異世界無宿

ゆきねる

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第十八章 手掛かりを探して

第二百五十八話 猫の情報網

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猫達の餌は小袋に包まれており、皿に盛ったそれはジュレみたいな物ではなく、具の入ったスープに思えた。

ガツガツと勢い良く餌を食べ切った猫達の視線が、イズミの手元に残っている小袋に向けられる。
ベリアが猫達に近寄り話を聞いてくれた。

「おかわりだってさ」

「…分かったよ」

どうやら猫達のお気に召したらしく、皿を確認すると見事なまでに綺麗に平らげていた。
仕方なく餌を再度盛りつけると、猫達はサラッと平らげてしまう。
満足したのか身体を伸ばして去ってゆく猫や毛繕いを始める猫がいる中で、一匹のチャトラの猫がベリアと話を始める。

イズミには相変わらずニャーとかゴロニャーとしか聞こえないが、ベリアと猫の間ではしっかりと会話が成立しているようだ。
一通り話し終えた猫が大きな欠伸をすると、のそのそと宿屋の角へと歩いて何処かへと行ってしまった。

「どうだった?」

「バッチリだな!女の向った先の建物の場所も、そこに住んでる奴の事も教えてくれたぞ」

動物は見ていないようで、町に住む人々の事を良く見ているのだ。

「何日も前からその建物の主人だろう男は外出してないのも分かったし、女が建物から出て来た時の表情は険しい感じだったみたいだ。猫基準だから、その辺は参考程度になるけど。建屋へもルートも教えてくれたから、明日軽く見に行こうぜ」

その建物からは最近何かが腐ったような臭いがするらしく、猫達もあまり近付きたくないと言う。

かなり詳細な情報を猫達が持っている事にも驚きだが、そこまで出来てしまうと今後は猫を見たら観察されていると思ってしまいそうだ。

「明日な。今日は取り敢えずベリアのランクアップ祝いだ」

「この前飲んだアレがまた飲みたい!」

アレとはジントニックの事だろう。
確かベリアはまだ一度しか飲んでいなかったはずだ。

「氷を用意しないとな」

イズミはマスタングからカクテルセットを取り出してショルダーバッグに仕舞うと、宿屋に入る前に追手について確認をする。

「ベリア、追手はまだ居るのか?」

「居るけど、敵意は無いし動く感じもしない」

「…どの辺に居るか分かるか」

「あぁ、近い奴はイズミから見ると…左斜め後ろになる」

ベリアの話を聞いたイズミは、魔法通信でマスタングにも確認をする。
結果はほぼ同じで、距離としてはおよそ15m程度先の物陰かららしい。

「とっ捕まえるのも面倒だし、警告だけしておくか」

身体を伸ばしたイズミが追手がいるらしい場所へ向け、右手で指鉄砲を作りながら睨みつける。

その先にある物陰からの動きは無いが、イズミは右手を下ろしベリアと共に宿屋へと入って行った。

「そういえば気になる話もあったな」

宿屋に入ったベリアが、小声でイズミに話しかける。

「この町じゃないけど、近場の猫の縄張りに奇形のゴブリンが現れたって」

「奇形?」

ベリアが聞いた話だと奇形のゴブリンは頭が2つあり、通常のゴブリンよりも2回り程大きく、そして手足がやけに長いらしい。

「猫達の中じゃ厄災の前兆じゃないかって、ソワソワしてるらしいぞ」

そんな話を聞いておきながら、ベリアはそれを冒険者ギルドに話に行く気配は見えない。

「報告しなくて良いのか?」

「誰も信じちゃくれないさ、猫から話を聞きましたなんて」

猫の情報なら嘘でも真でも、取り敢えず確認に向かっても良いと思うイズミだったが、まずはランクアップ祝いをしておきたい。
旅の仲間の目出度い話なのだから。

「なら、それも明日調べてみよう」

「だな」

イズミは宿屋の主人に声をかけ氷を用意出来ないか聞くと、先日の酒盛りで氷を出してもらった男を引っ張って来たので、イズミは用意した金属製の桶に氷を出して貰う。

駄賃代わりに銀貨を1枚握らせると、笑顔を浮かべて去って行った。

「氷を何に使うんだ?」

宿屋の主人が聞いてきたので、イズミは簡単に答えた。

「酒を冷やすのさ。仲間がAランクの冒険者になったのでね、それのお祝いだ」

「そりゃ目出度いな!」

この前盛大に酒盛りをしたので今回は控えめにやると言うと、宿屋にある小部屋を特別に銀貨1枚で貸してくれた。

イズミは銀貨1枚を支払うと小部屋に入り、ジントニックを作り始めた。
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