自称病弱の姉に婚約者を奪われたけど、もう気にしない

蒼葉

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第1章

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 今日も婚約者は姉の部屋へと向かう。
 もう、完全に見慣れた光景だから、何も感情は浮かばない。

 両親は、仕事で忙しくしていて公爵家に居ないので、この事を知らない。
 だから、ウィリアムが婚約者の私を放置して姉の元へ通っているなど夢にも思っていないだろう。
 たまに『ウィリアムとの交流はどうだ?』と聞かれる度に、誤魔化すのが大変。
 姉も両親にバレていないと安心しているのか、最近はサロンでウィリアムと二人きりでお茶をして、行動が大胆になりつつある。

 ギシリ・・・。

「なに?」

 一瞬、耳の奥で聞こえた妙な音。
 周りを見回しても、何も無い。

「変ね?」

 大した事ではないと判断して、またウィリアムが帰るまで自室に籠った。





 ・・・ギシ・・・ギシ・・・ギリッ・・・

 妙な音が増える。
 寝ても起きていても頭の中で音が鳴る。

「何の音?」

 ・・・ギリリ・・・ギシリ・・・





 両親が帰って来た。
 目的は、姉の誕生日パーティーの為。
 出席者は主役の姉ターミアと両親。
 それから侯爵家の両親とウィリアム。
 後は、両親の交友関係の方達。

 当然、そこに私は居ない。
 招かれていないからだ。
 
「今日は遅くまで起きてないと駄目ね」

 生演奏が鳴り響く屋敷。
 当然、私の部屋にまで音楽は届いている。

 寝るのを諦めて、予め学園の図書室から借りてきた本を手に取る。
 大体の本は読んでしまったので、嗜好を変えて読んだことのない恋愛小説を借りてきた。

 王道のラブストーリーらしく、学園に通う下位貴族の令嬢と王太子の純愛。
 本当にあったら大問題の恋愛小説も、空想の産物だからこその憧れ。

「たしか、この国ウチの王太子様も婚約者がいらっしゃらなかったわよね」

 小説の中の王太子様も婚約者がいない所から始まる。
 周りからの重圧に疲弊しているところ、明るく健気で優しい令嬢と出会う。
 飾りのない令嬢の言葉は王太子の心を癒していく。
 自然と寄り添い合う様になる二人には身分という名の壁が立ち塞がった。
 
「まぁ、それは当然ね。最高位の王太子様と下位貴族の令嬢・・・恋人になれても、婚約者、婚姻相手になるのは到底無理。よくて愛妾か愛人扱いね」

 冷静に分析すると、結構酷い話なのだなぁと思ってしまう。
 一夫多妻を認めている国はある。
 けど、この国は例え王族でも認められていない。
 男児が生まれなかった場合は、選びに選ばれた令嬢が側室に入る。
 そのかわり、愛を求めてはいけない。

 だから、本来姉とウィリアムがしている事は不貞と見られてもおかしくはない。

「いっそ、私が居なければ二人は結ばれ・・・あら?その方がいいのかしら?」

 婚約者が変わるだけで家的には問題はない。
 これは、両家が異性の子供が生まれたら婚約させるといった内容の話。
 つまり、私でなくてもいいのだ。
 であっても、病弱でも愛し合っているのだ。両家の両親も認めるだろう。

 ふと、考える。
 普段から自分の事は自分でしてきた。
 でも、この部屋ででの事で料理とか洗濯とかしたことがない。

「家出は駄目。こうなったら、自死?」

 ・・・ギシギシギシ・・・ギリリリリ・・・

 またあの音。
 初めは耳障りだったけど、最近は少し心地よくなってきている。

「老朽化で傷んでいる所でもあるのかしら?」

 辺りを見回しても綺麗な部屋。
 痛む様な使い方はしていない。
 掃除もちゃんとしている。

「おかしいわね・・・。手を煩わせてしまうけど、セバスチャンに確認してもらおうかしら」

 自分では目の届かない所で何かが起きている場合もある。
 酷くなってからでは遅いので、明日セバスチャンに頼むことにした。



 
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