転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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王都突入編

156話 儚い夢

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「「「また来てくださーいっ」」」

 お店の人に見送られ、ムスカルスを後にする。
 夢のような時間――お会計の時、キングコンティが1本300万もする上、ニャニャンがお金を持っていないことで一瞬で現実に引き戻されたけれど。
 不機嫌を微塵も隠そうともせず、ゴザルは僕らの前を早足で歩く。

「ゴザル、無事でよかったよ」
「うんうん、にゃっちも嬉しいにゃあ」
「……」
「ゴザルなら絶対に王都に来ると思っていたよ」
「うんうん、にゃっちも同感なのね」
「少し黙りなさい。ぶっ殺すわよ」
「「ごめんなさい」」

 それにしても、ゴザルの到着が想像以上に早い。
 なんせ、僕たちが王都に着いてから――まだ一日足らずしか経っていないのだ。
 そんな僕の疑問はゴザルの次の一言で即座に解消される。

「グラン海を延々と走って来た私の気持ちわかる?」
「えっ! ゴザルにゃん、海面走行して来たの?! 大陸龍が飛行する速度と変わらないとか人間やめすぎでしょっ!」

 僕が遠慮した言葉をニャニャンがズバッと言う。
 ゴザルの行動は全てが異次元、なにか特別な方法があるとは予想していたが――走って来たのか。
 もうなんか、ゴザルについてはなにを言われても驚きより納得の方が勝るレベルである。
 バゴぉんと、ゴザルが道行く壁を殴り付けながら、

「さすがの私も最後の方は魔力が尽きて泳いで来たわよっ! 危うくフュードラゴンのエサになるところだったんだからっ!!」

 砕けて落ちる欠片。
 あの怒りが僕とニャニャンに向いた時、生きて帰れるのだろうか、という恐怖が全身を駆け巡る。
 さすがのニャニャンも血の気の引いた顔付きにて、

「で、でも、よくにゃっちたちがいる場所わかったね」
「最初はホームに行ったわ。そしたら半壊していて修理中、そこにいた作業員さんに行きそうな場所を聞いたのよ」
「あいつ、言わないでいいことを――今度文句言ってやるにゃあ」
「はぁ? 文句言いたいのは私の方なんだけど?」

 言いながら、ゴザルの肩が震え出す。
 怒りのオーラが視認できそうなレベルである。本当に魔力尽きてるの? なんかここからモンスター百体くらい殺れそうな雰囲気あるよ。
 ゴザルが頭の海藻を毟り取りながら振り向き、

「……ニャンはともかく、ソラまでいるとは思わなかったわ」
「ラッキー、怒りの矛先がソラにゃんに行ってるのねっ!」
「ひぃっ、僕っ?!」
「鼻の下伸ばしながら、楽しそうなことしてたわよね」

 仲間の一大事に遊んでいたことは事実。
 最早、反論の余地もなく――僕には沈黙するという選択肢しかない。全身冷や汗ダラダラでゴザルの続きの言葉を待つ。
 ゴザルがゆっくりと僕に歩み寄り、

「あなた、あの乳デカ美女さんがお好みなの? 私が見たところによると、なんか触ろうとしてなかったかしら?」
「……いや、その、あのぅ」
「そうそう、触ろうとしてたよっ! こいつ、見た目女の子になったからってやりたい放題なのねっ!! あんなの詐欺にゃあっ!」

 こ、このクソ猫、ここぞとばかりに寝返った。

「ふーん。やっぱり、私の見間違えじゃなかったわけね」

 夢の時間のあとは――避けられぬ現実が待っているのであった。
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