573 / 625
第二十七章 サンダーブレード作戦
閑話 解放された女の話
しおりを挟む
イズミと別れてからのオリヴィアは。
金貸しの拠点に姿を現し、借金の返済作業をしていた。
「オリヴィア、こんな大金どうやって調達したんだ?」
厳つい顔の男がオリヴィアが持って来た布袋から金貨を取り出し、怪訝そうな表情で尋ねた。
「私に惚れ込んだ良い男が居てね、俺だけの女になってくれって迫られてさ!借金があるって言ったら全額ポンとくれたんだよ」
「俺が言うのも変な話だが、怪しい男じゃないよな。あの牙も気に入ったってんなら、かなり悪趣味寄りな男じゃないのか?」
「面白いし、何より良い男だよ。それとあの悪趣味なピアスだけどさ…外せたんだよ」
「何っ!?アレは確か呪いが付いてて、有名な術者でも解除出来ないって言われてただろ」
金貨を数えていた男が作業を止めると、オリヴィアの方へ顔を向ける。
「もう私はその男の女だからお触りは無しだけど、確認までなら良いよ?ホラ」
オリヴィアは特に気にした様子も無く服から胸を出し、あの悪趣味なピアスから解放された事を事実として男に見せつけた。
そして、新たなピアスを見た男の表情は瞬く間に固く青ざめ、オリヴィアに胸を仕舞わせてからボソリと言った。
「オリヴィア。そのピアスは貴族や商人に見せない方が良い」
「見せないよ!もう男ならあの人にしか見せるつもりも無いさ」
「違う、そのピアスに使われてる素材がヤバいんだよ…俺の目が狂ってなければ、恐らく白金製だ」
「白金!?」
「俺は一度だけ白金金貨を拝んだ事があるんだ。忘れもしない、その白金金貨の輝きにソックリ…いやそれ以上だ。恐らく純度が違うんだ」
「そ、そんなピアスを私」
「オリヴィア…お前まさか」
「全部コレに付け替えてもらっちゃった」
オリヴィアの告白を聞いた男は、大きなため息と共に頭を抱えた。
「とんでもない男に惚れ込まれたみたいだな、オリヴィア」
「でも昨日は私を抱いてくれなかったんだけど」
「そんな超高級品をプレゼントするような男だ、本当に自分の女になってからじゃないと抱きたく無かったんじゃないか?」
「まさかぁ?」
「そんな男が居てもおかしくは無いだろうよ…確かに借金分は利子付きでシッカリ受け取った、これで晴れて自由の身だな」
「…へへっ。色々とあったけど、世話になったね」
オリヴィアは残金の入った布袋を手に建物を出ようとした時、男から軽く引き止められた。
「…オリヴィア、その左手のは何だ?」
「あぁコレかい?御守りだってさ。いざと言う時に頼りになる、らしいけど」
「いざって時ねぇ…オリヴィアにそんなの来るのか?ウチの若いのをまとめて相手しても余裕なのに」
「失礼だね!私も女だよ」
「…だな。達者でな、オリヴィア」
オリヴィアは男の送り出しを背に清々しい気持ちで建物を出ると、昨日イズミに出会った飯屋へ顔を出す。
「あらオリーちゃん!今日は朝からかい?」
「いや、昨日で全部解決したんだ」
満面の笑みで答えたオリヴィアに対して、その意味を理解した店主の奥さんがオリヴィアにハグをすると、背中を叩きながらテーブル席に座らせる。
「それはめでたいねぇ!ちょっとアンタ、オリーちゃんにランチセット1つ!店の奢りだよ」
「ちょっと、それは流石に」
「良いんだよ、オリーちゃんには店で暴れた客を何度も抑えてくれたり、アタシ達も助かってたんだから」
そんな会話を聞いていた客の何人かがオリヴィアに近付くと、嬉しそうに声をかけた。
「なんだなんだ?オリーちゃん、やっと借金返済出来たのか?」
「色々あったけど、何とかね」
「そしたら前々から言ってた冒険者に登録申請するのか!」
男の質問を聞いたオリヴィアは少し考えてから答えた。
「…いや。私にベタ惚れの良い男と一緒に、旅でもしようと思ってるよ」
「そんな…オリーちゃんヒュミトールから出てっちまうのか!?」
大声を上げた男の言葉を聞いた周囲の客達も、一斉にオリヴィアの方を向いた。
言い方はガサツめな男達だが、この店の常連達はオリヴィアの事を心配していたようだ。
「梅雨明け迄は居るけど、もう売りはしないって決めたから。その辺は諦めてくれよ?」
「そんなぁ!…オリーちゃん、なんか良い匂いがするけど、香水とか使ったのか?」
「香水なんて高級品はお貴族様の使う物で、私が使える訳ないでしょ。朝から温泉に入ってたけど、その時に小さい柚子を何個か浮かべてたくらいで」
「柚子って近くの店にも売ってるやつだよな…そんな効果があるのかよ?」
「それ以外は思い当たらないね」
オリヴィアから良い匂いを嗅ぎ取った男は、良い情報を聞いたとばかりに笑顔を見せると足早に行動を開始した。
