妖精王の旅路

文字の大きさ
6 / 9

妖精王はスライムとともに

しおりを挟む
 スライムに会ってから二週間くらいたった。
 ロルフのご飯は沼にいた魚やカエルをスライムにとってきてもらうことで解決していた。
 生き物の気配がしなかったのは、沼の底にいたかららしい。
 そして今日、ついに毒々しい沼地から出ることが出来た。
 綺麗な空気の普通の森というのは素晴らしい。
 スライムともお別れかと思ったら、沼地を出てもついてくる気のようだった。

「もうここに帰って来れないかもしれないよ?」

 そう言っても僕の右腕から離れる気配はない。

「ずっとついてくる気?」

「ぱあ」

 スライムが初めて喋った。
 思ったより子供っぽい高い声で、しかも気が抜けるような鳴き方だったから、つい吹き出してしまう。
 スライムは怒ったのか、僕の右肩あたりをバシバシ叩いた。

「ご、ごめん。でもずっとついてくるきなら、加護をあげるよ。いる?」

「ぱあ!」

 どうやら欲しいようで、僕の左肩にまで腕を回してくる。
 いやスライムに腕もなにもないが、行動の意味的にそんな気がする。
 そして早くよこせよというように、僕の肩に力を入れてきた。
 握りつぶされそうな勢いなんだけど。

「わかったから力を抜いて! 加護をあげられなくなっちゃうよ!」

 そういうとすぐにやめてくれる。
 聞き分けがよくて助かるよ。

「では君に、妖精の加護を授けよう」

 スライムの頭? に手を添えて、僕の魔力を注ぐ。
 するとスライムの体はどんどん固くなっていき、まるで茶色い石のようになってしまった。
 こんなカチカチになっちゃったら、スライムじゃなくなるよ!?
 大丈夫かな、と不安になりながらも魔力を与え続けると、だんだんふにふにボディに戻ってきた。
 あー、よかった!
 でもどうやらこのスライムは、見た目通りに土魔法の適性が高いらしい。
 名前はどうしようか?
 スライムを見ると相変わらず僕の右腕があったところに引っ付いている。
 もうこれしか思い浮かばない。

「君の加護にはベンジャミンという名をつけよう」

「ぱあ!」

 スライムは固くなったり柔らかくなったりを繰り返しながら、姿を平たく、丸く、細くなっていく。
 面白くて見ていると、最終的にはどこかで見た事がある形になった。
 ……僕の右腕の形になった。
 僕の肩らへんは石のように固いけれど、手の方はスライムのふにふにボディだ。

「ぐぅうう」

 鳴き声も可愛らしい「ぱあ」ではなく、ロルフの唸り声のようになってしまった。
 ええぇ、なに、どうしたの。
 唖然と見つめていると、右腕と化したスライムが手のひらをこちらに向けながら手を振る。

「ぱあ?」

 可愛らしい声だった。
 ああ、よかった。
 鳴き声が増えただけなんだね。
 安堵と同時に冷静さが戻ってきて、僕はスライムに握手する。

「これから君のことベンジャミンって呼んでいい?」

「ぱあ」

 握手をしたまま指をあらぬ方向にぐにゃんぐにゃんと曲げ、快く了承してくれた。

「あと、なんで腕の形になってるの?」

「ぱあ?」

 それはベンジャミンもわからないようで、首を傾げるように、手を傾げている。
 ……もしかしたら僕のせいかも知れない。
 何せ、ベンジャミンは右腕の息子という意味の名前なのだから。
 本人は気にした様子もなく、もとの柔らかくて丸っこい姿に戻っていった。
 ちょっと色が濁った程度で、加護を与える前の姿とほとんど変わっていないようだ。
 こうして僕の新たな家族にベンジャミンが加わるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ハズレスキル『自動販売機』を授かって婚約破棄されましたが、 実は回復薬も魔力食も出せる最強スキルでした

暖夢 由
ファンタジー
十八歳の成人儀式で授かったのは、誰も聞いたことのない《自動販売機スキル》。 役立たずと嘲られ、婚約者レオンには即座に婚約を破棄され、人生が崩れ落ちたように思えた。 だがそのスキルには、食べ物を作り、摂取すれば魔力を増やし、さらに“治癒効果”を付与できるという隠された力があった。 倒れた母を救い、王都の名門・ヴァルセイン伯爵夫人を救ったことで、カミーラは“呪詛”という闇の存在を知る。伯爵邸で出会った炎の力を持つ公爵家次男レグナスとの出会いが、彼女の運命を大きく変えていく。 やがて王都全体に“謎の病”が蔓延。カミーラは治癒スープの炊き出しを行い、人々を次々と回復へ導く。 一方、病の裏で糸を引いていたのは………。 “無価値”と嘲られたスキルが、いま世界を癒し、未来を照らす光となる――。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

処理中です...