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第十八章 手掛かりを探して
第二百六十七話 キメラと呪いと
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「ま…待って!」
ミレニアが何とか言葉を発したが、時すでに遅し。
女は完全に消えてしまっていた。
「イズミ、あの消え方はまさか」
「間違い無い、女神や精霊と一緒だ」
ベリアの耳打ちに小声で答える。
数日前にベリアに加護を与えた女神も、不思議な女と同じような消え方をしていたのは記憶に新しい。
だとしてもイズミには特にどうこう言う理由も無い為、マティーニを飲んで一息ついていた。
「貴方達、あの御方を知ってるのね?」
「俺は2度目、ベリアは初対面だ。ついでに言うと名前は知らん。聞く前にああして帰ってしまうんだ」
イズミは正直に答えると、チェイサーの水を飲む。
不思議な女がコチラを一方的に知っているだけであり、本当に誰なのか分からないのである。
「だが、コレで貴方の質問への回答が出来たと言って良いでしょう」
「そうね…そして、間違い無くあの御方は光の女神様よ」
ミレニアは持っていたグラスをテーブルに置くと、受け取っていた髪飾りをギュッと握り締める。
「夢じゃないわよね?」
「夢だと思うなら、コレを飲んでも驚かないだろうな。夢の中では味覚は感じないと、聞いた事がある」
イズミはベリアに飲ませた激マズの液体が入った瓶をテーブルに置く。
「それは本当にマズいから止めた方が良いって!あんなに美味しい酒を飲んだのに台無しだ!」
何故かベリアが慌てて瓶を回収してしまった。
ベリアなりの酒飲みルールがあるのかもしれない。
「さて。聞きたい事は髪飾りの事だけかい?」
「それだけでは無いわよ」
深呼吸をしたミレニアが、改めてイズミの目を見て話を始める。
「あの乗り物もそうですが、町を出て何をしていたのですか?遠くにあった魔力溜まりに向かっていたのは、ベリアさんの魔力を辿って分かっています」
イズミは一度ベリアの顔を見ると、頷いていたので話す事にした。
「ベリアが町の猫達から話を聞いたのです。そこで奇形のゴブリンが出たと言うので、確認に行ったって感じです」
「奇形のゴブリンですか?」
「結論から言うと、キメラでしたが」
キメラと言う単語を聞いたミレニアの表情が途端に険しくなる。
「これについては冒険者ギルドに調査を頼んでいまして、明日には詳細を聞けるかと」
イズミは燃やそうかと思っていた日記を取り出し、テーブルに置いて話を続ける。
「キメラを討伐した後で、近くにあった洞穴にて回収した書物です。日記かと思われますが、文字は帝国でしか使われていないものだと聞いています」
「はぁ、また帝国関係なのね」
大きなため息と共に、ミレニアは眼の前に置かれた誰かの日記を睨みつける。
「持ち主はもうこの世に居ないようね。魔力も魂も、微塵も感じないわ」
「…だと思ったよ」
ミレニアの言葉を聞いたイズミは、ベリアが聞いたと言うキメラの言葉を思い出していた。
渋い顔をしたイズミに何か言いたげなベリアだったが、その場では何も言わなかった。
「イズミでしたね、貴方が私に聞きたい事はあるかしら?」
「聞いても良いなら」
ミレニアが構わないと言うので、ベリアと顔を見合わせてから質問をする。
「この町に来たのは、誰かの治療の為でしたね?」
「詳しくは言えないけど、そうなるわね」
「治せましたか?」
ミレニアは両手を上げてから、力無く落とした。
「治す以前の問題ね。病気ではなかったから」
グラスに残っていたマティーニを飲んだミレニアがボソリと呟く。
「あれは呪いよ。呪法なのはすぐに分かったけど、あんなに手の施しようが無いのは初めてね。身体を腐らせ魔力を奪い何処までも苦しみ、しかし呪いで死ぬ事は無い正に生き地獄。どんな怨みを買ったのかしら?…コレ美味しいわね」
「それは何よりです。粗方、普段から誰かを呪っていたから、巡り巡って呪われたのでは無いですかね?良く分かりませんが」
マティーニの評価が良かったので、イズミは少しだけ呪いに関して餌を撒いてみる。
ミレニアの視線が一度ベリアに向き、その後イズミへと向かう。
ベリアはミレニアから視線を逸らし自分は知らないアピールをしていたが、それでは隠しきれてはいない。
イズミは一度周囲を確認してから、椅子に座り小声で聞いた。
「ここでは話し声を盗み聞きされる可能性は?」
「ありませんわ」
「それは良かった。ミレニアさんが黙っていてくれるなら、タネ明かしをしましょう。その代わり…」
