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火の都サラマン激突編
230話 覚悟して
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「サマロはここで死んだんだね」
「はい。レイナさんを庇って――即死でした。正確には、サマロは私のことも一緒に庇って死んだんです」
ナコはその瞬間を思い出すよう――目を閉じて話す。
「魔力の粒子になって、皆離れ離れになった時――私は運良くグリーンラム草原、風の精霊の遊び場で目を覚ましました。ウィンウィンに戻ってサマロたちに話をして、クーラたちを探しに行こうと旅立つ前だったんです」
突如ウィンウィン上空に、空中戦艦が出現した。
街の皆が騒ぎ始める中、なんの躊躇いもなく――光が降り注いだという。
サラマンの兵士たちも攻め込み、ウィンウィンは一気に壊滅状態に陥ったとのことだった。
「戦艦から光が降り注いだ時、サマロはいち早く危険に気付いて――レイナさんを海に突き飛ばし、私の上に覆い被さったんです。体格差を考えて、咄嗟の判断で私たちを救ってくれたのだと思います」
「……そう、だったのか」
「亡くなる直前、サマロは笑顔でした。レイナさんに一言、愛していると伝えて欲しいと言っていました。出会った当初は言い合いばかりだったのに、最後の最後で――ズルいです。文句を言おうにもサマロはもういません」
ナコの涙が地面を濡らしていく。
厳しすぎる現実、どれだけ大人びて見えても――ナコは子供なのだ。
身近な人の死を簡単に受け入れられるわけがない。
「いくら泣いても、今が、変わるわけではないのに――死んだ人が、戻って来るわけでもないのに、涙しかでてきません」
「サマロが残した言葉、レイナさんに――ナコの口から直接伝えてあげよう」
「……レイナさんも海に落ちた後、見つからなかったんです」
「話すのが遅くなって――ごめん。僕がここに来るまでに、滞在していたサンサンという国があってね。レイナさんはそこにいる」
「……よかった」
ナコが胸をなで下ろす。
「今はまだ、すぐに伝えることは難しいけれど――全てが終わったら、一緒にサンサンに行こう」
「はいっ!」
ナコが力強く頷き返す。
この現場の様子を見る限り、降り注いだ光によって――大半のものが消え去ってしまっている。
遺留物らしきものはいくつかあるが原型をとどめておらず、持ち主が誰だったかの判断もつかない
サマロが残した一言、それが唯一の形見となるだろう。
レイナさんへの想いの込もった言葉――ここはいつ何時、どんな時に最後の言葉になるのかもわからない世界だ。
直接聞けるのであれば、本人がいるという瞬間を大切にしたい。
僕も真正面から――真剣に向き合うべきだろう。
「ナコ、艦内で僕に告白してくれたよね」
「へぁっ?」
ナコの顔が一気に紅潮する。
「もう一度、今だからこそ――聞きたいんだ」
「……もう一度、ですか?」
「うん」
「……」
ナコが一瞬俯き、覚悟を決めた顔で――僕を見る。
「私、一人の男性としてクーラが大好きです」
「ありがとう。僕もナコのことが――大好きだ。でも、僕のナコに対する好きは家族の好きと一緒なんだ」
「……はい。わかっています」
「いつか、いつの日か――僕が男に戻ることができた時、君を一人の女性として見たいと思う。それまで、返事を待ってもらうことはできるかな?」
優柔不断で――ズルい返事だとは理解している。
だけど、ナコの気持ちに聞こえないフリをして流すような真似は――もうしたくない。
今、伝えられる限りの想いを僕は言葉にする。
「もし、待たせている間に――別の人を好きになったりしても」
「絶対になりません」
話を遮るよう、ナコが勢いよく僕を引き寄せる。
まるで、キスをする距離感――ナコの顔がすぐ側に迫る。
いつものようなじゃれ合いの雰囲気はなく、その綺麗な瞳には――僕だけが映し出されていた。
「私は、出会った時から――あなただけが運命の人です。あなただけに一生付いて行くと誓ったんです。返事を待つまでの間、私は黙って立っているだけじゃありません。私のことを一人の女の子として好きになってくれるように努力します」
感情が昂ぶっているのか、ナコは頬を真っ赤に染めながら、
