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第二十五章 オブリビアダンジョン
第四百五十八話 戦力増強
翌朝。
ダンジョン調査の部隊が入口である螺旋階段前に集まっている。
イズミの居る見張り塔からは良く見えないが、直ぐ側の拠点に居る人数は明らかに少ない。
朝食を食べ終えたイズミはマスタングからクロスボウを取り出すと、ベリアと共に拠点警備をしている人達向けに貸し出しの提案をしに向かう。
「クロスボウ?確かにあれば便利ですが、常時携帯では厳しいですよ」
「警備場所に置いておけば良いんだ。何かあった時に使えるように」
「ここに拠点を設営してから魔物が出たって話は聞いてないが、Aランク冒険者のカンってやつかい?」
警備の男はクロスボウを試しに構えてから、ベリアに確認を取る。
「ここを通る風に、変な臭いが混じってるんだ。念の為に備えておきたいけど、1人では限界があるから」
「コレはレンタルってやつですかい?」
「そうなるが格安で良い。クロスボウ1つにつき銀貨1枚で、予備の弾倉も渡そう。使わなければ銀貨は返す」
「それじゃオタクらに利益が無いだろう」
男も常識はあるようで助かる。
「利益より緊急時の備えを優先してるだけさ。全員に貸し出し出来なくて申し訳ないが」
クロスボウの使い方は大体一緒なので、特に説明をする必要は無かった。
箱型弾倉なので丸型とは互換性が無いのが難点ではあるが、今回のような使い方ならば問題ないと思いたい。
クロスボウは手持ちの全てを貸し出すと、警備場所に持って行ってくれた。
これでまた少しは戦力を増強になるだろう。
昼過ぎ。
イズミは見張り塔から外にいる敵を監視していると、ダンジョン調査に出ていたと思っていたオルドリンがやって来た。
「どうしました?」
「昨夜貰った薬の効果が出て来たのでな、話をしておくべきだと思ったのだ」
置いてある木箱に腰を下ろすと、遠くを見つめているイズミへと顔を向ける。
「目の調子はすこぶる良い、身体も若い時と同じまでとはまだ言えぬが、それでも格段に違う。眠気に関しては飲んだ時だけのようだ、今朝からは特に眠気は感じておらん。この効果は何時まで続くのかを聞いておきたくてな」
「持続時間か…10日くらいかな」
マスタングに確認をすればよいのだが、そこまでトンデモな薬では無いと勝手に判断して答えた。
「それだけ持続すれば、調査が終わるまでは問題ないな。感謝するぞイズミよ、コレで魔物と遭遇しても存分に戦える」
「調査が主な仕事でしょう、危険だと判断したら撤退もご検討を」
「そりゃ当然じゃ。御子様に何かあったら、儂の首が飛ぶからの。それとだ、あの薬はあまり世に出さんほうが良いな。年寄りがこうも元気になって出しゃばり過ぎると、未来ある若者が苦労するからの」
そう言って笑ったオルドリンは、ダンジョン調査へと戻って行く。
念の為に薬の効果が持続する期間をマスタングに聞いておく。
「マスタング、あの薬の効果はどのくらい持続するんだ?」
「約15日です。その後約15日かけて効果が低減して元に戻ります」
効果は想像以上に長続きするようだ。
てっきり1年とか一生とか言われる覚悟をしてきたのだが、どうやら杞憂だったみたいだ。
「より長期間効果を持続させるのであれば、特定の条件を満たした環境で育った薬草を収集して加工する必要があります。こればかりは実体化出来ません」
「そんなにポンポンと凄い代物を実体化されると、俺も大変だから大丈夫だ」
マスタングにも実体化が出来ないものもあると知った所で、左腕の痛みがジンワリとやって来た。
今朝はロレッタに治癒魔法をかけてもらわなかったのだ。
「1日1回では微妙か」
「まだ怪我してから日数も経過してないし、そんなもんだぞ。普通の冒険者だったらその治癒魔法1回につき銀貨10枚とか、大怪我なら金貨で請求されてもおかしくないんだからな。教会の人間がやらかしたから事だとしても、ロレッタには感謝しろよな」
「…そうだな」
ベリアに促されるように光の教会のテントへ向かうと、汚れた魔石の調査の休憩中なのか外で身体を休めている者達と出くわした。
イズミの存在に気付くと、此方が声をかける前にロレッタの居場所を教えてくれた。
「ロレッタ様は右から2番目のテントにおります。腕の調子はどうですか?」
「日常生活には問題ないのだが、どうも痛みが消えなくてね」
「ナイフが刺さったのですから、治癒魔法を使った後でも無茶をしない方が良いですよ」
「努力します」
教会に所属する者達にも、お世辞であっても心配してくれる人も居るのだと感心しつつ、ロレッタの居ると言うテントに向かった。
「すみません、イズミです」
「あらイズミ様、治癒魔法ですか?」
「また痛みが強くなってきまして」
ロレッタが魔法でイズミの左腕に両手を翳すと、光の球がナイフの刺さった場所に当たる。
痛みが徐々に引いてくると、ロレッタが触診で綺麗に傷の消えた左腕に触れた。
「…如何でしょうか?」
「とても楽になりました、ありがとうございます」
「いえいえ、御子として当然の事をしたまでです」
「相棒のベリアから聞きましたよ。御子様に治癒魔法で傷を癒してもらうには、本来ならば銀貨や金貨を支払う必要があると」
「イズミ様の場合は例外です。流石に受け取る事は出来ません」
「しかし、それでは私が心苦しいのです。何かお礼をさせて頂きたい」
治癒が終わったので、話をしたかった内容に切り込んだ。
「お礼、ですか?」
「ロレッタさんにはこうして、何度もお世話になってますので。私が出来る限りの事であれば、頑張りますよ」
ロレッタは少し考え込むが、欲しい物などは浮かんで来ないようだ。
「そうですね…急には浮かばないですね」
「分かりました、浮かんで来ましたら仰って下さい。私もダンジョンの調査が終わるまではオブリビアに居りますので」
そう言ってイズミはロレッタのテントを去った。
イズミがある程度離れたのを確認したロレッタは自分の手帳を取り出すと、かなり色褪せた紙を広げて掠れた文字を指でなぞる。
「これは精霊様が仰っていたチャンスの筈…どれが良いでしょうか」
それはロレッタが御子として活動するよりも前から思い描きつつも、叶わなぬ願いと諦めていた『夢のリスト』だった。
ダンジョン調査の部隊が入口である螺旋階段前に集まっている。
イズミの居る見張り塔からは良く見えないが、直ぐ側の拠点に居る人数は明らかに少ない。
朝食を食べ終えたイズミはマスタングからクロスボウを取り出すと、ベリアと共に拠点警備をしている人達向けに貸し出しの提案をしに向かう。
「クロスボウ?確かにあれば便利ですが、常時携帯では厳しいですよ」
「警備場所に置いておけば良いんだ。何かあった時に使えるように」
「ここに拠点を設営してから魔物が出たって話は聞いてないが、Aランク冒険者のカンってやつかい?」
警備の男はクロスボウを試しに構えてから、ベリアに確認を取る。
「ここを通る風に、変な臭いが混じってるんだ。念の為に備えておきたいけど、1人では限界があるから」
「コレはレンタルってやつですかい?」
「そうなるが格安で良い。クロスボウ1つにつき銀貨1枚で、予備の弾倉も渡そう。使わなければ銀貨は返す」
「それじゃオタクらに利益が無いだろう」
男も常識はあるようで助かる。
「利益より緊急時の備えを優先してるだけさ。全員に貸し出し出来なくて申し訳ないが」
クロスボウの使い方は大体一緒なので、特に説明をする必要は無かった。
箱型弾倉なので丸型とは互換性が無いのが難点ではあるが、今回のような使い方ならば問題ないと思いたい。
クロスボウは手持ちの全てを貸し出すと、警備場所に持って行ってくれた。
これでまた少しは戦力を増強になるだろう。
昼過ぎ。
イズミは見張り塔から外にいる敵を監視していると、ダンジョン調査に出ていたと思っていたオルドリンがやって来た。
「どうしました?」
「昨夜貰った薬の効果が出て来たのでな、話をしておくべきだと思ったのだ」
置いてある木箱に腰を下ろすと、遠くを見つめているイズミへと顔を向ける。
