異世界無宿

ゆきねる

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第十八章 手掛かりを探して

第二百六十六話 再度現れる女

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眩しさで視界が奪われたが、元に戻るとイズミとミレニア以外は倒れるように眠ってしまった。

イズミは咄嗟にショルダーバッグからマスタングが実体化させていた飲み物…クソ不味いヤツ…を取り出すとベリアの口へ注ぎ込んだ。

「うーん…ヴェェ!?」

猛烈な睡魔にも勝る衝撃の不味さに驚いたのか、ベリアが悶絶しながら目を覚ます。

「何すんだよイズミ、毒を盛られたと思ったぞ」

「すまん、緊急事態だ」

ベリアが眠い目を擦りつつ辺りを見渡し自分達以外が眠りについている事を理解すると、ミレニアの従者を揺らしてみたりするが反応は無い。

「…思ったより早くて助かりましたわ」

「数日ぶりですね、お元気ですか?」

「勿論ですわ」

酒盛りの時に会った女が、甲冑の中からすり抜けるようにして現れた。

「…そっくりだ」

その女とミレニアを交互に見たベリアが、ボソリと呟いた。
身長、体型、肌の色、髪型、顔付きまで何から瓜二つなのだ。
唯一分かる違いは、瞳の色くらいである。

「再会を祝して、何か作って下さらない?」

「昼酒ですか」

女の促しに応じるように、イズミはショルダーバッグを漁りカクテルセットを用意する。

「作れる物ねぇ…」

酒と割り材を一通り確認すると、簡単な物は作れそうではある。
しかし氷が無いので、シェイク系は難しい。

「誰か氷は出せるか?」

イズミの問に答えられたのは、ミレニアのみだった。
桶を取り出しテーブルに置くと、氷を出してもらう。

「…何を作るの?」

「カクテルです。酒と酒、あるいは果物の果汁を混ぜたりした飲み物です。まだ流行ってはいませんがね」

ウォッカにソックリなドワーフ酒と、割り材としてあったドライベルモットをテーブルに置く。
ドライベルモットも白ワインがベースなので、酒屋で探せば1本位は見つかるかもしれない。

後はレモンがあれば完璧なのだが…

「欲している物はコレかしら?」

女がテーブルに綺麗な色をしたレモンを置いたので、イズミは手に取ると同時に女の目を見つめた。

「必要ですよね?貴方の作るマティーニに。ステアでは無くてシェイクなのは、貴方のこだわりかしら」

「…本当にどうして、そこまで分かるのです?」

「さて何故でしょう」

不思議な笑みを浮かべる女から視線を外すと、イズミはカクテル作りを始める。
色々と詮索したい気持ちもあるが、眼の前の女は決して答えを口にしないと判断したのだ。

「準備も出来たし…作るか」

深呼吸をして息を整えたイズミは、その場で起きている4人分のマティーニを作り始めた。


出来る限り素早くカクテルを作り終えたイズミは、事前にテーブルへ用意したグラスへと注ぐ。

「…最後にレモンピールを添えて、コレで完成」

レモンをカクテルセットに入っていた小型ナイフでカットし、軽く絞るとグラスにそっと入れる。

「イズミ、このカクテル?の名前は」

完成したカクテルをワクワクした瞳で見ていたベリアが問い掛ける。

「マティーニ、になるかな」

イズミは皆の眼の前にグラスを移動させ、マティーニの簡単な説明をする。

「酒精の強いドワーフ酒を白ワインをベースにした酒で割り、氷を使いしっかりと冷やしました。分かるとは思いますが、酒精は強いので苦手でしたら口直しに水を飲んでください」

説明をし終えたイズミがグラスを持つと、そっと一口飲んでみる。
元いた世界で飲んでいたウォッカマティーニとは違うが、概ね同じと言っても良いだろう。

「うん、素人のシェイクでコレなら上出来かな」

「美味!?強いけど冷たくて飲みやすいし、何よりグラスで出された時が凄く綺麗だ」

ベリアが一口で半分程飲むと、尻尾をブンブンと振って喜んでいる。

「やはり貴方に頼んで正解でしたわ」

女はマティーニを飲むと、左手から何かを実体化させる。
それは、この前渡された髪飾りにソックリだった。

「これは対になる物です…ミレニア、コレを貴女に」

「私に?」

恐る恐るマティーニを飲んでいたミレニアが、女から髪飾りを受け取る。

「御守りよ。貴女のご両親に頼まれていたけど、私1人の力ではどうしようも無かった。理の外に居る彼の存在を利用しなければならない位に」

「…え?」

何かを聞きたいが理解が追い付かないのか、言葉が出て来ないミレニアの頭を撫でた女がイズミに微笑む。

「イズミ、美味しいお酒をありがとう」

「…飲みたい時はまた来な。そっちの方が面白そうだ」

「分かりました。その時は知り合いも一緒に」

そう言うと女は空気に溶けるように消えてしまった。
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