転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
135 / 426
王都突入編

134話 王都エレメント

しおりを挟む
「えーと、ゴザルの現在地は王都を囲む『グラン海』ってところかな」

 フレンドリストにはそう表示されていた。
 いやまあ、納得の結果である。それもそのはず、めちゃくちゃ海上付近で落下してたもんね。
 ゴザルについてはあとで合流してくることを信じて保留にしよう。

 大陸龍の飛行は順調に進み、王都が薄っすらと見えてきた。
 巨大な王宮が中心にある国、その規模はウィンウィン、アクアニアス、ストーンヴァイス三国の数倍の国土となっている。
 龍に乗りながら、この光景を目に収めることができるなんて――こうなった境遇は決して幸運とは言えないが、ゲームファン冥利に尽きる。

 僕とナコは遠く視界に入る王都を静かに見つめ続けていた。
 長く険しい今までの旅路を振り返るよう、ただずっと見つめ続ける。これだけの広さならば、僕の妹やナコのお姉さんだっている可能性も高い。
 
 ――ついに、王都エレメントに到着した。
 
 この王都はオンリー・テイルに置いて、全てが集まる国と言われていた。
 レアアイテム、金銀財宝、腕に自身があるもの、富と名声を求めるもの、この王都には全てが集ってくる。
 ゲーム時から変わらず、冒険者の活動拠点となっていた。

「クーラ、王都にたどり着きましたね」
「うん、長かったね」

 感動が胸を押し寄せる。
 旅始めに掲げた目標、ナコと一緒という事実がなによりも嬉しかった。
 まず最初に、ニャニャンと相談し合った結果"Nightmares"のホームに向かうことになった。現在ホームにはHomura ――ホムラが常駐しているという。
 大陸龍から降り立ち、いざ王都というタイミングで僕は重大なことを思い出す。

「今さらなんだけど、ゴザル不在で大丈夫かな」
「私たち同行という形で来ていますもんね」

 そんな心配を一蹴するよう、ニャニャンが僕たちの手を引っ張りながら、

「大丈夫、にゃっちがいればオールオーケー。あー、クランにゃん、"Nightmares"のニャニャン御一行が通るにゃあ」
「はーい。おかえりなさい」

 慣れ親しんだ会話、受付嬢の方と仲良しのようだ。
 ニャニャンは皆が並ぶ列とは別のゲートに、僕たちも身分や冒険所カードを確認されることなく普通に通れた。

「こ、こんな簡単でいいのでしょうか?」
「ナコにゃん、心配ご無用っ! 意外とセキュリティはバッチリ、このゲートに魔石が入っていてね、にゃっちの冒険所カードに反応して通れるようになるの」

 ナコの疑問にニャニャンが答える。

「にゃっちはね、この王都ですっごい尊い存在なのにゃあ。多少、いやかなりの融通は無理やり通せる。順番待ちしなくても、王様態度で楽に通過なのね」
「……ニャニャン、どこのお偉いさんの弱味を握ったんだ」
「どうしてそっち方面ばかり考えるにゃあっ?! ちゃんと王都で武勲を重ねてきたのよ。ソラにゃんがフラフラしてる間にね」
「好きでフラフラしてたわけじゃないよ」
「にゃっちをプレイヤーサーチしたらよかったのに。アクアニアス、ウィンディア・ウィンドなら大陸龍乗り回してる間に何度も滞在してたにゃあ」
「いや、ニャニャンずっとオフにしてたじゃないか」
「ん? してないよ?」

 ニャニャンが首を傾げる。

「にゃっちは常に正々堂々、この世界に転生してからオールオンにゃあっ!」
「えぇっ、Nyanyanで検索してもでてこなかったのにっ!」
「んんぅ? もう一回、にゃっちの前で同じように検索してみろ?」
「プレイヤーサーチ――Nyanyan」
「……」

 僕のウィンドウを見てニャニャンが無言になる。

「ほら、今もでてこないよ」
「……ソラにゃん、一言いいかにゃあ」
「どうかした?」
「ゴザルにゃんと揃いも揃って! ソラにゃんもバカ馬鹿なのっ?! にゃっちのプリティーな名前の『n』が1個抜けてるじゃあにゃいかっ!」

 犬歯を剥き出し、ニャニャンが叫ぶ。
『Nyanyann』と『Nyanyan』、僕がプレイヤーサーチした名前は後者、ニャニャンの言う通り、確かに『n』が一個抜けていた。
 この一文字が運命を左右、僕はなんて致命的なミスを犯していたのだ。
 項垂れる僕、ナコが慰めるよう僕の背中をポンポンしながら、

「つまり、クーラが検索名を間違えていたということですか?」
「そうそう、初歩的なミスね。ソラにゃんさあ、サーチ名ミスってなかったらもっと早くにゃっちと出会えて楽ちんな旅路になったかもしれないのに」
「Nが多すぎるんだよっ! 改名して減らしてこいニャニャンっ!!」
「うわぁっ、まさかまさかの逆ギレにゃあっ! 自分が悪いのに怒るのってどうかと思うのっ!」
「くそぉおお! 正論はやめてくれっ!」
「クーラ! 落ち着いてください!」

 なんとも騒がしい入国、僕とナコの王都第一歩となるのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...