地獄に落ちた僕らは生きる意味を知った。

姫がかり

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第1章:針山地獄編

第1話 死んだ世界

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> 目を開けた瞬間、そこには――異常なほど、真っ白な空間が広がっていた。
音もない。温度もない。匂いも、感触も。
まるで世界そのものが、息をするのをやめたようだった。



「……ああ、死んだんだ」
ようやく終わった。これで、楽になれる。
そう思ったのに――

> 「案内人だ。ついてこい」



声がした。
振り返ると、そこにいたのは背の高い、無表情な男だった。
黒い[羽織|はおり]に、異様に長い髪。瞳の奥は、まるで感情を捨てた空洞のようだった。

彼に導かれ、僕は『[裁きの間|さばきのま]』へと連れていかれた。

そこは空間すらも歪んで見える、異様な場所だった。
[玉座|ぎょくざ]に座っていたのは、常人の三倍はあろうかという巨大な男。

[冠|かんむり]をかぶり、赤く光る目。
長く垂れた舌は、膝のあたりまで届きそうだった。

その存在が、口を開く。

> 「我が名は[閻魔大王|えんまだいおう]。生者の罪と善行を測り、死後の行き先を決める者である」



直後、天から音もなく降ってきた石碑のような巨大な[天秤|てんびん]。
片方には「善行」、もう一方には「悪行」と刻まれた皿があった。

僕の人生が、次々と映像として現れる。
まるで、神に提出された“チェックリスト”のようだった。


---

◉善行一覧:

・学校でいじめられても、誰も責めなかった → +2点
・飼い猫を最後まで看取った → +500点
・両親に感謝を心からしていた → +1500点
・自然を大切にした → +1000点
・通りすがりの老人を助けた → +300点
・SNSで暴言を吐かなかった → +50点
…他、合計 +18,230点


---

閻魔はうなずく。

> 「ふむ。なかなかの善き魂だな」



その言葉に、僕はほんの少しだけ、救われたような気がした。

そうだよ、僕は……
ただ、疲れていただけなんだ。
誰かを傷つけたくて死んだわけじゃない。

きっと、天国に――

> 「……だが」



その声は、先ほどとは違う、重く、沈んだ響きを持っていた。

> 「お前は“自ら命を断った”。それは、すべての善行を吹き飛ばす重大な罪である」
「いかなる動機があれど、“命を捨てた”という一点において、汝の[魂|たましい]は[穢|けが]れている」



ゴウン――ッ!

天秤の悪行側に、[漆黒|しっこく]の球体が落とされた。
あまりにも巨大で、鈍く濁ったその球が、ガクンと天秤を傾ける。

> 「自死、-1億点」



……何かが、音を立てて崩れ落ちるような感覚。

> 「よって、行き先は……[地獄|じごく]と定まった」



> 「……っ」



体が、勝手に後ろに引かれていく。
足首に何かが巻きつき、僕を[深淵|しんえん]の底へと引きずり込もうとしていた。


---

> 「ちょっと待ってくれよ……!
そんなの……おかしいだろ……!」



必死に声を上げた。
だけど、僕の叫びは、誰にも届かなかった。

それが、この世界の“[絶対の理|ぜったいのことわり]”だった。






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