162 / 426
火の都サラマン激突編
161話 要塞ごと真っ二つ
しおりを挟む
――――――――――――――――――――――――――――
《 海藻チーム、無事に侵入できたよ 》
《 プリティー猫さんチームもなのね。どちらかにフレイムドルフがいるはず、見つけたチームは――交戦してにゃあ 》
《 了解 》
《 ソラにゃん、無理だと思ったら退くことも視野に入れてね。命を最優先に、各々の健闘を祈るにゃあ 》
――――――――――――――――――――――――――――
通信が途切れる。
僕たちの現在地は――大きな鍋、食材、調理道具一式、周囲の状況から察するに食堂だろう。
兵たちが飲み食いする場、士気を高める場所に違いない。
ゴザルの持つ"神眼"――狭範囲ながらも魔力の気配を事細かに識別できるスキル、今のところ他者の気配はないようで、ここ食堂をスタート地点として定めた。
僕はなんとなく、キッチン周辺を調べてみる。
「大鍋、食材、大量の食器類、兵たちが飲食する場所かな。それにしては、直近で使われた形跡が見当たらないな」
食材も古くなりかけている。
だが、完全に腐っているというわけでもなく――つい最近まで人がいたということだけは確かだった。
「たまたま、出払っているとかじゃないのかしら?」
「三国を攻める前段階、その可能性も高いだろうね」
しかし、引っかかる。
侵攻するに当たって兵を空腹にさせるわけはない。食事というものは全体の士気に関わるものだ。
健康で強い身体を維持する、それはとても大切なことなのである。
「クーラ、なにか気になるのですか?」
「……ナコ、ゴザル、まずは脱出経路の確保から入らないか」
「全てが終わってから堂々と出たらいいんじゃないの? それにまたこの通気口を戻るっていう手もあるわ」
「いや、通気口からじゃ移動が遅すぎる。なにがあっても確実に脱出できるという安全が欲しいんだ」
「ふーん。まあ、ソラがそういうならそうしましょう」
「私も賛成です」
僕はマップを開く。
白の宝物庫イレシノンテにて、転移トラップに巻き込まれた時も思ったことだが、未開の地でもこのマップ機能は自身のいるフロアが全て表示されていた。
あくまで、ダンジョンという括りになっているのだろう。
マップの構造から判断するに、正式な出入り口は要塞のど真ん中――なにか特殊な手段で出入りが可能なのかもしれない。
だが、こんな大っぴらなところからの脱出は危険すぎる。
侵入者に対して、なにか罠が仕掛けられているとも限らない。脱出経路を確保するならば別の視点から考える方がいいだろう。
「ゴザル、仮になんだけど――天井をぶっ壊したりとかできる?」
「ソラ、あなたね、私がなんでもできると勘違いしてない?」
「だって空を飛んだり、銃弾を弾いたり、もう僕の中ではゴザルが完全に無敵感溢れている人だよね」
「お侍さん、すごいですっ!」
「ナコちゃん、そんなキラキラした目で見ないでちょうだい」
ゴザルがナコの瞳に圧倒されるよう後退する。
「できる、できなさそう?」
「さすがに試したことがないから、自信を持ってイエスとは言えないわね。要塞の材質を見た限り――できないことはなさそうな気もするけれど。今は大都市で手に入れた古代武器もあるし」
ゴザルが抜刀、火花がほとばしり、
「火の刃――緋炎」
要塞の壁がスパッと斬れ落ちる。
明らかに鉄くらいの硬さの素材を――まるで豆腐かのように、瓦礫の山が瞬時に出来上がった。
「どうかしら? この古代武器、明らかに魔力の通り方が違うのよね。スキル" 絶刀命閃"を組み合わせたら要塞も真っ二つにできるかもしれないわ」
「ナコ、要塞ごといけるそうだよ」
「お侍さん、すごい、すごいですっ!」
「待って、冗談よ? 冗談だからね?」
ゴザルの冗談は――とても冗談に聞こえないのであった。
