96 / 426
最強の武者Gozaru編
96話 ゴザルの想い
しおりを挟む
「そ、そろそろ、私のことも名前だけで呼んでくれない?」
その一言に僕は考え込んでしまう。
「……ゴザルさんはゴザルさんまでがセットっていうか。さん付けしないとって使命感が湧くほどの豪胆な姿だったから」
「それって全身が鎧の時の話でしょっ!」
確かに、過去の堅固な姿はもうない。
鎧という殻はなくなり、とてつもない美人が飛び出してきた状態だ。小柄で小動物的な雰囲気も加味するならば――、
「ゴザルちゃんって感じだけどな」
「ちゃん付けはやだ」
――秒で否定される。
「ゴザル」
「ひゃ、ひゃいっ」
「返事の声が裏返ってるよ」
「呼ぶ前に申告しなさいよっ!」
注文の多いお方である。
「じゃあ、もう一回呼んでちょうだい」
「改めて言うとなると気恥ずかしくなってくるんだけど」
「ほら、早く」
「ゴザル」
「うんっ!」
満足そうにゴザルが微笑む。
「ソラに直接そう呼ばれる日が来るってすごく嬉しいな」
「触診で見た時、僕に会えて嬉しいって表示されてたもんね」
「も、もうその話は忘れなさいよ。私の初めてのフレンドなんだから、約束の日だって会えるの楽しみにしてたんだからね。私、こういう性格だからもとの世界で仲の良い友達なんて一人もいなかったし」
「ぽいぽい」
「少しは否定しなさいよっ!」
「友達の件は置いとくとして、ゴザルの家族が転生している可能性はないの?」
「私ね、家族はいないの」
ゴザルさんは言う。
「気にしないで、話しの流れからそう尋ねるのは普通のことよ。暗い話になっちゃうから詳細は省くけど、私は"Nightmares"の皆が心からの友であり家族みたいなものだったの。だから、もとの世界にそこまで未練なんてないわ」
暗い話、か。
なんとなく想像は付く――家族とは絶縁、家族は亡くなっている、どちらの線もありえる話だ。
無論、その件について深く言及することはない。
仕事はいいの? なんて野暮なことも聞くまい。未練がないと言うのなら、その言葉を真っ直ぐに受け止めるべきだ。
「……私ね、ソラに会えて本当に嬉しかったのよ」
ゴザルが僕の手をそっと握る。
握り返すと安心したのか、ゴザルがゆっくりと目を閉じる。
大量のモンスターにボスの討伐、さすがに疲れが溜まっていたのだろう。
しばらくすると、小さな寝息が聞こえ始めた。
「寝顔だけ見てると、超人的な強さが嘘のように思え――ぐぼわっ」
不意の一蹴り、ベッドから弾き飛ばされる。
な、なんつー衝撃、それがゴザルの寝相の悪さだということに気が付く。
やはり、ゴザルはゴザルであった。
寝ていても――十二分に強かった。
その一言に僕は考え込んでしまう。
「……ゴザルさんはゴザルさんまでがセットっていうか。さん付けしないとって使命感が湧くほどの豪胆な姿だったから」
「それって全身が鎧の時の話でしょっ!」
確かに、過去の堅固な姿はもうない。
鎧という殻はなくなり、とてつもない美人が飛び出してきた状態だ。小柄で小動物的な雰囲気も加味するならば――、
「ゴザルちゃんって感じだけどな」
「ちゃん付けはやだ」
――秒で否定される。
「ゴザル」
「ひゃ、ひゃいっ」
「返事の声が裏返ってるよ」
「呼ぶ前に申告しなさいよっ!」
注文の多いお方である。
「じゃあ、もう一回呼んでちょうだい」
「改めて言うとなると気恥ずかしくなってくるんだけど」
「ほら、早く」
「ゴザル」
「うんっ!」
満足そうにゴザルが微笑む。
「ソラに直接そう呼ばれる日が来るってすごく嬉しいな」
「触診で見た時、僕に会えて嬉しいって表示されてたもんね」
「も、もうその話は忘れなさいよ。私の初めてのフレンドなんだから、約束の日だって会えるの楽しみにしてたんだからね。私、こういう性格だからもとの世界で仲の良い友達なんて一人もいなかったし」
「ぽいぽい」
「少しは否定しなさいよっ!」
「友達の件は置いとくとして、ゴザルの家族が転生している可能性はないの?」
「私ね、家族はいないの」
ゴザルさんは言う。
「気にしないで、話しの流れからそう尋ねるのは普通のことよ。暗い話になっちゃうから詳細は省くけど、私は"Nightmares"の皆が心からの友であり家族みたいなものだったの。だから、もとの世界にそこまで未練なんてないわ」
暗い話、か。
なんとなく想像は付く――家族とは絶縁、家族は亡くなっている、どちらの線もありえる話だ。
無論、その件について深く言及することはない。
仕事はいいの? なんて野暮なことも聞くまい。未練がないと言うのなら、その言葉を真っ直ぐに受け止めるべきだ。
「……私ね、ソラに会えて本当に嬉しかったのよ」
ゴザルが僕の手をそっと握る。
握り返すと安心したのか、ゴザルがゆっくりと目を閉じる。
大量のモンスターにボスの討伐、さすがに疲れが溜まっていたのだろう。
しばらくすると、小さな寝息が聞こえ始めた。
「寝顔だけ見てると、超人的な強さが嘘のように思え――ぐぼわっ」
不意の一蹴り、ベッドから弾き飛ばされる。
な、なんつー衝撃、それがゴザルの寝相の悪さだということに気が付く。
やはり、ゴザルはゴザルであった。
寝ていても――十二分に強かった。
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる