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第二十五章 オブリビアダンジョン
第四百五十話 思惑
「さて本題じゃな…儂の様な老体が現場に出て来た理由は大きく分けて2つ。1つはダンジョンの魔物がグールやアンデッド系である事だ」
オルドリンは木箱を出した時と同じように、何処からか自身の使用する武器を取り出した。
薙刀の様な武器だった。
「この武器には聖魔法を込めた魔石と、ドワーフとフェアリーの名工が施したアンデッド特攻の印がある。教会広しと言えども、アンデッドとの戦闘経験のある者は少数なのだ」
「それで貴方が」
「そんな所だ。2つ目は…お主達の調査を行い我々の立ち位置を明確にする事じゃ」
「調査をしても、何にも得はしないと思いますがね」
イズミは塔の壁に背中を預けると、小さく息を吐いた。
「そうかの?既に御子の3人は大き過ぎる程の恩恵を授かっておるだろうに」
「そうか?」
ベリアに話を振ると、首を大きく縦に振っている。
「お主は既にラミア族の賓客として認定されておるから、教会とて迂闊に関われん状況…今回のオブリビア調査はまたとない機会と判断したのだよ。国も貴族もだが、お主達の功績が大き過ぎる故に調べざるを得ないし、願わくば友好関係を築きたいと考えるだろう」
「自分達が何かしらの『おこぼれ』を貰えるとは限らないのに…仕事熱心な事で」
武器を片付けたオルドリンは、ここまで話すと持っていた水筒の飲み物を飲む。
「儂は教会への報告にはこう書こうと思っている…対象への欲望ある接近は忌避すべきであり、対象側から接近があった時に限り都度の交渉を行い、必要に応じた援助をする事に徹するべきである。その見返りは大きく、計り知れないものとなる事もある…だな」
「過大評価だ」
「御子3人が女神様より直接祝福を受けた事実だけでも、教会としては大き過ぎる恩恵なのだよ。その場に居合わせたとなると、教会としてもお主達が何かの切っ掛けを作ったと考えるしか無いだろうに」
その切っ掛けがお菓子とお酒だと言う事実は一旦伏せておく事にして、オルドリンの持論が今後の教会そのものの動きの道標になるのだろうと、イズミの頭でも理解出来た。
「お主達の戦闘能力がどれ程のものかは、過去の実践からも判断は出来る。それを踏まえても、教会側からは原則として非干渉とするように提言しよう。なにせ女神様が御子に祝福を授けた場所に居合わせながら、お主は祝福を授かっておらんように見える…なので儂はこう結論付けた」
イズミを鋭い眼光で睨みつけると、ハッキリと言い切った。
「加護や祝福が無くとも、女神様は確実にお主達を直接見守っておる。常に直接見守っているからこそ、加護も祝福も不要なのだ」
「女神様もそんなに暇じゃないだろうに」
「いや、これしか考えられん。女神様が常に見守っておられる者を教会が管理や支配下に置こうとすれば、一体どんな事が起きるか判断出来ん」
「良くも悪くも、お前は面倒な奴だと言われている気分なのだが」
あまりの言われように、思わず言葉を返してしまった。
「どうじゃろうな。そろそろ日が暮れる、儂は戻るとしようかの」
木箱から降りたオルドリンは、目の前の2人に笑みを浮かべてから塔を降りようと歩き出す。
その視線の先には、笑顔が張り付いたセリーヌが居た。
「セリーヌ、いつの間に」
「お話はしっかり聞かせて頂きましたよ」
イズミはベリアの方を見ると最初から気付いていたようで、肩を竦めて微妙そうな表情をした。
「どの辺りからじゃ」
「勿論、私に嘘をついていた所からです」
最初から聞いていたようである。
「以前から気にはなっていたのですよ。仕掛けた魔法が微妙に弄られていたり、時に仕込んだ記憶の無い印が紛れていたり。そんな器用な事が出来るのは、貴方くらいですよね?」
凄まじい圧を放つセリーヌから素早く逃げようとしたオルドリンだったが、セリーヌは先手を打って背後に回ると華麗に関節技を決めた。
その体捌きはベリアすら驚くほどである。
「あたたたた!セリーヌ、ギブじゃ!」
「言葉の割には表情に余裕があるようですが」
「そりゃ、背中に当たる膨らみがだなぁ…」
セリーヌはそこまで聞くと関節技をシッカリと決め込んだ。
「…歳の割には元気そうだな」
「元気なのは良い事だな。その元気の方向性は微妙かもしれないが」
