異世界無宿

ゆきねる

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第九章 海を目指して

第百十五話 噂場は酒場が一番

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イズミは海に向かう途中、賑わっている町にて5日程過ごす事にした。

理由は2つ。
1つは食料等の確保、もう1つは料理である。

幸いにもマスタングを宿屋の隣に駐車しても良いと言う、ありがたい宿屋と出会えたのも大きい。

先払いで金貨を1枚渡したら、直ぐに部屋を準備してくれた。

食料の確保は最終日に回すとして、まずは飯屋を探した。
町は良い雰囲気の賑やかさで、子供のやんちゃな声すら心地よい。

「あんちゃんどうだい?オーク肉の串焼きだ!1本で銅貨5枚だ!」

イズミは自分を手招きする男が自ら料理している串焼きを見る。
ただオークを焼いただけでは無いようだ。
上にソースのような物をかけて焼いたのだろうか?

「1本貰おう」

イズミは銅貨を手渡すと、受け取った串焼きを一口頬張った。

「おぉ!肉も硬すぎず軟すぎずの良い焼き加減だ…このソースも良い。酒が欲しくなる濃い味付けだな」

「分かってくれるか!嬉しいねぇ…このソースは俺が何年もかけて作った自信作でね」

ペロリと食べきったイズミが串を返却箱に入れ込むと、町の商店街の奥へと歩いて行った。


商店街では食料品関係の店が多く、武器の類いの店は1本裏の通りにあった。
この世界の酒に興味を持ったイズミは、まず酒場がどんな感じなのかを知ると言う目的を持って人気のある酒場に入った。

「いらっしゃい、1人かい?」

厳つい顔のオッサンが入口にて聞いて来たので、そうだと答える。

「じゃ、カウンター席に座ってくれ…そろそろ冒険者連中が来てテーブル席が埋まる」

オッサンの指示通りにカウンターに座ると、早速メニューを確認して注文をする。

メニューには酒としか書かれていないのが気になる。
この店では1種類だけなのだろうか?
そう言うのを経験するのも、旅の醍醐味だろう。

「ベーコンと酒、あと野菜蒸しってのを頼む」

「分かりました!」

注文を取りに来た店員に頼むと、直ぐに酒が届いた。

「はい!ビールです」

中ジョッキサイズの木製ジョッキでやって来たビールを、まずはグイッと飲んだ。

微温い。
炭酸やキレをあまり感じない、ヨーロッパのビールに近かった。
腹には溜まるだろうけれど、日本のビールにあるスッキリとした喉越しは冷やしても期待出来ないだろう。

「はい、ベーコンと野菜蒸しです」

次に届いたベーコンと野菜蒸しを味わうとしよう。
木製の皿に乗せられたベーコンは、思ったよりボリュームがある。
野菜蒸しは数種類の野菜を蒸したようで彩りとして良いバランスだった。

こちらの世界では、どうやって蒸しているのかが気になったが、考えるのは後回しにした。
まずは食べる事を優先したい。

イズミがまったりと食事をしていると、どんどん客が入って来てテーブル席はオッサンが言った通り満席になった。

店は賑わっているのが一番だと思いながら酒を飲んでいると、客の話から色々な情報が耳に入って来た。


「おい聞いたか?王都の冒険者ギルドにレッドドラゴンの素材が入るらしいぞ」

「俺もギルドで手続きしてた時、裏で騒いでたのを聞いたよ」

「羨ましいなぁ!俺達も頑張らないとな」

あのドラゴンの素材はしっかりと売れるようだ。

「それと…ギルドのお偉方が人探しをしてるって聞いたか?」

「人探し?」

「変な男らしくてな、中々見つからないんだとよ」

「何だっけ?海を目指してる男だったか」

「海?なんで海なんだ?」

「さあな…詳しい内容が届くのはもう少し先だろ」

イズミはそんな話を聞きつつ料理を食べ終えた。
王都ではしゃぎ過ぎたからかだろうか?

店員に銀貨で支払いを済ませて店を出ると、今日の所は散策を終わりにして宿屋へ戻ると決めた。

噂話は酒場で耳を傾けるのが一番だなと、少しだけ酔いが入った頭で思いながら、イズミは宿屋に戻って身体を休めた。
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