地獄に落ちた僕らは生きる意味を知った。

姫がかり

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第1章:針山地獄編

第4話 灼熱地獄

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> ――20年目。



[針山地獄|はりやまじごく]が、終わった。

二十年経てば、違う地獄に移動するようだ。
よかった。この地獄から、解放される。

歩いた。
二十年間、歩き続けた。

血を流しながら、骨を砕かれながら、魂を削られながら――
それでも、歩いた。

地面も、空も、温度も――感覚すら希薄で。
ただ、心がふわっと浮いたような、奇妙な感覚。

「……終わったのか……?」

言葉にした自分の声が、あまりにかすれていて、驚いた。
いつから言葉を発していなかったのかさえ、思い出せなかった。

足はまだ痛む。
でも、さっきまで感じていた“針”の感触が、ない。
視界に、鉄の山もない。

誰もが、そう思っただろう。
――ようやく、終わったのだと。

だけど。

次の瞬間、世界が燃えた。


---

ゴォォォォオオオオオッッ!!!!!

音というより、耳を破壊する圧力だった。
[熱風|ねっぷう]が、皮膚を切り裂く勢いで襲いかかる。

目を開けていられない。
[瞼|まぶた]の上からでも、焼けるのがわかる。

皮膚という皮膚が、まるで紙のように焦げ、めくれ、剥がれていく。

呼吸をすれば、喉が焼けた。
肺が痛む。
熱を吸い込んだだけで、[臓器|ぞうき]が焼け焦げる。

「――ッッが、ぁあ、ああッッ!!」

のたうち回った。
身体を地面につけたが、それも意味がなかった。

地面も、[灼熱|しゃくねつ]だった。

焼けた鉄の床。
そこに手をついた瞬間、手のひらの皮膚が剥がれた。

肉が、焼ける音がする。

「ひッ、ああああッ、あ゛あ゛ああああああアアアアッ!!!」

焼け爛れる。
手が、腕が、顔が、足が、全身が――

焼かれる。

[針|はり]の痛みなんて、生ぬるかった。
あれは「突き刺す」痛みだった。
これは、「焼き尽くす」痛みだった。

内側からも、外側からも――焼かれていた。

地面は、[溶岩|ようがん]に近いほどの熱を持ち、
空からは太陽のような“[火柱|ひばしら]”が何本も、周期的に落ちてくる。

避けられない。
避けようがない。
避けたところで、空気そのものが燃えているのだ。

人間の皮膚が、この温度に耐えられるわけがない。
魂さえ、焦げていく。


---

「……なんで……なんで……」

言葉を絞り出しても、自分の喉から煙が出た。

涙を流そうにも、瞬時に蒸発した。
目からは、水ではなく、**焦げた涙の“跡”**だけが残った。

> 「終わったんじゃなかったのか……?」



「俺……耐えたじゃないか……?」

「なんで……また……地獄なんだよ……」

誰に向けた問いなのかも、わからない。
でも、答えはなかった。

あるのは、焼ける音。
焼ける臭い。
焼ける感覚。
そして――焼ける恐怖。

足元には、誰かの黒く焼け焦げた骨が転がっていた。

それが誰だったのか、わからない。
だけど、きっとどこかの地獄を、耐えた者だったのだろう。

でもここで――また焼き尽くされた。

> つまり、終わりなんて、存在しない。



これは“新しい地獄の始まり”にすぎなかったのだ。


---

絶望なんて、もうとっくに超えていたと思っていた。

でも、この場所はそれすら否定する。

希望という希望を、焼き尽くす世界。

それが――《灼熱地獄》だった。



最後まで読んでくれて、ありがとう。
「読了ボタン」を押してもらえると、君の応援が、彼らの魂に届きます。
次の一歩へ、共に進もう。

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