「クーラ、覚悟して」
視線――逸らすことなく、ハッキリとそう口にするのであった。
「はい。レイナさんを庇って――即死でした。正確には、サマロは私のことも一緒に庇って死んだんです」
ナコはその瞬間を思い出すよう――目を閉じて話す。
「魔力の粒子になって、皆離れ離れになった時――私は運良くグリーンラム草原、風の精霊の遊び場で目を覚ましました。ウィンウィンに戻ってサマロたちに話をして、クーラたちを探しに行こうと旅立つ前だったんです」
突如ウィンウィン上空に、空中戦艦が出現した。
街の皆が騒ぎ始める中、なんの躊躇いもなく――光が降り注いだという。
サラマンの兵士たちも攻め込み、ウィンウィンは一気に壊滅状態に陥ったとのことだった。
「戦艦から光が降り注いだ時、サマロはいち早く危険に気付いて――レイナさんを海に突き飛ばし、私の上に覆い被さったんです。体格差を考えて、咄嗟の判断で私たちを救ってくれたのだと思います」
「……そう、だったのか」
「亡くなる直前、サマロは笑顔でした。レイナさんに一言、愛していると伝えて欲しいと言っていました。出会った当初は言い合いばかりだったのに、最後の最後で――ズルいです。文句を言おうにもサマロはもういません」
ナコの涙が地面を濡らしていく。
厳しすぎる現実、どれだけ大人びて見えても――ナコは子供なのだ。
身近な人の死を簡単に受け入れられるわけがない。
「いくら泣いても、今が、変わるわけではないのに――死んだ人が、戻って来るわけでもないのに、涙しかでてきません」
「サマロが残した言葉、レイナさんに――ナコの口から直接伝えてあげよう」
「……レイナさんも海に落ちた後、見つからなかったんです」
「話すのが遅くなって――ごめん。僕がここに来るまでに、滞在していたサンサンという国があってね。レイナさんはそこにいる」
「……よかった」
ナコが胸をなで下ろす。
「今はまだ、すぐに伝えることは難しいけれど――全てが終わったら、一緒にサンサンに行こう」
「はいっ!」
ナコが力強く頷き返す。
この現場の様子を見る限り、降り注いだ光によって――大半のものが消え去ってしまっている。
遺留物らしきものはいくつかあるが原型をとどめておらず、持ち主が誰だったかの判断もつかない
サマロが残した一言、それが唯一の形見となるだろう。
レイナさんへの想いの込もった言葉――ここはいつ何時、どんな時に最後の言葉になるのかもわからない世界だ。
直接聞けるのであれば、本人がいるという瞬間を大切にしたい。
僕も真正面から――真剣に向き合うべきだろう。
「ナコ、艦内で僕に告白してくれたよね」
「へぁっ?」
ナコの顔が一気に紅潮する。
「もう一度、今だからこそ――聞きたいんだ」
「……もう一度、ですか?」
「うん」
「……」
ナコが一瞬俯き、覚悟を決めた顔で――僕を見る。
「私、一人の男性としてクーラが大好きです」
「ありがとう。僕もナコのことが――大好きだ。でも、僕のナコに対する好きは家族の好きと一緒なんだ」
「……はい。わかっています」
「いつか、いつの日か――僕が男に戻ることができた時、君を一人の女性として見たいと思う。それまで、返事を待ってもらうことはできるかな?」
優柔不断で――ズルい返事だとは理解している。
だけど、ナコの気持ちに聞こえないフリをして流すような真似は――もうしたくない。
今、伝えられる限りの想いを僕は言葉にする。
「もし、待たせている間に――別の人を好きになったりしても」
「絶対になりません」
話を遮るよう、ナコが勢いよく僕を引き寄せる。
まるで、キスをする距離感――ナコの顔がすぐ側に迫る。
いつものようなじゃれ合いの雰囲気はなく、その綺麗な瞳には――僕だけが映し出されていた。
「私は、出会った時から――あなただけが運命の人です。あなただけに一生付いて行くと誓ったんです。返事を待つまでの間、私は黙って立っているだけじゃありません。私のことを一人の女の子として好きになってくれるように努力します」
感情が昂ぶっているのか、ナコは頬を真っ赤に染めながら、
「クーラ、覚悟して」
視線――逸らすことなく、ハッキリとそう口にするのであった。
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