異世界無宿

ゆきねる

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第二十章 火山地帯で小休止

第三百三話 真意を探る者

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移動を始めて5日目の事。
何事も無くのほほんとマスタングを走らせていると、窓の外を眺めていたベリアの尻尾がブワッと膨らんだ。

「イズミ、一旦止まってくれ」

「分かった」

ベリアのセンサーに何か引っ掛かったのか、マスタングを減速させ馬車道の端に停車させる。

「マスタング、索敵を頼む」

「かしこまりました…敵意はありませんが、反応が3つ接近しています」

索敵結果を聞いた2人は、目を凝らして確認をするが視認出来ない。
ベリアが外に出て匂いを確認すると、確かに何者かの匂いがするが、上手く場所をぼかされているとの事だった。

「また透明化なのか、厄介だな」

そうボヤいたイズミは、マスタングを臨戦態勢の指示を出してから降車する。
敵意は無いと言うならば、此方から聞いてみる他無い。

「誰かは知らんが、話をしたいなら出て来い。出て来ないなら、無視して先へ進むぞ」

敢えて戦う意思表示をせずに相手の出方を伺っていると、ローブを纏った男が1人姿を現した。
武器場持っておらず、両手をイズミ達へ見せるようにしながらゆっくりと歩いて来る。

「…やはり悟られましたか」

「生憎、此方には頼れる相棒が居るのでね」

男の声は落ち着いているが、その目は何一つ隙を見せない。

「聞きたい事があるなら手短に頼みたいが、その前に連れの2人も姿を見せてくれた方が有り難いね」

「…分かりました」

男が左手で合図を送ると、残る2人も姿を見せて男の後ろへとやって来る。
その2人も手に武器は持っていない。

「さて。貴方達の名前は聞かないでおくとして、只の旅人相手に何を聞きたいのです?」

「我々は貴方達を単なる旅人とソロの冒険者のペアだとは思っておりません。共和国内で発生している複数の事案に貴方達の名が記載されていましたので、何か常識外の事が起きていると判断しております」

「常識外か」

「我々が入手した情報では、ラミア族とかなり友好的な関係をお持ちとか」

男の話は長くなりそうな気がしたので、一度断りを入れてから飲み物を取り出した。
話が長くなれば喉も渇くからだ。

「縁があったのさ。情報を持ってるなら聞いた事があるかもだが、あるラミア族の卵が帝国の息がかかった者に誘拐された」

「…それは把握しています。無事に保護されていると聞いております」

「その卵の保護と運搬をしていたのが、俺達なのさ」

運搬していた道中の出来事は丸々カットし、かなり大雑把な説明をする。
詳細を伝えたら更なる警戒をされかねないのだ。

「ラミア族の方から正式に礼がしたいと言われたので、その言葉に甘える事にしたって話です…それ以上の事は特段無いのですが」

「誘拐事件対応やキメラ討伐も貴方達でしたね。それとは何か関係はありますか?」

「無いな…見つけてしまったら、やるしかないでしょう。見て見ぬ振りをするのは夢見が悪くなる。結果としては保護や討伐が出来ましたが、無計画に暴れただけの無謀と判断されても反論は出来ません。そこは根無し草の旅人がする事なので悪しからず」

難しい話、厄介な話は冒険者ギルドや貴族が対応しているのだ。
ここで変に話をするのは得策とは言えない。
コップに注いだ水を飲んだイズミが、俺達を動きを観察する。

皆武器は構えていないが、油断も隙も無く戦闘になれば厄介な存在に思える。
マグナムを抜いて一発撃つまでに、何処まで詰められるか想像も出来なかった。

「しかし、ラミア族が賓客として扱う程に入れ込む理由としては、いささか無理があると考えてまして」

「それは簡単だぞ」

男達の疑問を解消する回答を、マスタングに寄りかかっていたベリアがあっさり答えた。

「イズミがラミア族からの熱いアプローチを受け取ったのさ」

「…ラミア族の卵の保護と、ラミア族からのアプローチの受諾。そうであれば納得は出来ますが」

ベリアのぼかした回答を聞いた途端、男達は疑問が解けたようだった。

「一族の娘を守った実績のある人間との間に子を作りたい、ラミア族ならばそう考えてもおかしくありませんね」

「だとすればラミア族の、かなり強引とも取れる対応にも納得が出来ます」

「ラミア族の持つ愛着と執着は魔族でもトップクラスです。干渉行為と認識されたら、それこそ大問題です」

男達がイズミから少し距離を取り、情報のまとめをしているのをベリアと一緒に眺めていると、ベリアの足元から白蛇の頭がスッと男達を確認して消えてしまった。

「お時間を割いて頂き、感謝致します…貴方も大変ですな」

丁寧な礼と共に何故か男達からも同情に近い声掛けをされてしまった。
理由が気になるが、気にした所で何も変わらないので無視する事にした。

「では、ヒュミトールへの移動に戻っても?」

「はい、ご協力感謝致します」

イズミとベリアはマスタングに乗り込むと、ゆっくりと移動を再開した。
男達の姿が消えたのを確認してから、フラウリアへ魔法通信を繋げる。

「フラウリア、さっきの連中は何者だ?」

「元老院配下の情報部です。実は族長がイズミさんを賓客として扱う決定をしまして、元老院や教会関係者に対しイズミさんへの過度な干渉禁止を強引に承認させたのです」

一目見ただけて相手の事が分かると言う事は、フラウリアも相手の情報は握っているのだろう。

「余りにも強引な対応だから、むしろ気になったという所か」

「恐らくは」

「賓客ってのは初耳だが」

「精を戴く相手を賓客として迎えないなんて、ラミア族として恥ずべき事ですので」

気軽に考えていたが、ラミア族からすると一大事なのかもしれない。
もう少しで目的地、ヒュミトールに到着する。
戦闘をせずに解決した事に新鮮味を感じつつ、マスタングのアクセルを踏み込んだ。
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