セリーヌに引き摺られて塔から降りてゆくオルドリンを、2人は何とも言えない表情で見送った。
オルドリンは木箱を出した時と同じように、何処からか自身の使用する武器を取り出した。
薙刀の様な武器だった。
「この武器には聖魔法を込めた魔石と、ドワーフとフェアリーの名工が施したアンデッド特攻の印がある。教会広しと言えども、アンデッドとの戦闘経験のある者は少数なのだ」
「それで貴方が」
「そんな所だ。2つ目は…お主達の調査を行い我々の立ち位置を明確にする事じゃ」
「調査をしても、何にも得はしないと思いますがね」
イズミは塔の壁に背中を預けると、小さく息を吐いた。
「そうかの?既に御子の3人は大き過ぎる程の恩恵を授かっておるだろうに」
「そうか?」
ベリアに話を振ると、首を大きく縦に振っている。
「お主は既にラミア族の賓客として認定されておるから、教会とて迂闊に関われん状況…今回のオブリビア調査はまたとない機会と判断したのだよ。国も貴族もだが、お主達の功績が大き過ぎる故に調べざるを得ないし、願わくば友好関係を築きたいと考えるだろう」
「自分達が何かしらの『おこぼれ』を貰えるとは限らないのに…仕事熱心な事で」
武器を片付けたオルドリンは、ここまで話すと持っていた水筒の飲み物を飲む。
「儂は教会への報告にはこう書こうと思っている…対象への欲望ある接近は忌避すべきであり、対象側から接近があった時に限り都度の交渉を行い、必要に応じた援助をする事に徹するべきである。その見返りは大きく、計り知れないものとなる事もある…だな」
「過大評価だ」
「御子3人が女神様より直接祝福を受けた事実だけでも、教会としては大き過ぎる恩恵なのだよ。その場に居合わせたとなると、教会としてもお主達が何かの切っ掛けを作ったと考えるしか無いだろうに」
その切っ掛けがお菓子とお酒だと言う事実は一旦伏せておく事にして、オルドリンの持論が今後の教会そのものの動きの道標になるのだろうと、イズミの頭でも理解出来た。
「お主達の戦闘能力がどれ程のものかは、過去の実践からも判断は出来る。それを踏まえても、教会側からは原則として非干渉とするように提言しよう。なにせ女神様が御子に祝福を授けた場所に居合わせながら、お主は祝福を授かっておらんように見える…なので儂はこう結論付けた」
イズミを鋭い眼光で睨みつけると、ハッキリと言い切った。
「加護や祝福が無くとも、女神様は確実にお主達を直接見守っておる。常に直接見守っているからこそ、加護も祝福も不要なのだ」
「女神様もそんなに暇じゃないだろうに」
「いや、これしか考えられん。女神様が常に見守っておられる者を教会が管理や支配下に置こうとすれば、一体どんな事が起きるか判断出来ん」
「良くも悪くも、お前は面倒な奴だと言われている気分なのだが」
あまりの言われように、思わず言葉を返してしまった。
「どうじゃろうな。そろそろ日が暮れる、儂は戻るとしようかの」
木箱から降りたオルドリンは、目の前の2人に笑みを浮かべてから塔を降りようと歩き出す。
その視線の先には、笑顔が張り付いたセリーヌが居た。
「セリーヌ、いつの間に」
「お話はしっかり聞かせて頂きましたよ」
イズミはベリアの方を見ると最初から気付いていたようで、肩を竦めて微妙そうな表情をした。
「どの辺りからじゃ」
「勿論、私に嘘をついていた所からです」
最初から聞いていたようである。
「以前から気にはなっていたのですよ。仕掛けた魔法が微妙に弄られていたり、時に仕込んだ記憶の無い印が紛れていたり。そんな器用な事が出来るのは、貴方くらいですよね?」
凄まじい圧を放つセリーヌから素早く逃げようとしたオルドリンだったが、セリーヌは先手を打って背後に回ると華麗に関節技を決めた。
その体捌きはベリアすら驚くほどである。
「あたたたた!セリーヌ、ギブじゃ!」
「言葉の割には表情に余裕があるようですが」
「そりゃ、背中に当たる膨らみがだなぁ…」
セリーヌはそこまで聞くと関節技をシッカリと決め込んだ。
「…歳の割には元気そうだな」
「元気なのは良い事だな。その元気の方向性は微妙かもしれないが」
セリーヌに引き摺られて塔から降りてゆくオルドリンを、2人は何とも言えない表情で見送った。
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