異世界無宿

ゆきねる

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第八章 王都での日々

閑話 冒険者ギルドの混乱

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「ブロズムナード辺境伯の娘、エレナ様の鑑定結果なのですが…」

王都の冒険者ギルド本部、特に管理者達では、過去に類を見ない程の混乱である。

「エレナ嬢は8歳の時に行った鑑定で、2種類の適性と出ました」

白髪の老人が椅子に座っている男に告げる。

「それが?今日鑑定をしたら5種類と出たのか」

「ギルド長。貴族様の鑑定には上から2番目の水晶を使っていますので、性能に差はほとんどありません」

ギルド長と呼ばれた男は、天井を見ながら話を聞いていた。

「本当に、過去に前例は無いのか?古文書にも前任者達の書物にもか?」

室内が静まり返っている中、1人が書物を持ち上げて声を上げた。

「近しい話であれば、記載があります」

室内にいる全員が書物を持った男を見る。

「208年前に1件…2種類適性を持った魔術師が海で行方不明になった5日後に浜辺で倒れているのを発見。命に別状は無いと判明後に水晶に触れさせた所、適性が3種類になっていた」

「それでも1種類か」

ギルド長は手渡された書物を確認しながら、もう1件の問題を聞いた。

「で…適性無しの男と言うのは、どんな男だったのかね?」

直接ブロズムナード邸に赴いた者が、イズミの特徴を説明した。

「対象の男はイズミと呼ばれていました。黒髪の黒目で背は170前後の標準から痩せ型の体型です…人間で肌の色は我々と同じですが、見慣れない服装でしたので異国の者と思われます」

ギルド長は部下にイズミの情報が無いか調べさせると、直ぐに見つかった。

「ありました!ミグルンにて申請記録がありますが、条件未達で登録拒否となっています。身元情報に不明点が多く、魔術師協会でも調べきれなかったのが主な理由です」

渡された資料の外見情報と照らし合わせると、しっかりと一致している。

「この男とブロズムナード辺境伯の所に居た男は、同一人物と思って良いだろう。それにしても」

ギルド長は頭をかきながらぼやく。

「全適性持ちなら過去に3人いたと記録にあるが、全適性無しは初めてだ」

室内は静かなままだ。

「国王への報告に記載致しますか?」

「無論、記載しなければ儂の首が飛ぶ…問題は、我々ギルドでは調べる方法が無い」

貴族には貴族特権があり、冒険者ギルドに対して黙秘権がある。
イズミに関しては、所在を掴む事が困難だ。

「イズミと言う男には、カレンと言う相方が居ます。彼女はギルド仮登録者ですので、彼女から追うのが良いかと」

「カレンと言う者の故郷は、先日ダンジョンが発見されたポートルフと言う小さな村です」

ギルド長が話を聞き終えると、部下達に指示を出した。

「分かった…まずはカレンと言う者から話を聞こう。国王への報告はそっちの線で行い、ブロズムナード辺境伯に関しては国王側から調べて頂けないか相談をしよう」

賊退治にゴブリンの巣の討伐、王都での鑑定結果。
それに何故、貴族と行動を共にしていたのか。
疑問は尽きない。

それを解き明かさなければ、今後も冒険者ギルドが振り回される可能性が高い。

冒険者ギルドとして、何かと忙しい日々が始まりを告げるのであった。
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