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火の都サラマン激突編
183話 ライカさん大丈夫?
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「うわぁ、このお菓子美味しいっ!」
「おうおう。小娘、遠慮せんでいいっ! まだまだたくさんある、子供はたくさん食べねばいかんぞっ!!」
「ライカのこと子供扱いしないでっ! あと、ライカは小娘じゃない! ライカって名前があるのっ!」
「がっはっは! ライカは難しい年ごろじゃなっ!」
僕も一緒にいただく。
もとの世界でいうところの――和菓子だ。花びらを模したデザイン、見ているだけでうっとりしてしまうほど綺麗だった。
そして、絶妙な甘さ加減――何個でも食べてしまいそうだ。
「その菓子はこの国の名産品でな。気に入ってくれたのならばワシも嬉しく思う。クーラ殿と言ったか、風花から一通りの話は聞いておる。主らがいた国、大陸といった方がよいか――どんなところだったのだ?」
「大きな国が三つ、大陸の真ん中には王都エレメントと呼ばれる、腕利きの冒険者が集う拠点地のような場所があるところでした。局長さんが察したように、僕たちの大陸ではミミモケ族――こちらで獣人に当たる種族は主に奴隷として扱われていました」
「なるほどのう。ペット扱いということか」
「奴隷輪という呪いが付与された特殊な拘束具、それを首に付けることによって自由を奪い、強制的に命令を聞かせる仕組みになっていましたね」
「主らは主従関係には見えぬが?」
「僕たちは違います。僕は――そんな主従関係はおかしいとしか思えない。この仕組み自体が大嫌いです」
「全てのものが、奴隷で当たり前という思想ではないのだな」
「はい。僕が住んでいたウィンディア・ウィンドでは――王が奴隷制度をなくすべく奮闘しており、この国に似た雰囲気がありますね」
「よい話を聞いたのう。今度はワシの番だ、主らはこの陽の国サンサン――全くといっていいほど知識がなかろう」
局長は真っ直ぐに僕たちを見ながら、
「ここからはワシの提案だが、お互いに情報を共有せぬか? 異国の知識はワシたちによい影響を与えるかもしれぬ。しばらくの間、この紅桜組に滞在してみてはどうか?」
願ってもない提案だった。
今の僕たちは右も左もわからない。この国の特別な人物に力を貸してもらえるのであればなんと心強いことか。
二つ返事で承諾したいところだが――心配事が一つある。
「ねえ、もうお菓子ないの?」
「がっはっは。ちょっと待っておれ、取りに行ってやろう」
「ライカ、少しは遠慮しなさい」
「でもでも、美味しいよぅ」
「クーラ殿、気にするでない。子供は食欲旺盛、元気が一番じゃ」
「だから、子供扱いしないでっ!」
「おうおう、すまんすまん」
お偉方にも遠慮がない。
局長が少し席を外したところで――僕はライカに尋ねてみる。
今後のこと、僕の独断で決めるのは揉める要因になりそうだからだ。
「ライカ、今の局長の話――頷いてもいいかな?」
「いいよ」
「意外とあっさりだね」
「えへへ、お菓子いっぱい食べれちゃうもんねっ!」
ライカがニッコリと笑う。
なんと無邪気な笑顔か――僕は激しく先行き不安になるのであった。
「おうおう。小娘、遠慮せんでいいっ! まだまだたくさんある、子供はたくさん食べねばいかんぞっ!!」
「ライカのこと子供扱いしないでっ! あと、ライカは小娘じゃない! ライカって名前があるのっ!」
「がっはっは! ライカは難しい年ごろじゃなっ!」
僕も一緒にいただく。
もとの世界でいうところの――和菓子だ。花びらを模したデザイン、見ているだけでうっとりしてしまうほど綺麗だった。
そして、絶妙な甘さ加減――何個でも食べてしまいそうだ。
「その菓子はこの国の名産品でな。気に入ってくれたのならばワシも嬉しく思う。クーラ殿と言ったか、風花から一通りの話は聞いておる。主らがいた国、大陸といった方がよいか――どんなところだったのだ?」
「大きな国が三つ、大陸の真ん中には王都エレメントと呼ばれる、腕利きの冒険者が集う拠点地のような場所があるところでした。局長さんが察したように、僕たちの大陸ではミミモケ族――こちらで獣人に当たる種族は主に奴隷として扱われていました」
「なるほどのう。ペット扱いということか」
「奴隷輪という呪いが付与された特殊な拘束具、それを首に付けることによって自由を奪い、強制的に命令を聞かせる仕組みになっていましたね」
「主らは主従関係には見えぬが?」
「僕たちは違います。僕は――そんな主従関係はおかしいとしか思えない。この仕組み自体が大嫌いです」
「全てのものが、奴隷で当たり前という思想ではないのだな」
「はい。僕が住んでいたウィンディア・ウィンドでは――王が奴隷制度をなくすべく奮闘しており、この国に似た雰囲気がありますね」
「よい話を聞いたのう。今度はワシの番だ、主らはこの陽の国サンサン――全くといっていいほど知識がなかろう」
局長は真っ直ぐに僕たちを見ながら、
「ここからはワシの提案だが、お互いに情報を共有せぬか? 異国の知識はワシたちによい影響を与えるかもしれぬ。しばらくの間、この紅桜組に滞在してみてはどうか?」
願ってもない提案だった。
今の僕たちは右も左もわからない。この国の特別な人物に力を貸してもらえるのであればなんと心強いことか。
二つ返事で承諾したいところだが――心配事が一つある。
「ねえ、もうお菓子ないの?」
「がっはっは。ちょっと待っておれ、取りに行ってやろう」
「ライカ、少しは遠慮しなさい」
「でもでも、美味しいよぅ」
「クーラ殿、気にするでない。子供は食欲旺盛、元気が一番じゃ」
「だから、子供扱いしないでっ!」
「おうおう、すまんすまん」
お偉方にも遠慮がない。
局長が少し席を外したところで――僕はライカに尋ねてみる。
今後のこと、僕の独断で決めるのは揉める要因になりそうだからだ。
「ライカ、今の局長の話――頷いてもいいかな?」
「いいよ」
「意外とあっさりだね」
「えへへ、お菓子いっぱい食べれちゃうもんねっ!」
ライカがニッコリと笑う。
なんと無邪気な笑顔か――僕は激しく先行き不安になるのであった。
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