転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ

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もふもふの都開国編

303話 ドキドキ

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 工房内、僕たちは別室に案内される。
 ここはマイマイの私室、依頼者にだけ入室が許された場所、いわば面談室みたいなようなものだった。マイマイはいつもこの部屋で質疑応答をして、どのようなアイテムを求めているか依頼者とすり合わせをしていく。僕たちを入れてくれたということは、協力を得られたといっていいだろう。
 過酷な要求をされることもなく、ゴザルを連れて来てよかったと心底思う。
 マイマイがお茶を運んで来ると席を外す。続けて、ナコもお手伝いするとマイマイの後を付いていった。
 残された僕たち、ゴザルがジト目で睨みながら、

「ソラ、あなた――こうなるって予想していたわね」
「……少しだけ」
「ふーん。私はいいように使われたわけね」
「ごめん。全部が全部そんなつもりじゃなかったけれど、結果的にはそう思われても仕方ないよね」
「私、ソラと冒険できるのを楽しみにしていたのに」
「うぐっ」
「ソラが来て欲しかったのは、天凪璃々の方だったのね」

 ゴザルが悲しそうに呟く。

「必ず埋め合わせはする。今回だけは――許してくれないかな」
「じゃあ、今度私とデートして」
「そんなことでいいの?」
「手も繋いで」
「わかった」
「っっっ」

 パァッと、花開いたようにゴザルが微笑む。
 機嫌は直ったようだが、こんな些細なことでいいのかと――逆に申しわけなく思ってしまう。その嬉しそうな表情を見てなんて可愛らしい女の子なのだろうと、不覚にも胸がドキッとした。
 ついつい、意地悪したくなり――僕はゴザルの耳もとで囁く。

「キスはしなくていいの?」
「……キス?」
「前は素直にして欲しいって言ってたじゃないか」
「……っ! あ、あの時は、私、冷静じゃなかった、から」

 強気になったり、弱気になったり、ゴザルの反応に吹き出してしまう。
 そんな僕にゴザルがムッとしながら――膝の上に乗っかってくる。突然の行動にフリーズする僕に対し、ゴザルは精一杯に強がった顔で首に手を回す。
 ゼロに近い距離、視線が――交わり合う。

「いつもいつも、ソラの余裕な態度がムカつく」
「余裕なわけじゃないよ」
「本当? 少しはドキドキしてる?」
「少しどころじゃない。今も――心臓が張り裂けそうだ」

 正直な気持ちを伝える。
 僕の見た目がどうであれ――中身は男、男なのだ。こんな綺麗な女性に密着されて冷静でいられるわけがない。
 手を伸ばせば、どこにでも触れることができる。
 もし、僕が男の身体であったなら――色々と大変なことになっていただろう。
 今も勝手に動きそうな両手を無理やり抑え込んでいる。

「ゴザル、僕が男だってこと忘れないでね」
「……発情しちゃったの?」
「何度も言っているけれど、バリバリに性欲のあるお年ごろだよ」
「……ま、また触ってもいいわよ」
「普通に許可されると困っちゃう」

 そう、困っちゃう。

「……クーラ、なにをしているんですか?」

 ゴザルの背後、黒いオーラを放ちながらナコが立っていた。
 一体、いつから見ていたのか――ここが重要なポイントだろう。なんかこの光景デジャブなくらいに見覚えがある。
 僕は答えを探るべく口を開こうとして、

「お侍さんの耳もとで――キスはしなくていいの? と、囁いていたところから見ていましたよ」

 最早、息つく暇もない強烈な先制攻撃である。
 ミミモケ族ってすごいなぁ、あんな小さな声でも聞き取っちゃうんだ。
 僕はゴザルをそっと膝の上から下ろし、ナコの持ってきた湯呑みを手に取り――啜る。

「うわぁ、美味しいね」
「今、マイマイさんが粉末茶を探していまして――それ、まだお湯ですよ」

 逃げられない。
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