店の人間に一声かけてから柚子を買いに行き、小さめの布袋1杯に詰め込んで来たのだ。
「オリーちゃん、これは良い商売になるかもしれないぞ」
「なんでさ?」
「小さい柚子は安くてもあまり売れないからな。温泉に浮かべて良い香りを身にまとえて、使い終わったら魔獣の餌に出来たりしたら…良い金の流れを生み出せるかも」
「そんな美味しい話にはならないと思うけどね。ま、試してみたらどうだい?」
こんなやりとりも梅雨明け迄、いや今日で終わるかもしれないと思うと少しだけ寂しいものがあったが、今のオリヴィアには何とも言えない未来への期待感が勝っていた。
この数日後に私にベタ惚れの男…イズミと名乗っていた良い男…の賃貸にて生活を始めた結果とんでもない経験をする事になるとは、今のオリヴィア自身でも全く想像していないのであった。
金貸しの拠点に姿を現し、借金の返済作業をしていた。
「オリヴィア、こんな大金どうやって調達したんだ?」
厳つい顔の男がオリヴィアが持って来た布袋から金貨を取り出し、怪訝そうな表情で尋ねた。
「私に惚れ込んだ良い男が居てね、俺だけの女になってくれって迫られてさ!借金があるって言ったら全額ポンとくれたんだよ」
「俺が言うのも変な話だが、怪しい男じゃないよな。あの牙も気に入ったってんなら、かなり悪趣味寄りな男じゃないのか?」
「面白いし、何より良い男だよ。それとあの悪趣味なピアスだけどさ…外せたんだよ」
「何っ!?アレは確か呪いが付いてて、有名な術者でも解除出来ないって言われてただろ」
金貨を数えていた男が作業を止めると、オリヴィアの方へ顔を向ける。
「もう私はその男の女だからお触りは無しだけど、確認までなら良いよ?ホラ」
オリヴィアは特に気にした様子も無く服から胸を出し、あの悪趣味なピアスから解放された事を事実として男に見せつけた。
そして、新たなピアスを見た男の表情は瞬く間に固く青ざめ、オリヴィアに胸を仕舞わせてからボソリと言った。
「オリヴィア。そのピアスは貴族や商人に見せない方が良い」
「見せないよ!もう男ならあの人にしか見せるつもりも無いさ」
「違う、そのピアスに使われてる素材がヤバいんだよ…俺の目が狂ってなければ、恐らく白金製だ」
「白金!?」
「俺は一度だけ白金金貨を拝んだ事があるんだ。忘れもしない、その白金金貨の輝きにソックリ…いやそれ以上だ。恐らく純度が違うんだ」
「そ、そんなピアスを私」
「オリヴィア…お前まさか」
「全部コレに付け替えてもらっちゃった」
オリヴィアの告白を聞いた男は、大きなため息と共に頭を抱えた。
「とんでもない男に惚れ込まれたみたいだな、オリヴィア」
「でも昨日は私を抱いてくれなかったんだけど」
「そんな超高級品をプレゼントするような男だ、本当に自分の女になってからじゃないと抱きたく無かったんじゃないか?」
「まさかぁ?」
「そんな男が居てもおかしくは無いだろうよ…確かに借金分は利子付きでシッカリ受け取った、これで晴れて自由の身だな」
「…へへっ。色々とあったけど、世話になったね」
オリヴィアは残金の入った布袋を手に建物を出ようとした時、男から軽く引き止められた。
「…オリヴィア、その左手のは何だ?」
「あぁコレかい?御守りだってさ。いざと言う時に頼りになる、らしいけど」
「いざって時ねぇ…オリヴィアにそんなの来るのか?ウチの若いのをまとめて相手しても余裕なのに」
「失礼だね!私も女だよ」
「…だな。達者でな、オリヴィア」
オリヴィアは男の送り出しを背に清々しい気持ちで建物を出ると、昨日イズミに出会った飯屋へ顔を出す。
「あらオリーちゃん!今日は朝からかい?」
「いや、昨日で全部解決したんだ」
満面の笑みで答えたオリヴィアに対して、その意味を理解した店主の奥さんがオリヴィアにハグをすると、背中を叩きながらテーブル席に座らせる。
「それはめでたいねぇ!ちょっとアンタ、オリーちゃんにランチセット1つ!店の奢りだよ」
「ちょっと、それは流石に」
「良いんだよ、オリーちゃんには店で暴れた客を何度も抑えてくれたり、アタシ達も助かってたんだから」
そんな会話を聞いていた客の何人かがオリヴィアに近付くと、嬉しそうに声をかけた。
「なんだなんだ?オリーちゃん、やっと借金返済出来たのか?」
「色々あったけど、何とかね」
「そしたら前々から言ってた冒険者に登録申請するのか!」
男の質問を聞いたオリヴィアは少し考えてから答えた。
「…いや。私にベタ惚れの良い男と一緒に、旅でもしようと思ってるよ」
「そんな…オリーちゃんヒュミトールから出てっちまうのか!?」
大声を上げた男の言葉を聞いた周囲の客達も、一斉にオリヴィアの方を向いた。