「目の調子はすこぶる良い、身体も若い時と同じまでとはまだ言えぬが、それでも格段に違う。眠気に関しては飲んだ時だけのようだ、今朝からは特に眠気は感じておらん。この効果は何時まで続くのかを聞いておきたくてな」
「持続時間か…10日くらいかな」
マスタングに確認をすればよいのだが、そこまでトンデモな薬では無いと勝手に判断して答えた。
「それだけ持続すれば、調査が終わるまでは問題ないな。感謝するぞイズミよ、コレで魔物と遭遇しても存分に戦える」
「調査が主な仕事でしょう、危険だと判断したら撤退もご検討を」
「そりゃ当然じゃ。御子様に何かあったら、儂の首が飛ぶからの。それとだ、あの薬はあまり世に出さんほうが良いな。年寄りがこうも元気になって出しゃばり過ぎると、未来ある若者が苦労するからの」
そう言って笑ったオルドリンは、ダンジョン調査へと戻って行く。
念の為に薬の効果が持続する期間をマスタングに聞いておく。
「マスタング、あの薬の効果はどのくらい持続するんだ?」
「約15日です。その後約15日かけて効果が低減して元に戻ります」
効果は想像以上に長続きするようだ。
てっきり1年とか一生とか言われる覚悟をしてきたのだが、どうやら杞憂だったみたいだ。
「より長期間効果を持続させるのであれば、特定の条件を満たした環境で育った薬草を収集して加工する必要があります。こればかりは実体化出来ません」
「そんなにポンポンと凄い代物を実体化されると、俺も大変だから大丈夫だ」
マスタングにも実体化が出来ないものもあると知った所で、左腕の痛みがジンワリとやって来た。
今朝はロレッタに治癒魔法をかけてもらわなかったのだ。
「1日1回では微妙か」
「まだ怪我してから日数も経過してないし、そんなもんだぞ。普通の冒険者だったらその治癒魔法1回につき銀貨10枚とか、大怪我なら金貨で請求されてもおかしくないんだからな。教会の人間がやらかしたから事だとしても、ロレッタには感謝しろよな」
「…そうだな」
ベリアに促されるように光の教会のテントへ向かうと、汚れた魔石の調査の休憩中なのか外で身体を休めている者達と出くわした。
イズミの存在に気付くと、此方が声をかける前にロレッタの居場所を教えてくれた。
「ロレッタ様は右から2番目のテントにおります。腕の調子はどうですか?」
「日常生活には問題ないのだが、どうも痛みが消えなくてね」
「ナイフが刺さったのですから、治癒魔法を使った後でも無茶をしない方が良いですよ」
「努力します」
教会に所属する者達にも、お世辞であっても心配してくれる人も居るのだと感心しつつ、ロレッタの居ると言うテントに向かった。
「すみません、イズミです」
「あらイズミ様、治癒魔法ですか?」
「また痛みが強くなってきまして」
ロレッタが魔法でイズミの左腕に両手を翳すと、光の球がナイフの刺さった場所に当たる。
痛みが徐々に引いてくると、ロレッタが触診で綺麗に傷の消えた左腕に触れた。
「…如何でしょうか?」
「とても楽になりました、ありがとうございます」
「いえいえ、御子として当然の事をしたまでです」
「相棒のベリアから聞きましたよ。御子様に治癒魔法で傷を癒してもらうには、本来ならば銀貨や金貨を支払う必要があると」
「イズミ様の場合は例外です。流石に受け取る事は出来ません」
「しかし、それでは私が心苦しいのです。何かお礼をさせて頂きたい」
治癒が終わったので、話をしたかった内容に切り込んだ。
「お礼、ですか?」
「ロレッタさんにはこうして、何度もお世話になってますので。私が出来る限りの事であれば、頑張りますよ」
ロレッタは少し考え込むが、欲しい物などは浮かんで来ないようだ。
「そうですね…急には浮かばないですね」
「分かりました、浮かんで来ましたら仰って下さい。私もダンジョンの調査が終わるまではオブリビアに居りますので」
そう言ってイズミはロレッタのテントを去った。
イズミがある程度離れたのを確認したロレッタは自分の手帳を取り出すと、かなり色褪せた紙を広げて掠れた文字を指でなぞる。
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