異世界無宿

ゆきねる

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第十五章 ハルハンディア共和国

第二百十三話 2人は後先は考えない

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「卵を運んでる最中、妙にタンクの減りが早いような気がしていたが、そう言う事か」

イズミは特に気にはしていなかったが、疑問が解決したので少し頭がスッキリとしていた。
隣で頭を抱えているフラウリアとは対照的な状態である。

「そんな能力を持ったならば、妹は争いや謀に利用されたりはしませんか?」

「今の話を聞いていたのは、私とマスタング、フラウリアさんの3名だけです。秘密にしておきましょう」

イズミは説明をするのが大変そうなので、なるべく隠匿する方向で動き出した。
沈黙は金、である。

「健やかに育って欲しいですね?」

イズミは強引に話を打ち切ろうとしたが、フラウリアの視線はマスタングに向いて固まっている。

そんなフラウリアを見ていると、グラテミア辺りには今夜中にも話をしそうは雰囲気を醸し出していた。

「いえ、秘密として隠し通すのも流石に…」

事が大き過ぎるが故に、関係者には知らせた方が良いと常識的に考えるフラウリアだった。

「それをされると、私の自由な旅が遠ざかってしまう可能性がありますよね?」

マスタングの能力はなるべく伏せて置きたいのだ。
バレたらバレたで構わないが、悪用を防ぐのと交換条件等に利用されるリスクを減らしたいからでもある。

最も、面倒なら後先を考えずに正面突破するだけである。
大好きなアクション映画よろしく、兎に角ド派手に盛大にである。
やらかした後の片付けや処理は描かれていない、スタッフロールで省略されているのだ。

「そうですね…放っておく者は少ないでしょう」

「黙っていてくれるなら、特別な物を御用意しますよ?お酒とか」

「貴方方がもう少し自重すれば、面倒にはならないと思いますよ…それと、私はお酒が飲めないの」

「それは残念です。我々は後先を考えるのが苦手でしてね」

そんなやり取りの末にイズミは屋敷へ戻ろうとすると、アーリアから久しぶりの魔法通信が入った。

「イズミ、今は大丈夫?」

「大丈夫だぞ」

そう答えると、アーリアが転移魔法でやって来た。

「ここは、ハルハンディアね…ってフラウリア!?」

マスタングの隣に現れたアーリアが周囲を確認すると、フラウリアを見て驚いていた。

「アーリアだ!」

フラウリアは素早い動作でアーリアまで接近すると、力強いハグをする。
避けようとしたアーリアだったが、フラウリアの動きに全くついていけてなかった。

「元気そうじゃない、どうして最近は顔を見せてくれないの?」

「顔を見せたらこうやって抱きついて、しばらく離してくれないでしょ?」

がっつり知り合いのようなので、取り敢えずラムネを実体化させて2人に渡す。

「ほいよ、いつものだ」

「ありがと…これが息抜きにピッタリなのよ」

そう言いながらアーリアは腕時計の実験結果の第一報を持って来た。

「あの腕時計だけど、他の誰にも渡してないわよね?」

「試作品だからな」

「性能は特級品よ。確認した限りだと、一度にあらゆる方向からの100発同時に魔法攻撃をしても全部吸収して、魔法返しが出来たわ。それも1発にまとめたり、100発でそのまま返したりも自由にね」

イズミが腕時計を受け取ると、王冠が赤く点滅している。

「小さなファイアーボール1発分を溜め込んである。イズミでも使えるか試して欲しいの」

腕時計を着けアーリアの指示通りに構えてみたが、何の反応も無かった。

「…やはり駄目か。じゃ、フラウリアさんにも協力してもらいましょうかね」

イズミはフラウリアに一声かけ、彼女の左手を取り腕時計を着ける。
突然の事に戸惑うフラウリアだったが、アーリアの説明を聞いて直ぐに動き出す。

「こんな感じ?」

左手を軽く握り人差し指を天に向けると、指先に炎が現れ小さなファイアーボールとなった。

人差し指を握り込むとファイアーボールが消え、腕時計の王冠が再び点滅する。

「付与されている能力が多過ぎて、使いにくい時があるの。魔法返しと呪い返しの2つか、魔力測定と適性判定の2つかの方が間違い無いわね」

聞くとインデックスの光る色の違いしか見た目の変化が無いようで、どの機能を使っているのかを判別するのが難しいようだ。
特に魔法返しでは溜め込んだ魔法の属性で色が変わり、他の機能とも色の被りがあって咄嗟の使用では紛らわしい。

「どの機能を使っているかの識別も難ありね」

かなりしっかりと調べてくれたようだった。
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