怪物から世界を守るヒロインの最期

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怪物から世界を守るヒロインの最期3

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 目が覚めると、見慣れない木々の中を車で走っていた。

「ボス」

「おう、起きたか」

「ここはいったいどこですか? どこに向かってるんですか?」

「心配すんな。ちょっと寄り道するだけだ」

「はあ」

 ボスは少しして車を止めた。

「ちょっと降りようぜ。見せたいもんがあるんだ」

 ボスが何をしたいのかわからず、私は言われるがまま車を降りる。
 ボスは森の中に入っていってしまったので、慌てて追いかけた。

「こんなところ入って大丈夫なんですか?」

「大丈夫だって」

 一時間くらい歩いただろうか。
 汗が首を伝うので、腕で拭いながらボスの背中を追っていた。

「ついたぞ」

 ボスはそう言って、カウボーイハットのつばをつまみ、にやりと笑う。
 私はボスの指差す先を見た。

「わあ!」

 真っ白な花を咲かせる植物が、地面を覆っていた。
 そよ風に乗って甘い香りが私の元まで運ばれてくる。
 花に駆け寄り、そっと花びらを撫でる。
 綺麗だった。

「良かった。やっと笑顔が見れたぜ」

 ボスが私の頭に手を乗せる。

「力が消えて落ち込んでんだろ?」

「……ボスには隠し事が出来ませんね」

「何でもお見通しだからな」

 ボスは私を気遣って、ここに連れてきてくれたんだ。
 嬉しい気持ちと同時に、申し訳ないという気持ちで私は苦笑いした。

「……ここだけの話なんだが、力が取り戻せるかも知れない薬がある」

「え?」

 ボスの言葉に耳を疑った。

「でもその薬はまだ完成はしていない。それに能力を失った直後でないと効果も発揮されないときた」

「私がその薬を服用することは出来ますか?」

「出来る。だが、副作用がかなりキツイだろう。それでも、飲むか?」

「力を、取り戻せるんですよね?」

「ああ。だが失敗すれば死ぬ可能性もある」

「……」

 死ぬ可能性なんて今まで沢山あった。
 薬を飲んで、また皆と一緒に戦えるなら、安いことだ。

「その薬、ください」

「そういうと思った。ほら、これが薬だ」

 ボスはポケットから薬を取り出した。
 小さな瓶の中に、真っ赤な液体が入っている。
 私は躊躇することなく、瓶の蓋を開けて、中身を飲み干した。
 舌に残る鉄のような味に顔を顰める。

「ボス、飲みました」

「クククッ」

 ボスは笑いを堪えるように、口元を押さえた。
 なんで笑っているのか理解できず、首を傾げる。

「アッハハハハ! あー、おっかしい。しかし、育てた甲斐があったってもんだ!」

「……ボス?」

「いやぁ、今までありがとうな!」

「あの、いったいどういうことですか?」

「能力を使う子供たちはいわば幼虫だ。能力が使えなくなる時期は蛹。そしてさっきの薬を飲めば成虫になれる!」

「成虫?」

「ああ。お前たちは成虫を怪物と呼んでいるんだな」

 意味がわからなかった。
 怪物は私たち能力者が倒す敵であり、世界を滅亡に追いやる悪だ。
 そう。怪物は私たちが倒してきた。
 でもボスがの話が本当だとすると、恐ろしい事実が浮かび上がってくる。
 能力者は幼虫。能力が消えた者は蛹。そして薬を飲んで成虫?
 ……じゃあ、今まで怪物として倒してきたのは、私たちの先輩方や仲間?

「……嘘、嘘でしょボスっ!」

「嘘じゃねーよ。お前もこれから怪物として倒されるんだ」

「なんで? なんでこんなことするのよ!?」

 喉が壊れそうなほどに叫ぶ。
 私たちは、先輩を、仲間を殺してたなんて、何でそんなことを!?

「だから、俺はシニガミだって。死を迎えるなら、楽しいほうがいいだろ?」

 理解の出来ない思考に、怒りさえわいてくる。
 しかし、急激に体に力が入らなくなった。
 崩れるように、花の上に倒れる。
 その花たちが、私を包むように成長していった。
 私の植物を操る能力。
 それが暴走しているようだ。
 制御しようとしても、全く出来ない。
 植物の茎が私の体に刺さる。
 痛みに絶叫した。
 茎は私の体中に刺さり、植物と私は融合していく。
 途中から、叫んだ影響で喉が潰れ、ただただ能力に全てをゆだねる以外の選択肢がなくなっていた。
 そんな私を楽しそうに見つめるボスの姿。
 私は最後の力を振り絞って、ボスに手を伸ばす。
 ボスは私の手を蹴飛ばして、車がある方向へと歩いていった。
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