異世界無宿

ゆきねる

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第六章 ダンジョン発見

第六十六話 見張り番

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冒険者パーティー『暁と盃』が魔道具を持ってダンジョンへと入って行くのを、イズミとカレンが広場から見つめていた。

調査には2日程度必要との事で、イズミ達は扉を見張る役を引き受けた。

ダンジョンから吹き込んで来る風が心地良い。

「ここは一応、地下なんだよな?」

イズミはダンジョンへは足を入れずに、森林地帯を覗き込むように見ていた。

「ダンジョンと言うのは不思議ですよね。扉を経由してダンジョンと言う別の空間に繋がっているって説もあるそうですよ」

カレンが教えてくれた。
イズミが腕を組みつつしゃがみこんだ。

「未開の地に少数の調査隊ってのは、ホラー物の定番だよな」

「ホラー物って何ですか?」

イズミのボヤきにカレンが反応した。
聞き慣れない単語に興味があるらしい。

「…いや、こっちの話だ」

ホラーの説明をしようかと思ったが、ここで話すのは良い気はしなかった。
言った通りの展開になったら、洒落にならないからな。

「少し早いが昼食にでもするか?」

イズミはホラーの件をはぐらかすように、立ち上がって硬いパンと水筒を持って来た。



「ダンジョンの内側と外側で時間にズレってのはあるのか?」

休憩を入れたり、地上での待機組と入れ替わりで扉を見張ったりしていて気になった事がある。

地上に休憩で上がった時には夕方だったはずだが、ダンジョン内はまだ青空が見えるのだ。

「どうなのでしょうか?それも調査で持って行った魔道具で分かるのかと」

カレンが地上での休憩の前に答えた。
ダンジョン前の広場では時間感覚が狂うし、ずっと魔法で明かりを出しておくのも地味に魔力を消耗する。

ちゃんとした地上の空気を吸ってリフレッシュして貰うのが目的だ。

イズミも身体を伸ばして緊張と凝りを解しつつ、交代まで門の監視を続けていた。


カレンが戻って来たのでイズミは交代で地上に出ると、もうすっかり夜だった。
交代した時もダンジョン内は昼間な天気だったので、完全に時間感覚は狂ってしまっている。

マスタングに戻って時間を確認すると、21時を回っていた。
半日経っても昼間の天気なのかと、イズミはダンジョンの特異性に驚きを隠せなくなっていた。

運転席に座ると、大きく深呼吸をして目を閉じる。

「こっちの状況はどうだ?」

マスタングの回答は異常無しだった。

「ダンジョンってのは不思議だな。色々と調子が狂うよ」

車内で少しだけ仮眠を取る。
門の監視に戻ろうとした時、唐突にグローブボックスが開いた。

「マスター。マスターにはコレが必要かと」

手に取ったそれは、小振りな腕時計だった。

オリーブ色の軽量なケースなので金属製ではないだろう。
日付も曜日の表記も無いシンプルなアナログ式で、黒文字盤に白文字で視認性も良い。
風防はドーム状に膨らんでいて、爪で叩いてみると軽い音がする。
ナイロンであろう引き通しのベルトを外してみると、整備調整用の裏蓋もバネ棒も無いケース一体型だった。

壊れたら捨てて新品に買い替えて下さい。
そう言わんばかりの潔さを感じる、まさしく『使い捨て腕時計』と呼べる代物だった。

「必要最低限の精度と耐久性ですので、過度な期待はしないで下さい。秘密の機能等は搭載しておりませんので悪しからず」

ケースは金属製の方が好み、とは口に出さずにマスタングへ礼を言ったイズミは、その腕時計を左手に巻いた。

「ありがとう。じゃ、門の監視に戻るよ…こっちで何かあったら、遠慮なく暴れて良いからな」

そう伝えると、イズミはダンジョンへの階段を下って行った。
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