異世界無宿

ゆきねる

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第一章 異世界転移

第一話 異世界転移は音も無く

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運転席から見える景色は、地平線の彼方まで見通せる草原だった。
周囲を確認しても草原が広がっていた。

「…俺は疲れているのか?」

俺…和泉俊介はエンジンを止め、車から降りて状況を確認する。
背伸びをして呼吸を整える。
澄んだ空気が美味しい。

グローブを外して草や土に触れてみるも、しっかりと感触がある。
空を見上げるも色は青く、太陽は1つだけ。
しかし、この場所には見慣れている物が無かった。

道路だ。

コンクリートで舗装され、信号やら標識やらがある道路が見当たらない。
どう考えても、先程までいた車屋付近の景色ではない。

そう結論を付けるには、それほど時間はかからなかった。

「…何がどうなっている?」

首を傾げつつ手に付いた土を軽く払い、愛車の方に向かう。

今朝納車されたばかりの愛車は太陽の光を反射し、日光浴を楽しんでいるかのように見えた。

ポケットに仕舞っていたスマートフォンを確認するも圏外と表示されている。
日時は表示されているが、はたして今いる場所の時間なのだろうか?

状況を飲み込み切れない俺は、どうにか自分が理解出来る材料は無いかと近くを探索する事にした。

腕時計のボタンを押してストップウォッチを起動し、スマホで気になる物の写真を撮る。
圏外なので調べようが無いが、何かをしていないと落ち着かないのだ。

草や花の写真を撮り、周辺の写真をジオラマで撮ったりと、今いる場所の資料になりそうなものを収集する。

ふと腕時計を確認すると20分程経過していた。

身体を伸ばす為に立ち上がり、空を飛ぶ鳥たちに目をやる。
その流れで地平線へと視線を流していると、遠くの方で何が動いている。

しばらくその『何か』を見つめていると、どうやら俺のいる方に向かっているようだ。

ここが何処かすら分からない状況で、何者かがこちらに近づいて来る。

歓迎か、それとも…

思案した結果、周囲の探索を止めて車に戻る。
用心するに超したことはない。

車に乗り込み、スマホをコンソールボックスに仕舞う。
腕時計のストップウォッチを停止して袖の下に隠し、車のキー取り出して挿しこむ。
エンジンはまだかけないが、電源だけはONにしておく。
カーナビのモニターが現在位置を表示しているが、道路の表示は無かった。

そんなカーナビを横目に、グローブをはめつつ心を落ち着ける為に深呼吸をする。

大体の場合において、都合良く物事は進まない…

「アクション映画よろしく、武器の1つでもあればな…」

そんな言葉が口から溢れる。
何者かはまだ近付いて来ている。
不安で足が震えそうになるのを、なんとか気合いで耐える。

何者かは車の近くで停止した。
俺は意を決して、車から降りる。

カーナビのモニターに変化があったが、それには気付かなかった。
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