「治療の依頼人が誰なのか、それを知りたいのね」
「話が早くて助かります」
イズミはそう言って不器用ながら笑顔を見せた。
ミレニアが何とか言葉を発したが、時すでに遅し。
女は完全に消えてしまっていた。
「イズミ、あの消え方はまさか」
「間違い無い、女神や精霊と一緒だ」
ベリアの耳打ちに小声で答える。
数日前にベリアに加護を与えた女神も、不思議な女と同じような消え方をしていたのは記憶に新しい。
だとしてもイズミには特にどうこう言う理由も無い為、マティーニを飲んで一息ついていた。
「貴方達、あの御方を知ってるのね?」
「俺は2度目、ベリアは初対面だ。ついでに言うと名前は知らん。聞く前にああして帰ってしまうんだ」
イズミは正直に答えると、チェイサーの水を飲む。
不思議な女がコチラを一方的に知っているだけであり、本当に誰なのか分からないのである。
「だが、コレで貴方の質問への回答が出来たと言って良いでしょう」
「そうね…そして、間違い無くあの御方は光の女神様よ」
ミレニアは持っていたグラスをテーブルに置くと、受け取っていた髪飾りをギュッと握り締める。
「夢じゃないわよね?」
「夢だと思うなら、コレを飲んでも驚かないだろうな。夢の中では味覚は感じないと、聞いた事がある」
イズミはベリアに飲ませた激マズの液体が入った瓶をテーブルに置く。
「それは本当にマズいから止めた方が良いって!あんなに美味しい酒を飲んだのに台無しだ!」
何故かベリアが慌てて瓶を回収してしまった。
ベリアなりの酒飲みルールがあるのかもしれない。
「さて。聞きたい事は髪飾りの事だけかい?」
「それだけでは無いわよ」
深呼吸をしたミレニアが、改めてイズミの目を見て話を始める。
「あの乗り物もそうですが、町を出て何をしていたのですか?遠くにあった魔力溜まりに向かっていたのは、ベリアさんの魔力を辿って分かっています」
イズミは一度ベリアの顔を見ると、頷いていたので話す事にした。
「ベリアが町の猫達から話を聞いたのです。そこで奇形のゴブリンが出たと言うので、確認に行ったって感じです」
「奇形のゴブリンですか?」
「結論から言うと、キメラでしたが」
キメラと言う単語を聞いたミレニアの表情が途端に険しくなる。
「これについては冒険者ギルドに調査を頼んでいまして、明日には詳細を聞けるかと」
イズミは燃やそうかと思っていた日記を取り出し、テーブルに置いて話を続ける。
「キメラを討伐した後で、近くにあった洞穴にて回収した書物です。日記かと思われますが、文字は帝国でしか使われていないものだと聞いています」
「はぁ、また帝国関係なのね」
大きなため息と共に、ミレニアは眼の前に置かれた誰かの日記を睨みつける。
「持ち主はもうこの世に居ないようね。魔力も魂も、微塵も感じないわ」
「…だと思ったよ」
ミレニアの言葉を聞いたイズミは、ベリアが聞いたと言うキメラの言葉を思い出していた。
渋い顔をしたイズミに何か言いたげなベリアだったが、その場では何も言わなかった。
「イズミでしたね、貴方が私に聞きたい事はあるかしら?」
「聞いても良いなら」
ミレニアが構わないと言うので、ベリアと顔を見合わせてから質問をする。
「この町に来たのは、誰かの治療の為でしたね?」
「詳しくは言えないけど、そうなるわね」
「治せましたか?」
ミレニアは両手を上げてから、力無く落とした。
「治す以前の問題ね。病気ではなかったから」
グラスに残っていたマティーニを飲んだミレニアがボソリと呟く。
「あれは呪いよ。呪法なのはすぐに分かったけど、あんなに手の施しようが無いのは初めてね。身体を腐らせ魔力を奪い何処までも苦しみ、しかし呪いで死ぬ事は無い正に生き地獄。どんな怨みを買ったのかしら?…コレ美味しいわね」
「それは何よりです。粗方、普段から誰かを呪っていたから、巡り巡って呪われたのでは無いですかね?良く分かりませんが」
マティーニの評価が良かったので、イズミは少しだけ呪いに関して餌を撒いてみる。
ミレニアの視線が一度ベリアに向き、その後イズミへと向かう。
ベリアはミレニアから視線を逸らし自分は知らないアピールをしていたが、それでは隠しきれてはいない。
イズミは一度周囲を確認してから、椅子に座り小声で聞いた。
「ここでは話し声を盗み聞きされる可能性は?」
「ありませんわ」
「それは良かった。ミレニアさんが黙っていてくれるなら、タネ明かしをしましょう。その代わり…」
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