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もふもふの都開国編
315話 ホムラには敵わない
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ペルファリア大山脈、攻略開始から3日が過ぎた。
すでに、山頂部にたどり着いてはいるのだが目的のネームドが見つからない。誰かに狩られたという可能性は低いので――地道に探し続けるしかなかった。
現在、僕たちはポケットハウスにて暖を取っている。
所有者はホムラ、ゴザルと同時期に入手したようで――大変ありがたい。
猛吹雪の中でも、普段ホームにいる心地良さとなんら変わりない。
だが、一つだけ問題点があった。
「ソラちゃん、肩揉んでね」
「はい」
「次は晩ご飯の用意お願い」
「はい」
何故か、僕だけ入室条件を設定されたのだ。
その条件とは、ポケットハウスを使用している間――ホムラの言いなりになることだった。いつも僕がナコといる腹いせか、ここぞとばかりの反撃である。
締め出されたら遭難必至、今はホムラに従う他なかった。
「……絶対にあとでナコにチクってやる」
「ん? なんか言った?」
「ううん。すぐに晩御飯の支度をするね」
「クーにぃ、今日の晩御飯なになに?」
「肉鍋だよ」
「えぇー、またお鍋? ここに来てからずっとじゃない? 私、お寿司とか食べたい気分かな。ソラちゃん、ペルファリア大山脈ってアイスフィッシュいたよね?」
「いたよね? じゃないよ」
「明日の献立が楽しみかなぁ」
「……パワハラすぎる。ホムラ社長のブラック会社だ」
「あはは。働け働けーい」
なんてワガママな姉なのか。
所々、ナコに似ている部分はあるが――根本的に正反対すぎる。誠実さと優しい成分は全て一方向に流れてしまったのだろう。
僕はナコに告げ口することを、改めて深く胸に刻み込む。
「ライカ、お鍋大好きだから嬉しいよ」
唯一の良心、ライカが笑顔で言う。
悪魔のホムラ、寡黙なポンズ、自分で編成しといて言うのもなんだが――心が折れそうな中ライカがいてくれて本当によかった。
僕はライカの頭をなでながら、
「ライカは鶏肉が好きなんだよね」
「えへへ。皮の部分がプルっとしてて好きなんだぁ」
きゃわわっ!
滞在中、お鍋のメイン具材は鶏肉だけにしようと固く決意する。
このお鍋続きの中――ライカと同じく、文句を言わない人物がもう一人いた。
「……肉鍋、いいよね」
ポンズである。
お鍋続きの理由は――単純に栄養満点、身体の芯から温まること、雪山という場所柄体調管理には持ってこいと考えたからだ。
しかし、ポンズ――ポンズかぁ。
「ポンズの名前の由来って、お鍋好きだからだったりして」
「……ぎくっ」
「もしかして、当たりだった?」
「……ぎくぎくっ」
ポンズが狼狽えている。
この反応――正解だったに違いない。ゲーム時から自身の好物に関する名前を付ける人は多かった。不思議でもなく恥ずかしくもなく、なんなら僕は倉庫だからという理由で蔵である。
せっかくなので、会話のキッカケとして尋ねてみる。
「ちなみに、ポンズは――どんなお鍋が好きなの?」
「……んん、お鍋といっても種類はたくさんある。肉鍋、海鮮鍋、辛鍋、すき焼きとおでんもお鍋の一つといって間違いない。特にうちはシンプルな素材の味わい、水炊きが一番ありのままで美味しいと考えている。そこにポン酢を浸して食べた時、酸味と栄養が体内に滑り込む瞬間が生を実感する。ここ数日は幸せタイム、クーラさんの作るお鍋は最高に素晴らしかった」
「予想を超えてめちゃくちゃ喋るっ!」
「……つまり、文句はなに一つない」
「ありがとう。そこまで言ってくれると嬉しいよ」
「……晩御飯、楽しみ」
「ポンちんが喋りすぎててウケる」
ライカが爆笑しながら言う。
ライカに聞いて知ったことだが――この二人、リボルのギルド内でも仲は悪くなかったという。
リボルの任務をペアで遂行することもあったそうだ。
「……たまには、喋りたい時もある」
「ライカ、最初ポンちんに会った時はわからなかったよ。ポンちんはいつも顔隠してたからねぇ」
「……この莫大な依頼料、期間内はクーラさんの命令になんでも従う」
その言葉を聞き、ライカが悪戯気な笑みを浮かべ、
「えぇ、なんでもぉ? ポンちん、エッチなこと命令されたらどうするの?」
「……脱げと言われたら脱ぐ」
ポンズが本気度を表明するようメイド服の裾をたくし上げる。
目を逸らす暇もなく――ガーターベルトから始まり、漆黒のフリフリした下着が直球で視界に入り込む。
こ、こんな細部までこだわっていたのか。
「……下着も脱ぐ?」
「クーにぃ、そんなことまで命令しちゃうのっ?!」
「うわぁ、ドン引いちゃう。ソラちゃんがド変態な命令してたって――ナコちゃんとゴザルちゃんにチクっちゃおう」
「いや、どうして僕が命令したことになってるのっ!?」
勘弁してぇっ!
さらに、ホムラに弱味を握られる形になるのであった。
すでに、山頂部にたどり着いてはいるのだが目的のネームドが見つからない。誰かに狩られたという可能性は低いので――地道に探し続けるしかなかった。
現在、僕たちはポケットハウスにて暖を取っている。
所有者はホムラ、ゴザルと同時期に入手したようで――大変ありがたい。
猛吹雪の中でも、普段ホームにいる心地良さとなんら変わりない。
だが、一つだけ問題点があった。
「ソラちゃん、肩揉んでね」
「はい」
「次は晩ご飯の用意お願い」
「はい」
何故か、僕だけ入室条件を設定されたのだ。
その条件とは、ポケットハウスを使用している間――ホムラの言いなりになることだった。いつも僕がナコといる腹いせか、ここぞとばかりの反撃である。
締め出されたら遭難必至、今はホムラに従う他なかった。
「……絶対にあとでナコにチクってやる」
「ん? なんか言った?」
「ううん。すぐに晩御飯の支度をするね」
「クーにぃ、今日の晩御飯なになに?」
「肉鍋だよ」
「えぇー、またお鍋? ここに来てからずっとじゃない? 私、お寿司とか食べたい気分かな。ソラちゃん、ペルファリア大山脈ってアイスフィッシュいたよね?」
「いたよね? じゃないよ」
「明日の献立が楽しみかなぁ」
「……パワハラすぎる。ホムラ社長のブラック会社だ」
「あはは。働け働けーい」
なんてワガママな姉なのか。
所々、ナコに似ている部分はあるが――根本的に正反対すぎる。誠実さと優しい成分は全て一方向に流れてしまったのだろう。
僕はナコに告げ口することを、改めて深く胸に刻み込む。
「ライカ、お鍋大好きだから嬉しいよ」
唯一の良心、ライカが笑顔で言う。
悪魔のホムラ、寡黙なポンズ、自分で編成しといて言うのもなんだが――心が折れそうな中ライカがいてくれて本当によかった。
僕はライカの頭をなでながら、
「ライカは鶏肉が好きなんだよね」
「えへへ。皮の部分がプルっとしてて好きなんだぁ」
きゃわわっ!
滞在中、お鍋のメイン具材は鶏肉だけにしようと固く決意する。
このお鍋続きの中――ライカと同じく、文句を言わない人物がもう一人いた。
「……肉鍋、いいよね」
ポンズである。
お鍋続きの理由は――単純に栄養満点、身体の芯から温まること、雪山という場所柄体調管理には持ってこいと考えたからだ。
しかし、ポンズ――ポンズかぁ。
「ポンズの名前の由来って、お鍋好きだからだったりして」
「……ぎくっ」
「もしかして、当たりだった?」
「……ぎくぎくっ」
ポンズが狼狽えている。
この反応――正解だったに違いない。ゲーム時から自身の好物に関する名前を付ける人は多かった。不思議でもなく恥ずかしくもなく、なんなら僕は倉庫だからという理由で蔵である。
せっかくなので、会話のキッカケとして尋ねてみる。
「ちなみに、ポンズは――どんなお鍋が好きなの?」
「……んん、お鍋といっても種類はたくさんある。肉鍋、海鮮鍋、辛鍋、すき焼きとおでんもお鍋の一つといって間違いない。特にうちはシンプルな素材の味わい、水炊きが一番ありのままで美味しいと考えている。そこにポン酢を浸して食べた時、酸味と栄養が体内に滑り込む瞬間が生を実感する。ここ数日は幸せタイム、クーラさんの作るお鍋は最高に素晴らしかった」
「予想を超えてめちゃくちゃ喋るっ!」
「……つまり、文句はなに一つない」
「ありがとう。そこまで言ってくれると嬉しいよ」
「……晩御飯、楽しみ」
「ポンちんが喋りすぎててウケる」
ライカが爆笑しながら言う。
ライカに聞いて知ったことだが――この二人、リボルのギルド内でも仲は悪くなかったという。
リボルの任務をペアで遂行することもあったそうだ。
「……たまには、喋りたい時もある」
「ライカ、最初ポンちんに会った時はわからなかったよ。ポンちんはいつも顔隠してたからねぇ」
「……この莫大な依頼料、期間内はクーラさんの命令になんでも従う」
その言葉を聞き、ライカが悪戯気な笑みを浮かべ、
「えぇ、なんでもぉ? ポンちん、エッチなこと命令されたらどうするの?」
「……脱げと言われたら脱ぐ」
ポンズが本気度を表明するようメイド服の裾をたくし上げる。
目を逸らす暇もなく――ガーターベルトから始まり、漆黒のフリフリした下着が直球で視界に入り込む。
こ、こんな細部までこだわっていたのか。
「……下着も脱ぐ?」
「クーにぃ、そんなことまで命令しちゃうのっ?!」
「うわぁ、ドン引いちゃう。ソラちゃんがド変態な命令してたって――ナコちゃんとゴザルちゃんにチクっちゃおう」
「いや、どうして僕が命令したことになってるのっ!?」
勘弁してぇっ!
さらに、ホムラに弱味を握られる形になるのであった。
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