転生したら倉庫キャラ♀でした。

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火の都サラマン激突編

159話 共に

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 飛車に乗り、火の都サラマンの跡地に向かう。
 砂漠の中に荒れ果てた街並み、目の前には滅びた国の痕跡だけが残っていた。この底にて火山のように、フレイムドルフは野心を燃やし続けているのだろう。
 全ての国を支配するためだけに侵攻を続け、火の都サラマンは三国からの粛清により滅ぼされる。
 当時の王は斬首され、その息子フレイムドルフは生き延びた。
 三国によるせめてもの温情が、巡り巡って最悪の歴史を繰り返すことになるとは――因果な話である。
 危険分子は世界に残されてしまったのだ。

「地下要塞の場所は北と南、一つ一つ順番に行くと片方が警戒されてしまうのね。ここはにゃっち率いるプリティー猫さんチーム、ソラにゃん率いる海藻チームで各々同時に突入するのがベストにゃあ」
「ニャン、今さりげなく私の悪口混ぜなかった?」

 僕とナコとゴザル、ニャニャンとホムラにチームを分ける。
 現在の戦力的にはベストな組分け、北を僕たちが――南をニャニャンたちが行くことになった。

「それと、皆にはこのアイテムを渡しておくのね」

 ニャニャンが黒いイヤリングをアイテムボックスから取り出す。
 見たことのない装備品、黒い宝石の嵌められたシンプルなイヤリングだ。一人一個、両耳に付けるというわけでもなく――片耳でいいという。

「これは離れていてもお互いに連絡が取り合える。いわば、携帯電話みたいなアイテムなのね。雷の魔石を使って電波のシグナルを合わせて――って、今そんな仕組みはどうでもいいかにゃあ」
「えぇっ、こんなアイテムなかったよね?」
「今はゲーム時みたいにチャットで連絡が取れないからね。あるプレイヤーに頼んで作成してもらったのよ」

 オリジナルアイテム。
 まさか、ゲームに存在しないアイテムまで作成してしまうとは――ニャニャン、恐ろしい子である。
 しかし、今後はこういったアイテムも増えてくるのだろう。
 オンリー・テイルの世界は色々な意味で変わっていくはずだ。今回の通信アイテムのように急激な文明の発展もありえる。
 皆で距離を取り合い、テストを開始する。

――――――――――――――――――――――――――――

《 通信は良好かにゃあ? 》
《 うん、問題なく聞こえるよ 》
《 聞こえます 》
《 ナコちゃん、愛するお姉ちゃんの声聞こえる? 少しの間離れ離れだけど、寂しかったら耳もとで囁き続けるから安心してね 》
《 ホムラお姉ちゃん、やめてください 》
《 えへへ、本当は嬉しいくせに 》
《 ねえ、ソラ。ホムってこんなキャラだったっけ? もっとこうなんていうか、ギルドの中では一番大人だったっていうか 》
《 ああ、最愛の妹に会えてキャラ崩壊したんだよ 》
《 ナコちゃんの成分今のうちに体内に取り入れておこうっ! くんくんすはー、生き返る生き返るよぉおおおっ!! 》
《 ホムラお姉ちゃん、本気でやめてください。なんで私の方に向かって全速力で来たんですか? 通信のテスト中って理解しています? 》
《 崩壊しすぎでしょっ! ホムの面影一ミリもないわよっ?! 》
《 ぶにゃっはっは。通信以外も良好でなによりなのね 》

――――――――――――――――――――――――――――

 テストも無事に終了。
 二手に分かれる直前、ニャニャンが改めて言う。

「作戦開始の前に、にゃっちから一ついいのね? フレイムドルフを殺る、それがどういう意味なのか皆は理解しているかにゃあ」

 生死を賭けた戦い。
 世界のためとはいえど――誰かの命を奪う行為、ニャニャンはその覚悟があるか否かを問いているのだろう。
 誰かがやらねばいけない、誰かがやらなきゃいけない。
 偶然か必然か、それが僕たちだったというだけ。転生した今、ここは僕たちの生きていく世界、守る力があるのならば――進むしかないのだ。

「無理強いはしないのね。参加したくない人は――手を上げてにゃあ」

 チラッと、ニャニャンがナコの方を見やる。
 子供が同行していいものか、気遣っているのだろう。
 ニャニャンの心配に気付いたのかナコが一歩前に出る。

「私はクーラと共に行きます」

 その表情に――迷いはなかった。
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