異世界無宿

ゆきねる

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第二十六章 梅雨の季節

第四百九十九話 本当の用途とは?

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「…それだけですか?」

イズミは効果内容を聞き終えると、浮かんで来た疑問をぶつける。

「貨幣を入れると音楽が流れて、金額に応じて効果付与があるのは分かりましたが、挿入した貨幣の行先が見えないのが気になります」

率直な疑問も聞いたグラテミアは、少し考え込むとフラウリアに確認を取る。

「フラウリア、貴方の口が堅いのは知っています。しかし現状の実力で読めないならば、この魔道具の秘密を知る為に必要な実力を身に付けて貰う事になるわ」

「実力ですか?」

「貴方は魔法の研究や探究をメインで伸ばしてるから、戦闘面のスキルが不足してるのよ」

「それは…帰す言葉も無いです」

「秘密をちゃんと知りたいなら私が直接訓練して、後追いで条件をクリアさせますが、どうします?」

グラテミアの鋭い視線がフラウリアに向けられる。

「…やります!」

どうやらフラウリアの探究心に火がついたようだ。

「分かりました、では明日から訓練をはじめましょう。美容クリームの研究が終わってから、ミッチリ訓練しますからね」

それを聞いたフラウリアの顔が青ざめるが、時すでに遅しである。
純粋にクリーム研究の仕事後に、追加で肉体労働系の仕事が入ったようなものなのだ。
過労死だけはしないで頂きたいものである。

「では、この魔道具の本来の用途を説明しますわね」

「ちょっとお待ちを…それは私が聞いても大丈夫なものですか?」

「イズミ様は出自が特殊ですから。この文字を読めるのならば、不自由無く全文を読めると思いますわ」

此処で自分自身の難点が出て来た。
この世界の文字や言葉に関しては、全て魔道具頼りであり本格的な勉強はして来なかったのだ。

「それは想定外でした」

「イズミ様も、時間はありますよ?」

そう言われたイズミは、苦笑いを浮かべるしか出来なかった。
部屋内に遮音魔法を施すと、グラテミアはイズミとフラウリアに魔道具の本来の用途を話し始めた。

「この魔道具の本当の機能は、ダンジョン運営支援端末よ」

文字通りに受け取るならば、この魔道具に金貨を入れると、その金貨はダンジョンの運営費用等に使われると言う事だ。

「ダンジョンが発生する理由は解明されておりませんが、我々はダンジョンを活用した経済を成り立たせています」

「ダンジョン都市ですね。ダンジョンを中心にした都市の建設、人物金の流れ、そして国にとっても重要な資金源になる、正に経済の一部です」

「そうね。ではフラウリア、どうしてダンジョン内にある宝箱や魔物から日常で使える金貨や銀貨、魔道具やレアアイテムが出て来たりするのかしら」

「それはダンジョン内で死亡した冒険者達の所有品を、ダンジョンが時間をかけて吸収して…」

「そう言われているわね。でも、それだけで足りるかしら?ここ100年は冒険者ギルドの努力もあって、ダンジョン内での死亡者は減少傾向にあり、ダンジョン外に出現する魔物討伐でもしっかりとした稼ぎになる現在、ダンジョンは何を吸収しているのかしら」

「…それって、まさか!」

グラテミアの指摘を聞いたフラウリアは何かに気付いたようだ。
イズミは無言のまま、ただ2人の会話を聞いている。

「方法は様々あるでしょうけど、その1つがこの魔道具なのよ」

「だとすると、この魔道具は俺が持っているより冒険者ギルドの建物に設置した方が良いのでは?」

ようやく口を開いたイズミは、最も効率的な運用方法だろう案を口にする。

「それもありますが、ヒュミトール近辺にはダンジョンが無いですわよ」

「おっと、そう来るのか」

「ダンジョンの無い冒険者ギルドであっても、付与される効果は有用ですので重宝される事は間違いないですが、ダンジョン都市にあった方が運営支援端末としては良さそうですね」

ここまで話した所で、1つ疑問が残る。
何故マスタングが最初にスキャンをした際、ここまでの情報が出て来なかったのか。
この疑問をグラテミアさんに尋ねると、返答はアッサリしたものだった。

「金貨を100枚程度投入する迄、魔道具は機能停止状態かつ仕様が公開されない仕組みだったのだと思いますね」

「そんなものですかね?」

「ダンジョン運営支援端末としての機能は、冒険者ギルドや国に仕える上級の魔術師でも見出せないでしょうね。フラウリアですら全ては見れなかったのがその証拠。あの子の実力はあのアーリアちゃんと比較してもほんの少しだけ劣るって位で、他の魔術師如きであれば確実に見えない。だから投入する貨幣によって投入者に一時的な効果付与をする魔道具、と言う仮の姿がメインで見えるようになっている」

「…扱いには一苦労しそうだ」

ひとまずダンジョン運営支援端末の情報は隠蔽しておく事で意見が纏まったので、次は効果付与に関する確認を始める。
ものは試しにとベリアを呼び出す事にした。
今日のベリアは冒険者ギルドに缶詰め状態だったのか、げんなりした顔をしている。

「いやぁ…アタイは着せ替え人形じゃないんだけどなぁ」

「大変そうだな」

「仕方ない事だと諦めてるけど、それでも何度も着替えるのは面倒でさ」

そんなベリアに簡単な事情を説明し、魔道具に金貨を2枚入れてもらうように頼んだ。
この金貨はイズミが出した。

「入れるだけで良いのか?」

「そうだ」

カコンカコン…と金貨が入る音がすると、ベリアの身体がほんの一瞬だけ淡く光ったように見える。

「何か変わったか?」

「いや?何も分かんない」

何の実感も無いようなので、フラウリアに鑑定を頼む。

「んー…レアアイテムのドロップ率5%上昇だそうです」

「それは実感出来なさそうだ」

ベリアが身体を伸ばすとポキポキと骨が鳴るので、大分窮屈な思いをしたのかもしれない。
そんな事を考えていると、フラウリアが不思議そうな顔をしてベリアに質問をする。

「ベリアさん、貴方の魔法適性って何個ですか?」
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