178 / 426
火の都サラマン激突編
177話 異色のコンビ
しおりを挟む
目を覚ますと、緑の真ん中にいた。
森も森、大森林、モンスターに喰われなかったのは幸いだろう。魔力の粒子になった影響なのか――怪我は全て完治していた。
僕の意識が覚醒していく――皆、皆はどうなった?
「ナコ、ゴザルっ?!」
「クーラお姉さんっ!」
「うわぁっ」
「よかった。目覚めたんだぁ」
ライカが木の上から降ってきた。
そして、嬉しそうに僕に抱き付く。なにこの懐かれ方――急な距離感に驚き、僕はされるがままになる。
「もしかして、僕のことを守ってくれていたの?」
「うんっ! ほめてぇっ!」
「ありがとう」
「んっ!」
「んっ?」
「んんーっ!」
ライカが僕に頭を向けてくる。
えーと、なんだろう――なでろってことかな? とりあえず、ナコにするような感覚で優しくなで回してみる。
狐耳も柔らかいなぁ、ミミモケ族ってすごい触り甲斐があるというかなんというか。
正解だったようで、ライカが顔をほころばせる。
「ところで、僕以外に誰もいなかった?」
「クーラお姉さんだけいたんだぁ。木の上から周囲も見渡してみたけど、ライカたち以外は誰もいなかったよ」
調査してくれていたのか。
頼もしい限りだが、つい先ほどまで敵であったこと――なぁなぁのまま一緒にいるのも違う気がする。
そんな僕の心配は他所に、ライカが満面の笑みにて、
「ねぇねぇ、まずはお腹空いたから一緒にご飯食べよっ」
「ご飯?」
「森にいるモンスターを狩ってきたの。解体して味付けしてあるから、あとは焼くだけだよっ」
と、ライカが印を結び、
「"瞬炎"っ!」
肉を焼き始める。
た、頼もしい限りだが、つい先ほどまで敵であったこと――いやもうなんか素直そうな子だし気にせず接するか。
絶体絶命の瞬間、一人で逃げることもできたのに、ライカは戻って来てくれた。
助けてくれた事実は揺るがない、警戒したところで相手をいやな気持ちにさせるだけだろう。
パチパチと肉が焼ける音、香ばしい匂いが広がっていく。
「どんな種類のモンスターだったの?」
「んんー、見たことないモンスターだったよ。なんか角が3本くらい生えてて、イノシシみたいな感じだったかなぁ」
「見たことないモンスター?」
「ライカの記憶にはなかったよ」
まあ、モンスターの種類は多い――忘れることもある。
イノシシみたいな見た目であれば、毒を持っているという可能性は低いだろう。肉もいい具合に焼けたところで、僕はお皿に移して準備を整える。
ここまでしてくれたのだ、仕上げくらいはやらせてもらおう。
「クーラお姉さん、食器まで持ってるんだぁっ!」
「昔、キャンプに憧れていたんだ。憧れていただけで――もとの世界では一度も行ったことなかったけどね」
「ライカもそういうのわかるっ」
「実際に行くってなると、中々最初の一歩が踏み出せないんだよね」
「うんうんっ! 動画とか見てるだけでいっぱいになっちゃうっ!」
「まさにその通りだったよ」
「ライカとクーラお姉さん、ニコイチだねぇ」
「……」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
ニコイチ、か。
以前、ナコがそう話していたことを――思い出した。ナコとゴザル、僕が無事であったならば生きている可能性は高い。
そうだ、フレンドリストがあるじゃないか。
起きたばかりの寝ぼけた状態、完全に頭から抜けていた――僕はウィンドウを表示、ネームの色がどうなっているかを確認する。
そして、予測不可能な事態が起こった。
「……ウィンドウ表示が、バグってる?」
「あ、クーラお姉さんもライカと一緒なんだ。なんかね、マップ機能とかも全部ザーザーって画面になるんだぁ」
続けて、マップも表示する。
ライカの言う通り、重要な機能は全て使用不可となっていた。
身体が魔力の粒子になった後遺症なのか?
「……クーラお姉さん、お肉冷めちゃうよっ?」
「あ、ごめん。ボーっとしていたよ」
「仲間のことが気になってる?」
「フレンドリストで確認できていたら――いや、それも現実を知るって意味で怖いことではあるんだけどね。見れなくてよかったのか、見て安心したかったのか、今は上手いこと答えがでてこないかな」
「ごめんなさい。ライカ、無我夢中だったから――どうにかしなきゃってことしか考えてなかったの」
「いや、謝る必要なんてないよ。ライカのおかげで僕は今生きている」
「で、でもでもっ」
「……僕も一つ聞いていいかな? 今回、ライカはリボルを裏切った形になったけどよかったの?」
正直に聞いてみる。
少女の素直な気持ち、ライカは今どう思っているのだろう。
森も森、大森林、モンスターに喰われなかったのは幸いだろう。魔力の粒子になった影響なのか――怪我は全て完治していた。
僕の意識が覚醒していく――皆、皆はどうなった?
