が視界に映り込んだ。
――おぞましい殺気が周囲を取り巻く。
鎖の拘束が解かれ――動いて、いる? 動いている。
両手の大砲をこちらに向け、完全に捕捉されていることに僕は気付いた。キュィィンと耳を劈くような音、砲身が赤みを帯びていく。
その矛先は――真っ直ぐにナコを捉えていた。
想定外の事態に、誰も微動だにできない。
先ほどの教訓、戒めを胸に深く刻み込んだ僕以外――である。僕は足もとに触手を展開させ、ナコに向かって全力で飛び込んだ。
ナコを突き飛ばし、敵からの攻撃を身代わりに――僕は被弾した。
爆発音、その勢いのままに壁へとめり込む。耐性があるとはいえ、弾丸自体の物理的なダメージまでは拭えない。
全身が粉々になったかのような衝撃、呼吸することもかなわず――口から溢れ出す苦い血の味で無理やり意識を繋ぎ止める。
《 即死の無効化を発動! 効果――即死を無効化後、そのダメージを全回復する 》
脳内に強化効果――発動したバフの詳細が映し出される。
文字でもありイラストでもあり、なんとも親切でわかりやすい。頭に直接インストールされているかのよう、全てを瞬時に理解できた。
オートで発動するバフと、任意により発動するバフ。
ファーポッシで獲得したバフがここに来て僕を救った、捕食して血肉となったものが僕の『命』を救ったのだ。
このバフが発動したということは、本来ならば今の一撃で僕は即死していたのだろう。
……身体が、動かない。
受けたダメージは瞬時に回復したが、脳内の処理が追いついていない。
即死無効、計り知れないほど強力なバフであるが――強烈な痛みだけがまだ残っており強制的なバインド状態となっていた。
痛みの残留は唯一の弱点か。
生きていると伝えたいところだが――声が出ない、出せない。遠目にて――ナコが目に涙を浮かべながら、全身を震わせている姿が見えた。
まずい、このままだとナコは――、
「お前っ! クーラに、、なにを、、、したァアアぁぁああああああああああああああああーっ!!」
――猛り狂い、要塞型ゴーレムに飛びかかった。
その身には黒い波動をまとわせている。なんだ、あれは? 今までに見たことのないナコの姿だった。
「黒猫ちゃん、駄目! 待ってっ!!」
リーナが制止の声を上げるが、ナコはとまらない。
「絶対に、許さない! 許さない許さない許さない――殺してやるっ!!」
荒ぶる獣のよう、ナコが咆哮する。
目を見張る速度、一瞬にして要塞型ゴーレムの胸もとに飛び付き、ナコはハッピーを大きく振りかざし勢いよく斬り付けた。
硬いものを力尽くで削り取るかの轟音、ナコの一撃を受けて要塞型ゴーレムの身体が揺らいだ。
今までのナコを見てきた限り、魔法少女は感情によって強さが大きく変動している節がある。
感情が昂ぶっている時のナコは――強い。
要塞型ゴーレムの外装がナコの激しい攻撃により剥がれていく。
傍目にも、ナコ優勢と断言していいほど圧倒していた。異常なまでのこの強さ、あの黒い波動が関係しているのか?
だが、ナコの猛攻も虚しく――再生機能が備わっているのか、剥がれた外装がすぐに回帰していく。
全力はいつまでも続かない。
無尽蔵に戦うことのできたゲームのキャラクターとは違う。僕たちの体力は今となっては有限なのだ。
このままでは、ナコの体力が先に尽きるのは明白――、
「……っ! リーナ、リーナっ!!」
「クーちゃん?! よかった、完全に死んだかと思ったーっ!!」
――僕の呼び声に気付き、リーナが駆け寄って来る。
「なんとか生きてるよ。時間がないから端的に言うけど、今から僕はナコに加勢して来る。リーナはここである瞬間まで待機していてほしい」
「えぇっ! 加勢って正気? 逃げないの?!」
「僕に直撃した大砲の攻撃を見ただろ。あの砲撃速度、もとの場所に戻る前に狙い撃ちで全員殺される可能性が高い」
僕は倒すべき対象を――要塞型ゴーレムの全貌を目に刻み込む。
「進むしかないんだ。やつを――打ち破る」
「……わかった。リーナはどうしたらいい?」
「一つ作戦がある。僕が合図したら要塞型ゴーレムの両足に向かって、パイロキネシスを放ってほしい」
そう言い残し、僕はその場をあとにする。
ようやく、身体の方が落ち着いた――手は動く、足も動く、呼吸にも問題はない。
僕は足もとに触手を展開させ、ナコのもとへと全力で駆け走った。
僕とナコは頷き、リーナのスキルに身を任せる。
リーナが教えてくれたことは、僕たちの旅路に置いて大きな礎となるだろう。未知のエリアがあるなんて想像もしていなかった。
リーナの言葉通り、僕の概念は見事に壊された。
知識だけでは通用しない領域が確実に存在する。"さらなる警告を胸に"、気を引き締めていかねばならないだろう。
刻み込め――軽視してはいけない。
キャンプ地に戻る最中、僕の身体が赤く光り始めた。
早速とばかりに、未知なる現象が僕に襲い来る。問いかけるようリーナに視線を向けるが、リーナも不測の事態のようで――首をブンブンと振り返してきた。
「僕の持ちもの、なにかのアイテムに反応しているのか?」
アイテムボックスを開くと、ゴーレムの魔核のアイコンが赤く光っていた。
……反応し合っている?
いやな予感がしたと同時、ガチャリとなにか砕けたであろう金属音――大きく蠢く物体が視界に映り込んだ。
――おぞましい殺気が周囲を取り巻く。
鎖の拘束が解かれ――動いて、いる? 動いている。
両手の大砲をこちらに向け、完全に捕捉されていることに僕は気付いた。キュィィンと耳を劈くような音、砲身が赤みを帯びていく。
その矛先は――真っ直ぐにナコを捉えていた。
想定外の事態に、誰も微動だにできない。
先ほどの教訓、戒めを胸に深く刻み込んだ僕以外――である。僕は足もとに触手を展開させ、ナコに向かって全力で飛び込んだ。
ナコを突き飛ばし、敵からの攻撃を身代わりに――僕は被弾した。
爆発音、その勢いのままに壁へとめり込む。耐性があるとはいえ、弾丸自体の物理的なダメージまでは拭えない。
全身が粉々になったかのような衝撃、呼吸することもかなわず――口から溢れ出す苦い血の味で無理やり意識を繋ぎ止める。
《 即死の無効化を発動! 効果――即死を無効化後、そのダメージを全回復する 》
脳内に強化効果――発動したバフの詳細が映し出される。
文字でもありイラストでもあり、なんとも親切でわかりやすい。頭に直接インストールされているかのよう、全てを瞬時に理解できた。
オートで発動するバフと、任意により発動するバフ。
ファーポッシで獲得したバフがここに来て僕を救った、捕食して血肉となったものが僕の『命』を救ったのだ。
このバフが発動したということは、本来ならば今の一撃で僕は即死していたのだろう。
……身体が、動かない。
受けたダメージは瞬時に回復したが、脳内の処理が追いついていない。
即死無効、計り知れないほど強力なバフであるが――強烈な痛みだけがまだ残っており強制的なバインド状態となっていた。
痛みの残留は唯一の弱点か。
生きていると伝えたいところだが――声が出ない、出せない。遠目にて――ナコが目に涙を浮かべながら、全身を震わせている姿が見えた。
まずい、このままだとナコは――、
「お前っ! クーラに、、なにを、、、したァアアぁぁああああああああああああああああーっ!!」
――猛り狂い、要塞型ゴーレムに飛びかかった。
その身には黒い波動をまとわせている。なんだ、あれは? 今までに見たことのないナコの姿だった。
「黒猫ちゃん、駄目! 待ってっ!!」
リーナが制止の声を上げるが、ナコはとまらない。
「絶対に、許さない! 許さない許さない許さない――殺してやるっ!!」
荒ぶる獣のよう、ナコが咆哮する。
目を見張る速度、一瞬にして要塞型ゴーレムの胸もとに飛び付き、ナコはハッピーを大きく振りかざし勢いよく斬り付けた。
硬いものを力尽くで削り取るかの轟音、ナコの一撃を受けて要塞型ゴーレムの身体が揺らいだ。
今までのナコを見てきた限り、魔法少女は感情によって強さが大きく変動している節がある。
感情が昂ぶっている時のナコは――強い。
要塞型ゴーレムの外装がナコの激しい攻撃により剥がれていく。
傍目にも、ナコ優勢と断言していいほど圧倒していた。異常なまでのこの強さ、あの黒い波動が関係しているのか?
だが、ナコの猛攻も虚しく――再生機能が備わっているのか、剥がれた外装がすぐに回帰していく。
全力はいつまでも続かない。
無尽蔵に戦うことのできたゲームのキャラクターとは違う。僕たちの体力は今となっては有限なのだ。
このままでは、ナコの体力が先に尽きるのは明白――、
「……っ! リーナ、リーナっ!!」
「クーちゃん?! よかった、完全に死んだかと思ったーっ!!」
――僕の呼び声に気付き、リーナが駆け寄って来る。
「なんとか生きてるよ。時間がないから端的に言うけど、今から僕はナコに加勢して来る。リーナはここである瞬間まで待機していてほしい」
「えぇっ! 加勢って正気? 逃げないの?!」
「僕に直撃した大砲の攻撃を見ただろ。あの砲撃速度、もとの場所に戻る前に狙い撃ちで全員殺される可能性が高い」
僕は倒すべき対象を――要塞型ゴーレムの全貌を目に刻み込む。
「進むしかないんだ。やつを――打ち破る」
「……わかった。リーナはどうしたらいい?」
「一つ作戦がある。僕が合図したら要塞型ゴーレムの両足に向かって、パイロキネシスを放ってほしい」
そう言い残し、僕はその場をあとにする。
ようやく、身体の方が落ち着いた――手は動く、足も動く、呼吸にも問題はない。
僕は足もとに触手を展開させ、ナコのもとへと全力で駆け走った。
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