《 海藻チーム、無事に侵入できたよ 》
《 プリティー猫さんチームもなのね。どちらかにフレイムドルフがいるはず、見つけたチームは――交戦してにゃあ 》
《 了解 》
《 ソラにゃん、無理だと思ったら退くことも視野に入れてね。命を最優先に、各々の健闘を祈るにゃあ 》
――――――――――――――――――――――――――――
通信が途切れる。
僕たちの現在地は――大きな鍋、食材、調理道具一式、周囲の状況から察するに食堂だろう。
兵たちが飲み食いする場、士気を高める場所に違いない。
ゴザルの持つ"神眼"――狭範囲ながらも魔力の気配を事細かに識別できるスキル、今のところ他者の気配はないようで、ここ食堂をスタート地点として定めた。
僕はなんとなく、キッチン周辺を調べてみる。
「大鍋、食材、大量の食器類、兵たちが飲食する場所かな。それにしては、直近で使われた形跡が見当たらないな」
食材も古くなりかけている。
だが、完全に腐っているというわけでもなく――つい最近まで人がいたということだけは確かだった。
「たまたま、出払っているとかじゃないのかしら?」
「三国を攻める前段階、その可能性も高いだろうね」
しかし、引っかかる。
侵攻するに当たって兵を空腹にさせるわけはない。食事というものは全体の士気に関わるものだ。
健康で強い身体を維持する、それはとても大切なことなのである。
「クーラ、なにか気になるのですか?」
「……ナコ、ゴザル、まずは脱出経路の確保から入らないか」
「全てが終わってから堂々と出たらいいんじゃないの? それにまたこの通気口を戻るっていう手もあるわ」
「いや、通気口からじゃ移動が遅すぎる。なにがあっても確実に脱出できるという安全が欲しいんだ」
「ふーん。まあ、ソラがそういうならそうしましょう」
「私も賛成です」
僕はマップを開く。
白の宝物庫イレシノンテにて、転移トラップに巻き込まれた時も思ったことだが、未開の地でもこのマップ機能は自身のいるフロアが全て表示されていた。
あくまで、ダンジョンという括りになっているのだろう。
マップの構造から判断するに、正式な出入り口は要塞のど真ん中――なにか特殊な手段で出入りが可能なのかもしれない。
だが、こんな大っぴらなところからの脱出は危険すぎる。
侵入者に対して、なにか罠が仕掛けられているとも限らない。脱出経路を確保するならば別の視点から考える方がいいだろう。
「ゴザル、仮になんだけど――天井をぶっ壊したりとかできる?」
「ソラ、あなたね、私がなんでもできると勘違いしてない?」
「だって空を飛んだり、銃弾を弾いたり、もう僕の中ではゴザルが完全に無敵感溢れている人だよね」
「お侍さん、すごいですっ!」
「ナコちゃん、そんなキラキラした目で見ないでちょうだい」
ゴザルがナコの瞳に圧倒されるよう後退する。
「できる、できなさそう?」
「さすがに試したことがないから、自信を持ってイエスとは言えないわね。要塞の材質を見た限り――できないことはなさそうな気もするけれど。今は大都市で手に入れた古代武器もあるし」
ゴザルが抜刀、火花がほとばしり、
「火の刃――緋炎」
要塞の壁がスパッと斬れ落ちる。
明らかに鉄くらいの硬さの素材を――まるで豆腐かのように、瓦礫の山が瞬時に出来上がった。
「どうかしら? この古代武器、明らかに魔力の通り方が違うのよね。スキル" 絶刀命閃"を組み合わせたら要塞も真っ二つにできるかもしれないわ」
「ナコ、要塞ごといけるそうだよ」
「お侍さん、すごい、すごいですっ!」
「待って、冗談よ? 冗談だからね?」
ゴザルの冗談は――とても冗談に聞こえないのであった。
37
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる