102 / 426
最強の武者Gozaru編
102話 王
しおりを挟む
「あなたが王で間違いないのかしら」
「その通りだ、余の名はガラスティナ・グラスティ。流の王国ウィンディア・ウィンドの王であった、というのが正しい表現ではあるな。民のいない国、今の余は亡霊みたいなものよ、ただの一個に過ぎん」
「私たちもこの城に着くまでの道中、誰もいないことは見てきたわ」
「余が全てを滅ぼしたからだ」
ガラスティナが即答する。
「王が国を滅ぼす? どんな理由があるというの?」
「決断せねばならぬ時、選択肢を間違えた。変化することを恐れ、現状を維持しようとした末路が今というわけだ。今もなお、余はここに縛り付けられている。誰もいぬこの王国にただ一人な」
ガラスティナが剣を構える。
「話の続きを聞きたくば、強者よ――どうか余を殺してくれ」
「ソラ、伏せるわよっ!」
ゴザルさんが僕の頭を押し込める。
その瞬間、背後の床一面に斬撃痕が刻み込まれた。
……全く見えなかった。
ゴザルが助けてくれなかったら直撃していただろう。
今の一撃にて、僕は自分が戦力外であることを理解する。
「銀の方、余の攻撃を察知して避けるか」
「銀? もう少し考えたネーミングにしなさいよ」
「くっくっく。銀髪と金髪、区別のしやすい呼び名だろう。金の方、お前はどうやらこの場に相応しくないのではないか。どう考えても足手まといであろう」
「それはどうかしらね」
「ほう?」
「ソラを甘く見ていると痛い目見るわよ」
ゴザルが一直線に突っ走る。
躊躇なく急所に振るわれたゴザルの一撃、首を刎ね飛ばすかと思われたが――寸前、ガラスティナが剣でガードする。
「この威力と速度、覚悟の込もった一刀。銀の方、お前ならば本当に余を解き放ってくれるやもしれぬな」
「あなたと同じようなことを言っていたやつに出会ったわね」
「そいつはどこにいた?」
「ここより上層、上の階にいたネクロマンサーね」
「面白いことを聞いた。そうか、やつは諦めておらんかったか」
「呪いかなんだか知らないけど、私が解き放ってやるわよ。黙って私に成仏させられなさい」
「願わくば、お前がその強者であってくれ」
激闘。
二人が玉座の前にて、人外の戦いを繰り広げる。ゴザルからガラスティナに距離を縮めたのは、僕が巻き込まれないようにと考えてかもしれない。
今はただ見上げ続ける。
「探せ、僕にできることを」
役に立たないからと絶望するな。
一秒後、一分後、未来の僕ならば――戦力になる可能性はある。
「その通りだ、余の名はガラスティナ・グラスティ。流の王国ウィンディア・ウィンドの王であった、というのが正しい表現ではあるな。民のいない国、今の余は亡霊みたいなものよ、ただの一個に過ぎん」
「私たちもこの城に着くまでの道中、誰もいないことは見てきたわ」
「余が全てを滅ぼしたからだ」
ガラスティナが即答する。
「王が国を滅ぼす? どんな理由があるというの?」
「決断せねばならぬ時、選択肢を間違えた。変化することを恐れ、現状を維持しようとした末路が今というわけだ。今もなお、余はここに縛り付けられている。誰もいぬこの王国にただ一人な」
ガラスティナが剣を構える。
「話の続きを聞きたくば、強者よ――どうか余を殺してくれ」
「ソラ、伏せるわよっ!」
ゴザルさんが僕の頭を押し込める。
その瞬間、背後の床一面に斬撃痕が刻み込まれた。
……全く見えなかった。
ゴザルが助けてくれなかったら直撃していただろう。
今の一撃にて、僕は自分が戦力外であることを理解する。
「銀の方、余の攻撃を察知して避けるか」
「銀? もう少し考えたネーミングにしなさいよ」
「くっくっく。銀髪と金髪、区別のしやすい呼び名だろう。金の方、お前はどうやらこの場に相応しくないのではないか。どう考えても足手まといであろう」
「それはどうかしらね」
「ほう?」
「ソラを甘く見ていると痛い目見るわよ」
ゴザルが一直線に突っ走る。
躊躇なく急所に振るわれたゴザルの一撃、首を刎ね飛ばすかと思われたが――寸前、ガラスティナが剣でガードする。
「この威力と速度、覚悟の込もった一刀。銀の方、お前ならば本当に余を解き放ってくれるやもしれぬな」
「あなたと同じようなことを言っていたやつに出会ったわね」
「そいつはどこにいた?」
「ここより上層、上の階にいたネクロマンサーね」
「面白いことを聞いた。そうか、やつは諦めておらんかったか」
「呪いかなんだか知らないけど、私が解き放ってやるわよ。黙って私に成仏させられなさい」
「願わくば、お前がその強者であってくれ」
激闘。
二人が玉座の前にて、人外の戦いを繰り広げる。ゴザルからガラスティナに距離を縮めたのは、僕が巻き込まれないようにと考えてかもしれない。
今はただ見上げ続ける。
「探せ、僕にできることを」
役に立たないからと絶望するな。
一秒後、一分後、未来の僕ならば――戦力になる可能性はある。
31
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる