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その4

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 パーティというのは状況や相手に応じて変えるのが望ましい。前衛職なら後衛職をというふうに2人。後は戦う相手を見てメンバーを選ぶ。
 しかし、この場合、連携というものは出来ないと思った方がいい。いきなり背中を任せるのも、任されるのもどちらも無理だから。

 だから、私たちはパーティメンバーを入れ替える事なく、それぞれの職を極めた。
 戦闘中、誰がどこにいて何をして、何をしようとするのかも把握できるほどに連携もあった。

 だが、この連中は……。

 パーティを組んだのは昨日今日。役割はおろか、自分の武器すらまともに扱えないとは。
 連携はおろか意思疎通もままならない。
 前衛が前に出過ぎるから、後衛は思ったように撃てず、威嚇にもならない無駄弾を撃つ。
 前衛は前衛で援護が足りないから退がるに退がれない。盾持ちはどうしたらいいのか分からないと。
 この悪循環に喜ぶのは怪獣だけだ。

 駆け出したちが対峙しているのは、長く伸びた耳が特徴的な怪獣たち。
 あの耳は広域に音を拾い、バネのような筋力をしている脚は、飛び跳ねるのに適している。ピョンピョン飛び跳ねるから狙いがつけにくいし、遅く大振りな攻撃など当たるわけがない。

 まだ弾がある今のうちはいいが、なくなれば追い詰められ、あの怪獣たちの餌だ。
 今の若い奴らは武器に頼りすぎだな……。
 10年前と比べると武器の性能は比較にならないほど上昇したが、そのせいでこんな無茶をやる。

「──前衛は退がれ! 後衛は2人で狙いを合わせて撃って1匹でも数を減らせ。真ん中のお前は仲間の盾になりつつ後ろへだ!」

 教えてくれる人間がいないのも問題か。手が回らないんだろうが、それで死人を増やしていてはな。
 見に来てしまったからには、口も出すことにしよう。

「──聞こえないのか! 音に怪獣がさらに集まってくれば退路もないぞ!」

 見ず知らずの人間の言葉に耳を貸す気はないらしく、駆け出しのパーティは一丸となって戦闘を続行する。
 見ず知らずの人間より、付き合いの浅いパーティメンバーということらしい。

「……仕方ない」

 戦闘は全部避けるつもりだったが一応持ってきた弓を構え、駆け出し組と怪獣とを分断するために矢を放つ。
 放ったのは煙幕を起こす火薬の付いた矢。矢は寸分のくるいなく狙って位置に着弾した。
 続けて二射、三射と弓を引き、辺りを煙でうめ尽くす。

「──こっちだ!」

 これなら両者戦闘の継続は困難であり、退路はこちら側にしかないとなる。「余計なことしやがって!」だの「あの怪しい人は?」だの聞こえるが、今は撤退だ。
 
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