転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
159 / 426
火の都サラマン激突編

158話 火の都サラマンの王

しおりを挟む
 安らぎの満天での楽しい休暇も終了し、僕たちはホームに戻って来た。
 ホームの方はすっかりと元通りに、この短期間で修理を完了してくれた作業員さんには頭が上がらない。
 ニャニャンが満面の笑みで拳を天に掲げながら、

「皆、心身共にゆっくりと休息はできたかにゃあっ!」

 各々深く頷き返す。
 ナコとホムラもゆっくりと話し合うことができたのだろう。以前と比べてお互いに表情も柔らかい。
 まさに仲良し姉妹、見ているだけで和やかな気持ちになる。

「さて、今後についての――真面目な話といくのね」

 ニャニャンの表情が切り替わる。

「順序よく言うとね、今この世界は――ディスク1枚目、火の都サラマンが復活するという最大級のストーリーに直面しているわけなのよ」

 火の都サラマン。
 滅びたと認識されていた火の都は静かに再燃の機を狙い続けていた。その準備が整った今、三国に対して宣戦布告をする。
 この世界を支配しようとしている火の都を、プレイヤーの手で阻止するというのがディスク1枚目、2枚目のメインストーリーだったのだ。大陸龍を転覆させて王都との連絡通路を断つこと、その後三国を順番に攻め込むという作戦が火の都サラマンの最初の一手となっていたが――その一手はすでに封殺している。

「白龍の騎士の襲撃による大陸龍の活動停止はにゃっちたちの手で未然に防いだ。サラマンは新たなる作戦を構築中との情報が今しがた手に入ったのね」

 貴重な情報だ。
 もしかすると、ここにはいないラミュアが色々と動いているのかもしれない。
 一連の話を聞き、ゴザルが口を開く。

「構築中、ね。三国に対して宣戦布告はなされたのかしら?」
「まだなのよ。王都との連絡通路が断てなかった今、それは早計な判断と捉えているに違いないのね」

 火は静かに燃え続けている状態。
 世界は刻一刻と変化しつつある、最終的には穏やかな形に落ち着くのが理想だ。
 しかし、そのルートをたどるのならば最善を尽くしたい。

「ニャニャン、僕たちはプレイヤーとしてどう行動すればいい?」
「この世界の均衡を保つため、火の都サラマンの王『フレイムドルフ』を殺さなきゃいけないにゃあ」

 ニャニャンは断言する。

「もし、このミッションを完遂できなかったら――オンリー・テイルの世界は破滅への第一歩をたどることになるのね。ゲーム時はプレイヤーの手によって救われた、なにもしないということは違う世界線に向かう未来は確定なのよ」

 火の都サラマンの王フレイムドルフ。
 ディスク1枚目、2枚目のラスボス的存在だ。火の魔法を主とした魔法剣士、圧倒的な力にてプレイヤーをねじ伏せて来る。人体実験、人間と魔物の配合、自身の掲げる理想を叶えるためなら犠牲をものともしない。
 非人道的、徹底的な悪、力こそが全てという独裁者である。

「ニャニャン、この件について他のプレイヤーは?」
「ランキング上位のギルドと連携は取り合っているのね。不足の事態が起きても対処できるよう三国に潜伏中にゃあ」

 水面下にて、ここまで動いていたことに驚く。
 ランキング上位のギルドといえば、基本的には高レベルプレイヤーの集まりとなっている。世界に数えるほどしかいない超越者に比べると力量差は否めないが、レベル100に近いプレイヤーだって知識と経験がある。今回の敵となるフレイムドルフ率いる兵相手ならば、特に問題なく撃破することは可能だろう。
 これならば、僕たちがやることは一つに絞られる。

「フレイムドルフは火の都サラマンの跡地、その地下に大規模な要塞を2つ構えているとの情報なのね」

 ニャニャンがマップを開き、居場所を指し示す。
 ゲーム時、フレイムドルフが力を蓄えていた場所までは公開されていなかった。フレイムドルフは宣戦布告した後――三国を即座に攻め立てるからである。三国は一気に壊滅状態に陥り支配地とされ、プレイヤーはその奪取と復活した火の都サラマンを滅ぼすべく動くのだ。
 ストーリーの通りならば、取り返しのつかないことが起きていた。
 だが、今は未然に防ぐことが可能。
 白龍の騎士が大陸龍を行動不能にできなかったように、僕たちはゲームの知識を活用して先手を取ることができる。

「三国が壊滅状態になるまで、黙って見ている意味はないのね」

 そう、ニャニャンの作戦は一つだった。

「相手が動く前に――殺りに行くよ」
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

処理中です...