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火の都サラマン激突編
187話 過去の傷跡
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「……男? クーラお姉さん、なにを言っているの?」
「この世界に来た時、妹のアカウントで作成したキャラクターになっていたんだ。言うのが遅くなっちゃってごめん、中々切り出すタイミングが掴めなくて」
僕は経緯を説明する。
本来はメインのキャラクターがいること、妹のキャラクターはアイテムを保管する倉庫として使用させてもらっていたこと。
「現実の性別は男だったんだ。どうしてこうなったか僕もいまだに困惑してる。戻る方法も不明だからこのままいくしかなくってね」
「えぇーっ!」
ライカが立ち上がり――叫ぶ。
カミングアウトのタイミング、完全にミスったかもしれない。ライカも見た目からして難しいお年ごろ、男と入浴なんてそりゃ勘弁だよな。
僕の心配とは裏腹に、ライカは再度お湯に浸かり直し、
「じゃあ、クーラお兄さんって呼んだ方がいい?」
「えっ? それだけ?」
「ライカ、別にどっちでも気にならない」
「男が苦手とかはないの?」
ライカが奴隷時の話を聞いたあとだ。
男に対してトラウマがあってもおかしくはない。
局長も男だが――見た目、ライオンだからな。
「ライカは男性が苦手とかないよ。もしかして、買われた話のこと気にしてる? ライカはNPCが嫌いなだけだから」
「局長や風花さんは大丈夫なの?」
「……あの二人は、わからない。でも、お菓子とかご飯いっぱいくれるから、なんていうかライカの中では、セーフ、かなぁ」
なんとも曖昧な基準である。
今はどっちつかずな距離感でいいか――その時、僕はライカの首に付いた痛々しい傷跡に気が付く。
自然と、ライカの首筋に手を添えていた。
「……ライカ、これは」
「奴隷輪の跡、ライカを買った人を――殺して無理やり外したんだぁ。奴隷輪の制約によるショックで一度死んだんだけど、マスターが生き返らせてくれたの」
壮絶すぎる。
普段、ライカが装備している忍び装束は首元まで隠れているのでわからなかった。NPCを恨む理由、これでは――恨むなという方が無茶だ。僕がどうこういって心変わりするわけもない。
ライカが、自分自身で見方を変えるしかないだろう。
「それで、呼び方はどうしたらいいかなぁ?」
「そう、だね。どうしようか――今の見た目でクーラお兄さんは、周囲にも変に思われるだろうから」
「んんー、略してクーにぃとかはぁ?」
「くー、にぃ?」
「えへへ、これなら愛称にも聞こえない? クーにぃの"にぃ"の部分、他の誰かが聞いてもお兄ちゃんって意味には捉えないよねぇ」
まあ、間違いなく男とは思わないだろう。
「クーにぃ、クーにぃに決定っ! ライカ、お兄ちゃん欲しかったんだぁ」
ライカが嬉しそうに湯船の中を飛び跳ねるのであった。
「この世界に来た時、妹のアカウントで作成したキャラクターになっていたんだ。言うのが遅くなっちゃってごめん、中々切り出すタイミングが掴めなくて」
僕は経緯を説明する。
本来はメインのキャラクターがいること、妹のキャラクターはアイテムを保管する倉庫として使用させてもらっていたこと。
「現実の性別は男だったんだ。どうしてこうなったか僕もいまだに困惑してる。戻る方法も不明だからこのままいくしかなくってね」
「えぇーっ!」
ライカが立ち上がり――叫ぶ。
カミングアウトのタイミング、完全にミスったかもしれない。ライカも見た目からして難しいお年ごろ、男と入浴なんてそりゃ勘弁だよな。
僕の心配とは裏腹に、ライカは再度お湯に浸かり直し、
「じゃあ、クーラお兄さんって呼んだ方がいい?」
「えっ? それだけ?」
「ライカ、別にどっちでも気にならない」
「男が苦手とかはないの?」
ライカが奴隷時の話を聞いたあとだ。
男に対してトラウマがあってもおかしくはない。
局長も男だが――見た目、ライオンだからな。
「ライカは男性が苦手とかないよ。もしかして、買われた話のこと気にしてる? ライカはNPCが嫌いなだけだから」
「局長や風花さんは大丈夫なの?」
「……あの二人は、わからない。でも、お菓子とかご飯いっぱいくれるから、なんていうかライカの中では、セーフ、かなぁ」
なんとも曖昧な基準である。
今はどっちつかずな距離感でいいか――その時、僕はライカの首に付いた痛々しい傷跡に気が付く。
自然と、ライカの首筋に手を添えていた。
「……ライカ、これは」
「奴隷輪の跡、ライカを買った人を――殺して無理やり外したんだぁ。奴隷輪の制約によるショックで一度死んだんだけど、マスターが生き返らせてくれたの」
壮絶すぎる。
普段、ライカが装備している忍び装束は首元まで隠れているのでわからなかった。NPCを恨む理由、これでは――恨むなという方が無茶だ。僕がどうこういって心変わりするわけもない。
ライカが、自分自身で見方を変えるしかないだろう。
「それで、呼び方はどうしたらいいかなぁ?」
「そう、だね。どうしようか――今の見た目でクーラお兄さんは、周囲にも変に思われるだろうから」
「んんー、略してクーにぃとかはぁ?」
「くー、にぃ?」
「えへへ、これなら愛称にも聞こえない? クーにぃの"にぃ"の部分、他の誰かが聞いてもお兄ちゃんって意味には捉えないよねぇ」
まあ、間違いなく男とは思わないだろう。
「クーにぃ、クーにぃに決定っ! ライカ、お兄ちゃん欲しかったんだぁ」
ライカが嬉しそうに湯船の中を飛び跳ねるのであった。
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