転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
154 / 426
王都突入編

153話 転生前=転生後

しおりを挟む
 真夜中の王都を、ニャニャンと二人歩きながら話す。

「あの無駄に格好いいポーズはなんだったの?」
「決まってたでしょ。人生で一度はニヒルなポーズで待ってみたかったのね」
「……演出が無駄に凝ってる」
「それで、入念にメイン装備にまで着替え直して――ソラニャンはどこに行くつもりだったのかにゃあ? 当てたげようか、当てたげるね」

 有無を言わさぬ勢い。
 ニャニャンが僕に詰め寄り、じっと顔を見つめ続ける。その真っ直ぐな瞳は心の中を覗かれているようだった。

「ふむん。ずばり、女の子とキャッキャするお店ね」
「なんでわかるのさっ?!」
「顔に書いてあるよ。さっきの温泉でソラにゃんの衝動が爆発しちゃったのね。恥じることはないのにゃあ」
「そういうニャニャンこそ、メイン装備に着替えてるよね」

 ニャニャンの装備は『闘神シリーズ』である。
 オレンジを基調とし、太もも全開動きやすさを全面に押し出した道着、拳闘士専用の全身フルセットとなっており、ゲーム時は最終装備とも言われていた。
 耐性も4属性――火、土、水、風の30%カットとかなり高かったはずなので、耐性装備が最強となった今も変わらず、揺るがない強さを維持しているだろう。
 ニャニャンはフンッと空を何度も蹴り上げながら、

「そりゃ外出よ? 不測の事態が起きても対処できるようにしないとね。何故ならにゃっちも一緒に行くからにゃあ」
「一緒に?! ニャニャンって中身女性じゃないの?」
「にゃは、どっちだと思う」

 キャラクターの性別はリアルと共通していることが多い。
 オンリー・テイルのゲームは仕様上、キャラクーターを作成する段階にて個人の証明書が必須となっている。
 基本的に、記載されている性別でしかキャラクターは作成できないのだ。
 僕のよう家族に協力してもらい、自身の性別とは逆のキャラクターを作成することも可能だが――ニャニャンならありえる。
 むしろ、今までの発言を考慮すると激しいおっさん臭を感じる。

「50代くらいのおじさん?」
「ふっ」

 僕の答えにニャニャンが不敵に笑い返す。
 冷静に考えると、もし正解だったら――50代のおっさんがニャンニャン言ってることになるわけか。
 なんか想像するとものすごいパンチの効いた絵面になる。
 これは触れてはいけない禁断の領域、開いてはいけないパンドラの箱だったのではないだろうか。

「ソラにゃん、大ヒントをあげる。この世界に転生した時はね、もとの世界と大体同じくらいの年齢になってるのよ」
「同じくらいの年齢?」
「つまり、年齢だけは転生前=転生後、この点だけは誤魔化しが効かないの。にゃっちが本当に50代のおじさんなら――こんなピッチピチの猫ちゃんにはならないという話にゃあ。ナコにゃんも年相応に幼く見える部分あるでしょ? あれは簡単カメラ認識だけが理由じゃないのね」

 そうか、そういうことだったのか。
 初めてナコを見た時、言動だけでなく全体的に幼さを感じたが――その直感は正しかったようである。
 ニャニャンは顎に手を置きながら頷き、

「どれだけ若くキャラ作成しても、どれだけ渋く老いた風にキャラ作成しても、もとの世界の年齢に反映されちゃうの。転生後は種族の特性も受け継ぐから、種族次第で見た目変わらないってパターンもあるけどね。ここら辺の細かい情報はまたホームが直った時にまとめて言うつもりにゃあ」
「……じゃあ、ニャニャンは見た目通りの年齢ってことなのか。年齢についての仕組みはわかったけど、男性か女性かの答えにはなってないよね」
「ふっ」
「さっきからその不敵な笑みが気になる」
「細かいことは置いといて件の場所に行くのねっ! オラァ、黙ってにゃっちに付いて来いにゃあっ!!」

 まあ、僕にとってはどちらでもいい。
 ニャニャンの中身がなんであれ――長年一緒にプレイした仲間ということには変わりないのだから。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...