「ナコ、ゴザルっ?!」
「クーラお姉さんっ!」
「うわぁっ」
「よかった。目覚めたんだぁ」
ライカが木の上から降ってきた。
そして、嬉しそうに僕に抱き付く。なにこの懐かれ方――急な距離感に驚き、僕はされるがままになる。
「もしかして、僕のことを守ってくれていたの?」
「うんっ! ほめてぇっ!」
「ありがとう」
「んっ!」
「んっ?」
「んんーっ!」
ライカが僕に頭を向けてくる。
えーと、なんだろう――なでろってことかな? とりあえず、ナコにするような感覚で優しくなで回してみる。
狐耳も柔らかいなぁ、ミミモケ族ってすごい触り甲斐があるというかなんというか。
正解だったようで、ライカが顔をほころばせる。
「ところで、僕以外に誰もいなかった?」
「クーラお姉さんだけいたんだぁ。木の上から周囲も見渡してみたけど、ライカたち以外は誰もいなかったよ」
調査してくれていたのか。
頼もしい限りだが、つい先ほどまで敵であったこと――なぁなぁのまま一緒にいるのも違う気がする。
そんな僕の心配は他所に、ライカが満面の笑みにて、
「ねぇねぇ、まずはお腹空いたから一緒にご飯食べよっ」
「ご飯?」
「森にいるモンスターを狩ってきたの。解体して味付けしてあるから、あとは焼くだけだよっ」
と、ライカが印を結び、
「"瞬炎"っ!」
肉を焼き始める。
た、頼もしい限りだが、つい先ほどまで敵であったこと――いやもうなんか素直そうな子だし気にせず接するか。
絶体絶命の瞬間、一人で逃げることもできたのに、ライカは戻って来てくれた。
助けてくれた事実は揺るがない、警戒したところで相手をいやな気持ちにさせるだけだろう。
パチパチと肉が焼ける音、香ばしい匂いが広がっていく。
「どんな種類のモンスターだったの?」
「んんー、見たことないモンスターだったよ。なんか角が3本くらい生えてて、イノシシみたいな感じだったかなぁ」
「見たことないモンスター?」
「ライカの記憶にはなかったよ」
まあ、モンスターの種類は多い――忘れることもある。
イノシシみたいな見た目であれば、毒を持っているという可能性は低いだろう。肉もいい具合に焼けたところで、僕はお皿に移して準備を整える。
ここまでしてくれたのだ、仕上げくらいはやらせてもらおう。
「クーラお姉さん、食器まで持ってるんだぁっ!」
「昔、キャンプに憧れていたんだ。憧れていただけで――もとの世界では一度も行ったことなかったけどね」
「ライカもそういうのわかるっ」
「実際に行くってなると、中々最初の一歩が踏み出せないんだよね」
「うんうんっ! 動画とか見てるだけでいっぱいになっちゃうっ!」
「まさにその通りだったよ」
「ライカとクーラお姉さん、ニコイチだねぇ」
「……」
「どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ」
ニコイチ、か。
以前、ナコがそう話していたことを――思い出した。ナコとゴザル、僕が無事であったならば生きている可能性は高い。
そうだ、フレンドリストがあるじゃないか。
起きたばかりの寝ぼけた状態、完全に頭から抜けていた――僕はウィンドウを表示、ネームの色がどうなっているかを確認する。
そして、予測不可能な事態が起こった。
「……ウィンドウ表示が、バグってる?」
「あ、クーラお姉さんもライカと一緒なんだ。なんかね、マップ機能とかも全部ザーザーって画面になるんだぁ」
続けて、マップも表示する。
ライカの言う通り、重要な機能は全て使用不可となっていた。
身体が魔力の粒子になった後遺症なのか?
「……クーラお姉さん、お肉冷めちゃうよっ?」
「あ、ごめん。ボーっとしていたよ」
「仲間のことが気になってる?」
「フレンドリストで確認できていたら――いや、それも現実を知るって意味で怖いことではあるんだけどね。見れなくてよかったのか、見て安心したかったのか、今は上手いこと答えがでてこないかな」
「ごめんなさい。ライカ、無我夢中だったから――どうにかしなきゃってことしか考えてなかったの」
「いや、謝る必要なんてないよ。ライカのおかげで僕は今生きている」
「で、でもでもっ」
「……僕も一つ聞いていいかな? 今回、ライカはリボルを裏切った形になったけどよかったの?」
正直に聞いてみる。
少女の素直な気持ち、ライカは今どう思っているのだろう。
26
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる