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第十四章 運び屋稼業も楽じゃない
第百九十一話 先行きが不安です
「助かったのは良いものの、今後どうするかね?」
久しぶりに速度を出しつつ町を出たイズミ達は、速度を落とさずに走り続けていた。
「貴族と何を話してたんだ?」
「俺とマスタングの事を色々と聞こうとして来たのさ。ゴリ押しで逃げおおせたけれども、派手にやったから今後はどう立ち回ろうかと」
ベリアの質問に答えはするものの、まだアドレナリンが出ているのか口調が悪くなりそうなのを抑えつつ答える。
「ガブリオレ公爵領からは急いで脱出した方が良いか?」
「かもしれないな。今からでも誤解を解きに戻るのは…難しいか」
ベリアと2人で話し込み、本件はベリアはノータッチと言う事にして、急いでガブリオレ公爵領を通過する事にした。
「仕事中だから帰ると言ったし、今度暇な時に話をしようとも言ってるし、大丈夫…だと思っておくとしよう」
イズミは絶望的な希望的観測をしつつ、マスタングのアクセルを緩める事無く走る。
少しでも遠くへ、少しでも早くハルハンディア共和国へ向かう為に。
夕暮れ時に夜営の準備を始め、アーリアに連絡を取った。
「またやらかしたでしょ?」
転移魔法でやって来たアーリアのゲンコツを食らったイズミが、状況を出来る限り説明した。
「アンジェラ様が相手の許可も無くエリア拘束の魔法を使ったのも問題ではあるのだけど、その対応が脳筋過ぎるのよ。防御魔法を物理で突破するなんて、普通は無理よ?」
「そこは…マスタングだし」
「アーリア様、あの程度なら容易に対処可能です」
イズミのマスタングへ対する信頼感と、マスタングの規格外な対応にアーリアは頭を抱えていた。
「それはそれとして、腕時計の修復が終わったぞ」
考えるだけでも気が重い話は一旦置いておき、修復した腕時計をアーリアに渡した。
「なるべく元の部品を生かした修復をしたのね」
スムースに動く秒針に整った動作音は、流石は高級腕時計と言った所である。
「オリジナルはそのまま保管して、マスタングが複製を製作中だ」
アーリアがマスタングをチラッと見る。
「現在調整中です。魔石類のストックが少なく、調整に難ありです」
マスタングが短く答えた。
機械式の腕時計には部品の摩耗を防ぐ為に、石…ルビーを使っている事が多い。
人工ルビーではあるが、硬さと圧力に耐え摩耗にも強いから採用されていると言う。
現在マスタングのストックに、ルビーも無ければ代用出来そうな魔石も殆ど無いのだ。
「魔石やルビーだったか」
「買うなら冒険者ギルドか商人ギルドね…イズミは、商人ギルド1択かもだけど」
アーリアの言葉にある棘を感じつつ、イズミは腕を組んで考えた。
大きい町で買うか、何処からか調達するか。
腕時計のレア度も鑑みるに、複製出来るとは言っても賄賂に使うのは現実的では無い。
自分と魔王夫妻、後は信頼出来る者達のごく一部に留めておくのが良いだろう。
「…魔石もルビーもあるけど」
アーリアが突然のように言い、アイテムボックスから取り出して見せた。
「複製と言っても、傷も無い新品として見るなら興味があるし」
「使えるかどうか、マスタングに確かめて貰うか?」
マスタングのトランクを開け、魔石とルビーの原石を入れて閉める。
「…確認しました。問題ありません」
「では、試しに1個作ってくれ」
「サイズも同一でよろしいでしょうか?」
「今回は同一で良い」
マスタングの確認に答えると、直ぐにトランクが開いた。
オリジナルと概ね同じ…違いは傷や破損箇所も綺麗になった腕時計が実体化された。
文字盤は日焼けしたシルバー系だったが、マスタングの複製では黒になりデイト表示が消えている。
ギザギザしたベゼルはシンプルな物へ変更になっている程度だ。
金属ブレスレットを確認すると、まだサイズが未調整である。
「アーリアのお陰でまとまったからな…」
イズミはアーリアへ複製第一号の腕時計を手渡した。
「イズミとマスタングにとっては複製かもしれないけど、私達からしたらオリジナルと変わり無いみたいよ?」
アーリアが腕時計を鑑定しながら呟いた。
「レア度SS。古い時代の転移者が愛した装備品を基礎に、現代へ蘇らせた代物。最高精度の金属と魔石を使用した逸品。特殊能力の付与も可能」
「特殊能力の付与ってなんだ?」
アーリアが行った鑑定を聞いたイズミが質問した。
「道具に能力を追加、エンチャントするのよ。例えば剣に炎魔法をエンチャントして、火炎剣にするとか」
「成程。それを腕時計に?」
「使いようは様々よ」
腕時計を返して貰ったイズミは、アーリアの左手を掴みサイズを確認する。
「ちょっと何よ?」
「実験にご協力頂きまして、誠にありがとうございます」
イズミはベルトの調整数を確かめると、マスタングに仕舞った。
「マスタング、コマの調整は試しで7個だ。特殊能力ってのでアーリアにオススメはあるか?」
「魔法返しや魔力測定等かと」
「直ぐに出来るか?」
「当然です」
マスタングに頼むと、淡い光が出た直後に完成したと報告を受けた。
「…見た目は変わらないな」
取り出したイズミが、腕時計を確認するも特段の変化は分からなかった。
久しぶりに速度を出しつつ町を出たイズミ達は、速度を落とさずに走り続けていた。
「貴族と何を話してたんだ?」
「俺とマスタングの事を色々と聞こうとして来たのさ。ゴリ押しで逃げおおせたけれども、派手にやったから今後はどう立ち回ろうかと」
ベリアの質問に答えはするものの、まだアドレナリンが出ているのか口調が悪くなりそうなのを抑えつつ答える。
「ガブリオレ公爵領からは急いで脱出した方が良いか?」
「かもしれないな。今からでも誤解を解きに戻るのは…難しいか」
ベリアと2人で話し込み、本件はベリアはノータッチと言う事にして、急いでガブリオレ公爵領を通過する事にした。
「仕事中だから帰ると言ったし、今度暇な時に話をしようとも言ってるし、大丈夫…だと思っておくとしよう」
イズミは絶望的な希望的観測をしつつ、マスタングのアクセルを緩める事無く走る。
少しでも遠くへ、少しでも早くハルハンディア共和国へ向かう為に。
夕暮れ時に夜営の準備を始め、アーリアに連絡を取った。
「またやらかしたでしょ?」
転移魔法でやって来たアーリアのゲンコツを食らったイズミが、状況を出来る限り説明した。
「アンジェラ様が相手の許可も無くエリア拘束の魔法を使ったのも問題ではあるのだけど、その対応が脳筋過ぎるのよ。防御魔法を物理で突破するなんて、普通は無理よ?」
「そこは…マスタングだし」
「アーリア様、あの程度なら容易に対処可能です」
イズミのマスタングへ対する信頼感と、マスタングの規格外な対応にアーリアは頭を抱えていた。
「それはそれとして、腕時計の修復が終わったぞ」
考えるだけでも気が重い話は一旦置いておき、修復した腕時計をアーリアに渡した。
「なるべく元の部品を生かした修復をしたのね」
スムースに動く秒針に整った動作音は、流石は高級腕時計と言った所である。
「オリジナルはそのまま保管して、マスタングが複製を製作中だ」
アーリアがマスタングをチラッと見る。
「現在調整中です。魔石類のストックが少なく、調整に難ありです」
マスタングが短く答えた。
機械式の腕時計には部品の摩耗を防ぐ為に、石…ルビーを使っている事が多い。
人工ルビーではあるが、硬さと圧力に耐え摩耗にも強いから採用されていると言う。
現在マスタングのストックに、ルビーも無ければ代用出来そうな魔石も殆ど無いのだ。
「魔石やルビーだったか」
「買うなら冒険者ギルドか商人ギルドね…イズミは、商人ギルド1択かもだけど」
アーリアの言葉にある棘を感じつつ、イズミは腕を組んで考えた。
大きい町で買うか、何処からか調達するか。
腕時計のレア度も鑑みるに、複製出来るとは言っても賄賂に使うのは現実的では無い。
自分と魔王夫妻、後は信頼出来る者達のごく一部に留めておくのが良いだろう。
「…魔石もルビーもあるけど」
アーリアが突然のように言い、アイテムボックスから取り出して見せた。
「複製と言っても、傷も無い新品として見るなら興味があるし」
「使えるかどうか、マスタングに確かめて貰うか?」
マスタングのトランクを開け、魔石とルビーの原石を入れて閉める。
「…確認しました。問題ありません」
「では、試しに1個作ってくれ」
「サイズも同一でよろしいでしょうか?」
「今回は同一で良い」
マスタングの確認に答えると、直ぐにトランクが開いた。
オリジナルと概ね同じ…違いは傷や破損箇所も綺麗になった腕時計が実体化された。
文字盤は日焼けしたシルバー系だったが、マスタングの複製では黒になりデイト表示が消えている。
ギザギザしたベゼルはシンプルな物へ変更になっている程度だ。
金属ブレスレットを確認すると、まだサイズが未調整である。
「アーリアのお陰でまとまったからな…」
イズミはアーリアへ複製第一号の腕時計を手渡した。
「イズミとマスタングにとっては複製かもしれないけど、私達からしたらオリジナルと変わり無いみたいよ?」
アーリアが腕時計を鑑定しながら呟いた。
「レア度SS。古い時代の転移者が愛した装備品を基礎に、現代へ蘇らせた代物。最高精度の金属と魔石を使用した逸品。特殊能力の付与も可能」
「特殊能力の付与ってなんだ?」
アーリアが行った鑑定を聞いたイズミが質問した。
「道具に能力を追加、エンチャントするのよ。例えば剣に炎魔法をエンチャントして、火炎剣にするとか」
「成程。それを腕時計に?」
「使いようは様々よ」
腕時計を返して貰ったイズミは、アーリアの左手を掴みサイズを確認する。
「ちょっと何よ?」
「実験にご協力頂きまして、誠にありがとうございます」
イズミはベルトの調整数を確かめると、マスタングに仕舞った。
「マスタング、コマの調整は試しで7個だ。特殊能力ってのでアーリアにオススメはあるか?」
「魔法返しや魔力測定等かと」
「直ぐに出来るか?」
「当然です」
マスタングに頼むと、淡い光が出た直後に完成したと報告を受けた。
「…見た目は変わらないな」
取り出したイズミが、腕時計を確認するも特段の変化は分からなかった。
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