転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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もふもふの都開国編

264話 残された言葉

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 ライカの向かった先は――海岸沿いだった。
 この世界の国々は、基本的には王都を中心に広がっている。元来、四国だったこともあり火の都サラマンも地形的には似たようなものだ。目の前には青く澄み切った蒼龍海、その水平線の彼方には――王都の全体像が小さく目視できる。
 ライカは静かに前だけを見ていた。

「ライカ」
「……クーにぃ? どうかしたの?」
「いや、ライカが気になって――追いかけて来たんだ」
「そっかぁ。なんかね、マスターのこと思い出しちゃって」

 リボルの遺言はライカには伝えてある。
 最後の言葉に対してライカはなにも言わず、僅かに微笑み――頷き返すだけだった。リボルはどんな想いを込めてこの言葉を残したのか、今となってはもう真実を知るすべはない。
 ライカは砂を指でいじりながら、

「ライカ、マスターの言葉の意味――今日までずっと考えてたんだぁ」
「うん」
「ライカの言葉は全然届かなかったのに、ライカには言葉を残すんだって――最後まで一方的だったことにムカついたりもした」
「リボルらしいよね」

 本当に――リボルらしい。
 自分の好きなこと、やりたいこと、面白いこと――自身の欲求だけをとことん追求していたのだ。思想という根本的なベクトルは僕と違ったが、もし向いている方向性が一緒だったならば――良き友、良き仲間になれたのではないかと思う。
 リボルの異常なまでに偏った思考、もとの世界で彼は――どんな人生を歩んでいたのだろうか。
 自身の生き方に、周囲を顧みることなく――一直線だったのだ。

「ねぇ、クーにぃ。自分らしく好きに生きるってどういうことなんだろ? 考えても考えても、まだまだライカにはわからない――わからないよ」

 正直、僕がなにかを――言えた義理ではない。
 過去の話とはいえど、ライカがマスターと親しんだ人物を殺した張本人なのだ。形にできる言葉は――限られている。
 実際に、僕が――ライカを見てきた日々だけだろう。

「ライカはこれから色々な出会いと経験がたくさん訪れる。この世界だからこそ、もとの世界にはなかった――生き方があるんだ。ライカも僕と出会った当初と考え方は大きく変わっているんじゃないかな。自分の気持ちに素直に動けば大丈夫だよ」

 僕は断言する。

「……ライカは、いつも通りでいいってこと?」
「そうだね。僕は――マイペースで優しいライカが大好きだ」
「えへへ。そっか、そっかぁ」

 ライカは無邪気な顔でニッと笑いながら、

「ライカもね、クーにぃのこと大好き」
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