転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

文字の大きさ
217 / 426
火の都サラマン激突編

216話 いざ、ウィンウィンに!

しおりを挟む
 陽の国サンサンを旅立つ日。
 僕とライカは鈴華姫の屋敷に来ていた。屋敷の主、鈴華姫はもちろん――局長、風花さん、紅桜組の隊員、皆が僕たちを見送るべく集まってくれた。
 ドラゴンとなった白雪、あとは――その背に乗り込むだけだ。

「ライカ、本当にいいの?」
「ライカはクーにぃと一緒に行くよ」
「ここに残って――僕を待ってくれてもいいんだよ」
「いやっ! ライカは絶対にクーにぃと一緒に行くのっ!!」
「もう一度だけ、友達にお別れの挨拶をしておいで」

 僕はライカに耳打ちする。

「……ライカ、一度行ったら戻れる保証はどこにもない。ちゃんと、前から向き合って言葉にしてくるんだよ」
「……うん。わかってる、わかってるよ」

 ライカが皆のもとに走って行く。

「にはは。置き去りにして――いきなり飛び立ってみるか? 怒り狂って泣きながら追いかけて来るかもしれないぞ」
「一生恨まれそうだからやめておこうかな」
「まあ、言葉にするというのは――妾も賛成だな」
「聞こえてたんだ」
「当然、ドラゴンの耳を舐めるな。貴様が妾の文句とか言ってたら、すぐ拳骨をしに行ってやるぞ」
「もう拳骨は勘弁してよ。あの日、後半の記憶が曖昧なんだよね」
「……曖昧のままでいい」

 白雪がそっぽを向きながら言う。
 ライカは鈴華姫の方に駆け寄り、珍しく笑顔で話している。
 そして、自身の髪に付けている真っ白なリボンを手渡した。

「鈴華にライカの大事なものをあげる」
「だったら、鈴華もお返しにやる」
「……桜の、簪?」
「鈴華の宝物じゃ。旅のお守りとして――身に付けておくのじゃ」
「ありがとうっ!」
「必ず、戻って来るのじゃぞ」
「うんっ!」

 ライカは皆に両手を振りながら、

「鈴華、ライオンのおじさん、風花、隊員さんたちっ! ライカ行って来るねぇっ!!」
「ライカ、準備はいいかな?」
「……ねぇ、クーにぃ、ライカは認識を間違えていたのかも。皆生きていて、もとの世界と一緒で、優しい人も悪い人もいるんだよねぇ」
「世界が変わろうが関係ない。心を見ることが大事だと思うよ」
「……ライカ、変われるかなぁ」
「僕からしたら、君はもう立派に変わっている」
「えへへ。行こう、クーにぃっ!」
「師匠、頼むっ!」
「ああ。誇り高きドラゴンの背に乗れたこと生涯自慢しろっ! 妾に掴まれ――振り落とされるなよっ!!」

 白雪の翼が大きく羽ばたく。
 皆の姿が一気に遠ざかっていき、遥か上空の彼方へ――今、僕たちはウィンウィンに向かって飛び立つのであった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...