異世界無宿

ゆきねる

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第二章 旅の始まり

第十六話 旅の道連れ

翌朝、腕時計では午前9時。
俺は前評判の悪いベベロの町にいる。

理由としては、マスタングに確認したら冒険者ギルドは存在するが、支店までは非常に遠かったからだ。

そこまでの移動をするにしても水と食料の確保が最優先事項なので、仕方なくベベロの町で調達する事にしたのだ。

町外れに馬車留めの場所があり、リスクはあるがマスタングを駐車する。
どうやら馬車にもサイズ以外にも種類があるようだ。
色々な形の馬車があった。

マスタングには非常時は自動で動くように指示をして、アーリアから貰ったローブを持って降りた。

素早くローブを身に纏い、町の中心部へと向かった。


町はお世辞にも賑わっているとは言えない感じであった。
雰囲気もあまり良くは無い。

こんな町はさっさと抜け出すのが1番だ…

俺は急ぎ足で水と食料を購入した。
銀貨6枚と銅貨8枚を使ったが、冒険者ギルドのある大きな町までは足りるはずだ。

マスタングの後部座席に荷物を乗せて出発の準備を整える。
腕時計を確認すると、正午を過ぎた頃合いだった。

「冒険者さん、お1人で旅支度ですかい?」

声のする方に顔を向けると、帽子をかぶった細見の老人がいた。

「そうだ」

俺は声を低めにして、ぶっきらぼうに答えた。
この手のパターンは映画知識だと、あまり良い話では無い…そんな記憶がある。

「ここ最近は物騒でしてね…昨日もここを出発した冒険者達が襲撃を受けているのです」

冒険者達、ね…
耳が痛い。

「それは恐ろしいな」

俺は白を切った。

「そうでしょう…実は少し前に、何人か便利な働き手が入りましてね。見て行ってはくれませんかね?」

この老人は俺に人身売買でも持ち掛けてきているようだ。
頭ごなしに断ると角が立つ。
見るだけみて、金が無いからとやんわりと断われ…るのだろうか?

「…そんなに懐は温かくないのだか」

事前に逃げ道を作っておく。
相手の反応を見るには良いと判断したのだ。

「まあまあ、その辺は頑張らせて頂きますので…」

悪党ばかりの町。
アーリアの言葉が脳裏を過ぎった。


裏道に入って少し歩くと、露天商よろしく老人の言う便利な働き手…
捕縛魔法とやらで捕まっている人間やエルフ族、子供くらいの背丈をした老人達がいた。

「若い働き手は早々に買われましてね、今は一段落といった所でして」

話を聞き流しつつ、1人の女エルフに目が留まった。

俺はこの世界に転移させられてから間もないので分からないが、見た目からして若いと思ったのだ。

「あぁ…そのダークエルフはこちらでは少数派ですが、何分成人ですので…」

老人が言うには、エルフ族の売れ筋は大きく分けて2種類なのだそう。

1つは男のエルフ。
これは成人、未成人問わず戦いにも力仕事にも使えるからだ。
もう1つは未成人の女エルフ。
こちらは帝国の貴族や成金が買って行くらしい。

「ほぅ…参考までに、どうやって判別した聞いても良いか?」

質問すると老人はダークエルフの元へ行って両腕を挙げさせた。

「成人のエルフは毛が生え揃っておりますので」

この世界のエルフ族は、未成人の内は所謂ムダ毛が生えておらず、毛が疎らならば成長途中なので未成人、生え揃っていれば成人と判別しているとの事だ。

俺の想像とは違う判別基準に思わず苦笑いをしてしまった。

「今は目隠しを外せませんが、別嬪なエルフですよ。未成人なら金貨5枚は下りません」

「冒険者さんは初めて購入ですのでサービスしますよ?このエルフであれば、無記名の隷属魔法処置込みで銀貨80枚、隷属魔法処置無しでなら金貨1枚」

俺はダークエルフをゆっくりと観察する。
ダークエルフ足らしめる褐色の肌にセミロング?の銀髪。
顔も整っているように見えるし、スタイルも悪くない。かなり窶れているが、健康的で整っている部類と言って良いだろう。

「このエルフにいくつか質問をしても良いか?」

「構いませんが、簡単なものでお願いしますね」

老人がエルフに対して呪文を唱える。
普段は喋れないように魔法で制限でもかけていたのだろうか?

どうぞ。
そう老人に言われたので、ダークエルフに質問を投げる。

「名前は?」

ダークエルフは震える声で答える。

「カレン…です」

「ではカレン、魔法は使えるか?」

「回復の魔法と、攻撃魔法が少しです」

回復の魔法か。
それは欲しいかもしれない。
攻撃魔法も使えるならば、それに超したことはない。

「料理は出来るか?」

簡単なものあれば。と、カレンは首を縦に振った。
俺が料理をほとんど出来ないものと考えると、料理の出来る相棒なら是非とも欲しい。

「最後の質問だ…旅の最中に戦闘も発生するだろう。誰かを殺す事にもなるし、こちらも最悪は死ぬ可能性もある」

「そんな地獄を一緒に歩く覚悟はあるか?」

少しの沈黙の後、カレンは首を縦に振った。


俺はポケットから金貨を取り出し老人に渡した。
隷属魔法処置の無い方が、色々と都合が良い気がしたからだ。

「おぉ!ありがとうございます。こちらで掛けました魔法処置は全て解除致します」

そう言った老人はダークエルフ…カレンに掛かった魔法を解除した。

立ち上がったカレンは遠慮がちな動きで俺の隣に来た。

俺は老人に挨拶をして裏路地を後にした。
急ぎ足でマスタングの元へ戻り、カレンを助手席に座らせた。
運転席に乗ろうと回り込んだ時、老人に話しかけられた時の嫌な予感が現実になった。

「冒険者さんよ…この町に来て俺達に挨拶も無しに出て行くのかい?」

話をするのも面倒くさそうな男が4人、道を塞ぐようにして待ち構えている。

アクション映画であれば話を聞いた上で戦ったりもするが、生憎だが俺は話をする気すら起きていない。

男達を一度睨みつけ、無視する事にして出掛ける準備を進める。

「おい!聞いてんのか!?」

リーダー格の男が近付いて来た。
俺はショットガンを取り出して、躊躇い無く引き金を引いた。

その瞬間、リーダー格の男の首から上が吹き飛んだ。
何が起きたか理解が追いついていない残党を尻目に、俺はマスタングに乗り込んだ。

アクセルを踏み込み、リーダー格だった男の死体を踏みつけて町を出発した。

町から少し離れた所で、カレンが声を上げた。

「私を買ってくれて…ありがとうございます」

俺はカレンの方を見ずに答える。

「気にしなくて良い。」

さっきの奴らが仲間を集めて追いかけて来たら…
その可能性を考慮して、マスタングを加速させる。

「詳しい話は、何処かに落ち着いてからにしよう」

俺はそうカレンに言い聞かせ、今日も魔獣の森に身を隠そうと移動を続けた。
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