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第1章:針山地獄編
第2話 針山地獄
しおりを挟むここが、地獄――。
そう教えられなくても、見た瞬間にわかった。
目の前に広がるのは、血と、地面――すべてが“針”で覆われていた。
何百メートル先までも、何キロ先までも、終わりが見えない。
一本一本が、鋭利で、不気味に光っていた。
まるで、ここを通る者を待ち構える“処刑装置”のように。
靴はなかった。
気がつけば、素足だった。
足の裏に残る体温を奪うように、冷たい鉄と針が待っていた。
> 「……歩け、って……これを……?」
思考が追いつかない。
だって――
踏めるわけがない。
誰がどう見たって、それは“歩く道”じゃない。
それは、人を壊すために敷かれた罠。
魂を削るために作られた、罰。
でも。
背後から、重低音が響いた。
ズシン……ズシン……ッ!
振り向けば、巨大な影が現れた。
人間の五倍以上の身長。筋肉の塊。
全身から血のような蒸気を吹き出しながら、巨大な棍棒を引きずっている。
――鬼。
> 「止まるなァァァアアアア!!!!」
叫び声が空間を震わせ、耳を裂いた。
その瞬間、動けなかった誰かの背中に、棍棒が振り下ろされる。
ドシャッ
骨の砕ける音。
肉の裂ける音。
そして、声にならない叫び。
直視できなかった。
けれど、嗅覚はごまかせない。
血と、焼けた肉の臭いが、確かにそこにあった。
背筋が凍った。
思わず後ろへ下がろうとしたが――背後にも鬼がいた。
> 「進め……進め……進め……!」
低く、呪詛のように響く声。
足が勝手に前へ出る。
いや――出させられる。
一歩。
針が、肉を裂いた。
> 「っ……ぐあッ……!!」
突き刺さる。
皮膚を、肉を、筋を、魂を貫いてくる。
痛みの種類が、違う。
ただの肉体ではない。
これは、“魂”を焼いている。
そのまま、もう一歩。
今度は、足の裏を突き抜けた針が、甲にまで達した。
> 「いッ……が、ッッ!!」
声が漏れる。
涙が勝手に流れる。
でも、止まれない。
止まったら――殺される。
叫び声をあげる者も、もはやいなかった。
叫ぶことに意味がないと知った者だけが、生き残っている。
みんな、無表情だった。
生きているのか、死んでいるのか、わからないような顔で、ただ前に進む。
針に足を刺されながら。
血を流しながら。
誰ひとり、文句も言わずに。
いや――違う。
きっと彼らは、とっくに叫ぶことを“やめた”んだ。
誰も助けてくれない。
どこにも出口はない。
先に何があるかもわからない。
でも、歩くしかない。
それが、この世界の絶対の理。
そして何より――
ここには“死”すらない。
痛みに耐え、足を失っても、魂が再生し、また歩かされる。
苦しみは、終わらない。
> 「これが……地獄……か……」
その言葉すら、やがて意味を失っていく。
感情は擦り切れ、言葉は無力になる。
歩く。
刺される。
血を流す。
倒れかけて、また立ち上がる。
誰にも気づかれず、誰にも救われず。
ただ、“存在”を地獄に刻まれながら、前へ。
――それが、最初の一歩だった。
最後まで読んでくれて、ありがとう。
「読了ボタン」を押してもらえると、君の応援が、彼らの魂に届きます。
次の一歩へ、共に進もう。
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