言い方はガサツめな男達だが、この店の常連達はオリヴィアの事を心配していたようだ。
「梅雨明け迄は居るけど、もう売りはしないって決めたから。その辺は諦めてくれよ?」
「そんなぁ!…オリーちゃん、なんか良い匂いがするけど、香水とか使ったのか?」
「香水なんて高級品はお貴族様の使う物で、私が使える訳ないでしょ。朝から温泉に入ってたけど、その時に小さい柚子を何個か浮かべてたくらいで」
「柚子って近くの店にも売ってるやつだよな…そんな効果があるのかよ?」
「それ以外は思い当たらないね」
オリヴィアから良い匂いを嗅ぎ取った男は、良い情報を聞いたとばかりに笑顔を見せると足早に行動を開始した。
店の人間に一声かけてから柚子を買いに行き、小さめの布袋1杯に詰め込んで来たのだ。
「オリーちゃん、これは良い商売になるかもしれないぞ」
「なんでさ?」
「小さい柚子は安くてもあまり売れないからな。温泉に浮かべて良い香りを身にまとえて、使い終わったら魔獣の餌に出来たりしたら…良い金の流れを生み出せるかも」
「そんな美味しい話にはならないと思うけどね。ま、試してみたらどうだい?」
こんなやりとりも梅雨明け迄、いや今日で終わるかもしれないと思うと少しだけ寂しいものがあったが、今のオリヴィアには何とも言えない未来への期待感が勝っていた。
この数日後に私にベタ惚れの男…イズミと名乗っていた良い男…の賃貸にて生活を始めた結果とんでもない経験をする事になるとは、今のオリヴィア自身でも全く想像していないのであった。
31
あなたにおすすめの小説
彼に勇者は似合わない!
プリン伯爵
ファンタジー
連日の残業で終電帰りのサラリーマン、神無月無名21歳。
ある夜、突然足元の光に包まれ異世界へと召喚されてしまう。
そこは豪華絢爛な王宮。
第一王女ラクティスは、彼を含む男女5人を「勇者」として召喚したと告げる。
元の世界では時間がほぼ止まっているという説明を受け、半ば強制的に魔国との戦いに協力することになった無名たち。
発現した無名の紋章は歴代でも最高クラスを示し万能の勇者と称され、周囲を驚愕させる。
元の世界への帰還を条件に口頭で協力を約束する勇者たちだが、無名だけは王家に対し警戒心を抱き、王に元の世界への帰還とこの世界で得た力を持ち帰ることを書面で約束させる。
協調性がないと周囲から思われながらも、己の最適解を優先する無名は、果たして他の勇者たちと協力し、魔国を打ち倒して元の世界へ帰ることができるのか。
それぞれの思惑が交錯する中、勇者たちの戦いが幕を開ける。
これは社会不適合者が歩む成長の物語。
不死身のボッカ
暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。
小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。
逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。
しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。
そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。
その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。
(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
龍と旅する。
水無月
ファンタジー
治安が良くない島々や国を龍と旅する物語。
主人公たちが探すのは「龍の卵」。だがそれを狙うのは彼らだけではなく、「龍狩り」や貴族とも争うことになる。
出会いと別れを繰り返して、ロッドとレリスは大海原を渡る。
・海龍 ロッド……最強。頼りになる。こいつ一人でいいんじゃないかと思われるが、とある理由からレリスと行動している。威厳のある話し方をするが、中身は幼い男の子。
・人間 レリス……男性。人間基準で言えば強いが、あくまで人間の枠組みの中でのこと。お人好し。
※注意
〇喧嘩しまくりの異種族同士ですが、彼らはお互いを家族だと認識しています。家族愛です。
〇レリスが生まれ持った性質のせいで「龍の卵」なみに狙われる時があります。徐々に巻き込まれヒロインみたいになります。
〇上記のふたつが無理な方はお気を付けください。表紙と挿絵は手描きです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる