343 / 426
もふもふの都開国編
342話 理想の未来に向けて
しおりを挟む
一ヶ月後。
絆の都もふもふは順調に稼働、見る見る内に――国民が増えていった。風の都ウィンディア・ウィンドのモーフル王、石の都ストーンヴァイスのイワンドゥ王、特にこの二人の働きかけが大きかったといえる。
国の名に相応しく、人口の大半がミミモケ族となっていた。
もふもふ国内では奴隷制度は全面禁止、国のために長期で働いた功績には――市民権の獲得を可能にしてある。自身の身内が奴隷として売買されているケースには、買い取りのための資金を先払いにて渡す制度も設けた。
目指す先は、三国全てで――平等な体制を築きたい。
その先駆者として僕はもふもふを種族差別のない国にする。奴隷制度など必要ないということを世界に示したいのだ。
現在、屋敷内では――ポンズが書類をまとめていた。
国が動き出して忙しい時分、事務仕事を一任させているのだが――文句も言わず黙々と働き続けている。彼女もミミモケ族であるが所以か、ミミモケ族の待遇が少しでもよくなるならと奮闘していた。
今や、メイド姿は普段着となっている。
「ポンズ、奴隷として売買されていたミミモケ族、三国でどれくらいの人数を集めることができたかな?」
「ウィンウィン、ストーンヴァイスは協力的だった。この二国で管理されていた奴隷は全部引き受けてあるよ」
ポンズは付け加えて、
「でも、アクアニアスだけは――連絡が来ない。この国は王が腐ってるから、奴隷の裏取引も普通に黙認している気がする」
アクアニアスの王、ウォータス。
僕が開国すると宣言した際も、最後まで反対していた人物である。ゲーム時からウォータスは自身の欲を第一として、人格者にはほど遠いキャラクターであった。
三国会合の際にも、それはよく理解できた。
「そうだね、個人的にもありえる話だと思う。だけど、王相手に可能性だけで決め付けるのは――危険すぎる」
「だからこそ、うちをアクアニアスに潜入させてほしい。証拠を突き止めて、王の座から失脚させたい」
ポンズが怒気を含みながら言う。
最近、もふもふ領内に孤児院を設立したのだが――これは、ポンズたっての希望であった。ポンズはどこからともなくミミモケ族の子供を何十人と連れ帰り、この国に置いてほしいと懇願したのだ。
大金が必要だった理由は――そこに深いつながりがあるのだろう。
「皆を受け入れてくれたクーラさんには感謝している」
「仲間の頼みを断るわけないよ」
「ありがとう」
ポンズが微笑む。
ペルファリア大山脈から帰還後、本当にポンズは――変わった。無表情だったころが懐かしく思えるよう、感情豊かに笑うようになった。
「ポンズ、子供たちはこの国には慣れてきたかな?」
「毎日楽しそうにしているよ」
皆、ポンズをお姉ちゃんと呼んで慕っている。
その反応を見るだけでも、ポンズの心根がどういったものかが伝わる。そういった点も踏まえて――僕は先ほどの提案に頷くことはできなかった。
「潜入の件だけど――却下かな」
「どうして? うちもなにか役に立ちたい」
「役なら今でも十分立っている。それに、今ポンズに万が一があったら――僕は子供たちに合わせる顔がないよ」
「うぅーっ」
「でも、ポンズの案はありだね」
「だったら、うちが」
「大丈夫、潜入に最適の人物がいるよ」
そう、古来より――お手の物なジョブである。
絆の都もふもふは順調に稼働、見る見る内に――国民が増えていった。風の都ウィンディア・ウィンドのモーフル王、石の都ストーンヴァイスのイワンドゥ王、特にこの二人の働きかけが大きかったといえる。
国の名に相応しく、人口の大半がミミモケ族となっていた。
もふもふ国内では奴隷制度は全面禁止、国のために長期で働いた功績には――市民権の獲得を可能にしてある。自身の身内が奴隷として売買されているケースには、買い取りのための資金を先払いにて渡す制度も設けた。
目指す先は、三国全てで――平等な体制を築きたい。
その先駆者として僕はもふもふを種族差別のない国にする。奴隷制度など必要ないということを世界に示したいのだ。
現在、屋敷内では――ポンズが書類をまとめていた。
国が動き出して忙しい時分、事務仕事を一任させているのだが――文句も言わず黙々と働き続けている。彼女もミミモケ族であるが所以か、ミミモケ族の待遇が少しでもよくなるならと奮闘していた。
今や、メイド姿は普段着となっている。
「ポンズ、奴隷として売買されていたミミモケ族、三国でどれくらいの人数を集めることができたかな?」
「ウィンウィン、ストーンヴァイスは協力的だった。この二国で管理されていた奴隷は全部引き受けてあるよ」
ポンズは付け加えて、
「でも、アクアニアスだけは――連絡が来ない。この国は王が腐ってるから、奴隷の裏取引も普通に黙認している気がする」
アクアニアスの王、ウォータス。
僕が開国すると宣言した際も、最後まで反対していた人物である。ゲーム時からウォータスは自身の欲を第一として、人格者にはほど遠いキャラクターであった。
三国会合の際にも、それはよく理解できた。
「そうだね、個人的にもありえる話だと思う。だけど、王相手に可能性だけで決め付けるのは――危険すぎる」
「だからこそ、うちをアクアニアスに潜入させてほしい。証拠を突き止めて、王の座から失脚させたい」
ポンズが怒気を含みながら言う。
最近、もふもふ領内に孤児院を設立したのだが――これは、ポンズたっての希望であった。ポンズはどこからともなくミミモケ族の子供を何十人と連れ帰り、この国に置いてほしいと懇願したのだ。
大金が必要だった理由は――そこに深いつながりがあるのだろう。
「皆を受け入れてくれたクーラさんには感謝している」
「仲間の頼みを断るわけないよ」
「ありがとう」
ポンズが微笑む。
ペルファリア大山脈から帰還後、本当にポンズは――変わった。無表情だったころが懐かしく思えるよう、感情豊かに笑うようになった。
「ポンズ、子供たちはこの国には慣れてきたかな?」
「毎日楽しそうにしているよ」
皆、ポンズをお姉ちゃんと呼んで慕っている。
その反応を見るだけでも、ポンズの心根がどういったものかが伝わる。そういった点も踏まえて――僕は先ほどの提案に頷くことはできなかった。
「潜入の件だけど――却下かな」
「どうして? うちもなにか役に立ちたい」
「役なら今でも十分立っている。それに、今ポンズに万が一があったら――僕は子供たちに合わせる顔がないよ」
「うぅーっ」
「でも、ポンズの案はありだね」
「だったら、うちが」
「大丈夫、潜入に最適の人物がいるよ」
そう、古来より――お手の物なジョブである。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。
異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。
せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。
そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。
これは天啓か。
俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる