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「おい、次は俺の順番だぞ、並べ並べ」
桜中学校の同窓会です。みんな二十歳となり容姿も変わり、遠い昔のことと思い出話しに花が咲いてる。その一角で、楓と一緒に写真が撮りたがる多くの男子が、列を作っていて、の姿の姿も見られる。それもそのはず、同窓生の中でもピカイチ美人の楓は、男子だけでなく女子からも羨望のまとだ。
「彼女、この前テレビに出てたぞ。アイドルグループのセンターなんだってさ」
「見た見た、学年のマドンナじゃん」
「俺なんて、もう友達に自慢してるよ」
「あっそういえば美岬久しぶりに見たね、彼女って転校したんだったよね」
列には美岬の姿があり、そこには真崎も並んでいます。
「楓ちゃん、俺のこと覚えてる?」
「石田君でしょ、久しぶりね」
自分の名前を覚えてもらっていたことに、喜びが爆発した。
「楓ちゃんの活躍、テレビで見てるよ。あのね、楓ちゃんに伝えたいことがあって並んだんだ。それは・・・・・」
あれは5年前の中学3年生のときだった。美岬を中心とする個性が強い女子の一部と取り巻きの男子グループが、教室の雰囲気を作っていた。他の生徒たちはできるだけ彼女たちと関わることは避け、自分自身を守ってありありありありだった。
数学の授業のときのこと。
「楓、この問題解いてみろ」
そのころから芸能活動をしていた楓は、どうしても学校へ行く時間が少なくなり、簡単な計算式にも答えられないことが度々あった。
「お前、こんなのも分かんないのか」
教室ではしら~とした笑いが起こった。
「じゃあいい、誰か教えてやれ」
「先生、私が答えます。」
そう答えた美岬の学力は学年ナンバーワン。頭の回転が速く、誰もが一目置く存在なため、それだけに彼女に意見を言える者がいない、正確に言えば彼女の意見がこのクラスのすべてだった。
「さすが美岬、今日も完璧だ」
お気に入りなのだろう、教師の声が弾んで聞こえる。
「やだ、ほめられるほどでもないです」
美岬の誇らしげな声が響き渡る。
その日からだ、楓へのいやがらせ、そう、いじめが始まったのは。
「あの子、ちょっと調子に乗ってるんじゃないの」
「そんなにかわいくもないくせに、まじキモい」
それまで陰で言われてきたことが、本人に向けられるようになってきた。それも目の前で。あるときはひやかされたり、あるときは筆入れを隠されたり。その行動は徐々にエスカレートしていき、足を引っかけられたり、机に虫の死骸を入れらりたりするまでになっていった。それでも楓は抵抗することなく黙っている。
そんなとき真崎が、美岬から思いも掛けないことを言われた。
「真崎、楓に告ちゃいな。でもほんとうにじゃないよ、そのあとすぐにウソだと言ってやるんだ」
真崎に断れるはずがない。その日の放課後、みんながいる前での真崎は告白には大勢のギャラリー幾重にも取り囲んでいて、そこにはもちろん美岬たちの姿もあった。
「楓、話があるんだけど、俺、俺・・・お前のことが好きなんだ」
事情を知っている傍観者たちは、互いに目を合わせてくすっと笑い合っている。
「えっ、そんなこと急に言われても・・・」
「なんて、ウソ~」
ギャハハハ。教室いっぱいに笑い声が巻き起こり、そこには大粒の涙を流しこぶしを握りしめる楓がいた。
「わたしが何をしたっていうの、石田君まで」
そう叫ぶと、楓は教室を飛び出して行った。
楓の声を学校で聞くのは、これが最後となった。
「やったあ、楓と握手した、俺手を洗わないぞ」
「ねえ、そういえば美岬って、いじめが原因で転校したんじゃなかったっけ」
そんな噂が立っていた美咲の姿がそこにはあった。
「そうそう、自分がいじめっ子だったのに、いつしかいじめられるようになっちゃって、結局は登校できなくなり転校してったんだよね」
「あのとき、みんなざまあ見ろって思ったんじゃなかった?」
「それにしてもよく同窓会に来られたもんだ」
「さすが未だに鋼の心臓か、ハハハ」
美岬と楓が笑いながら話している様子を見て、級友たちは不思議な気持ち、いや寒々しささえ感じさせらてしまった。
次は真崎の順。彼が並んだには理由がある。手は緊張で汗だく。それはアイドルに近づけたから出る汗では決してなかった。
「楓ちゃんの活躍、テレビで見てるよ。あのね、楓ちゃんに伝えたいことがあって並んだんだ。それは楓ちゃんに謝りたくて。本当に中学校時代にしたいじめ、マジでごめん。ず~っと引っかかってたんだ。今さらだけど許してくんない?」
まともに顔を見られないまま、とにかく気持ちだけは伝えようと真崎は懇願した。
すると楓からは意外な答えが。
「ぜ~んぜん。それよりそんことあったっけ?あったとしても気にしてないから」
その一言で、この五年間の後悔の念が、音を立てて消え去っていく気分となった。
「ありがとう。だよね~そんな昔のこと気にしてるわけないよね」
さらに真崎には意外な言葉が。
「さっきも美岬が来て同じこと言ってたよ。気にしてないでと言ったら喜んでた」
「そうか、美岬も気にしてたんだ」
そう思うと肩の力が急に抜け、立ってるのがやっと。
「楓、これからもファンとして応援するからね、俺のこと忘れるなよ」
真崎は調子に乗ってしまう。
「ありがと、ファン会員ナンバー1番あげるね」
楓が怪しく微笑んだ。
「やった~。今日来てほんとよかった」
握手する手に自然と力が入る。懺悔がかなった真崎は喜び勇んで仲間のもとにかけて行った。
楓の前には変わらず列ができている。笑顔を振りまきつつも、左手はポケットに入れたままの楓。
ポケットの中にはしわくちゃになった1枚の紙切れがあった。
1 美岬 × 2 真崎 × 3 ・・・・・・・・・・
桜中学校の同窓会です。みんな二十歳となり容姿も変わり、遠い昔のことと思い出話しに花が咲いてる。その一角で、楓と一緒に写真が撮りたがる多くの男子が、列を作っていて、の姿の姿も見られる。それもそのはず、同窓生の中でもピカイチ美人の楓は、男子だけでなく女子からも羨望のまとだ。
「彼女、この前テレビに出てたぞ。アイドルグループのセンターなんだってさ」
「見た見た、学年のマドンナじゃん」
「俺なんて、もう友達に自慢してるよ」
「あっそういえば美岬久しぶりに見たね、彼女って転校したんだったよね」
列には美岬の姿があり、そこには真崎も並んでいます。
「楓ちゃん、俺のこと覚えてる?」
「石田君でしょ、久しぶりね」
自分の名前を覚えてもらっていたことに、喜びが爆発した。
「楓ちゃんの活躍、テレビで見てるよ。あのね、楓ちゃんに伝えたいことがあって並んだんだ。それは・・・・・」
あれは5年前の中学3年生のときだった。美岬を中心とする個性が強い女子の一部と取り巻きの男子グループが、教室の雰囲気を作っていた。他の生徒たちはできるだけ彼女たちと関わることは避け、自分自身を守ってありありありありだった。
数学の授業のときのこと。
「楓、この問題解いてみろ」
そのころから芸能活動をしていた楓は、どうしても学校へ行く時間が少なくなり、簡単な計算式にも答えられないことが度々あった。
「お前、こんなのも分かんないのか」
教室ではしら~とした笑いが起こった。
「じゃあいい、誰か教えてやれ」
「先生、私が答えます。」
そう答えた美岬の学力は学年ナンバーワン。頭の回転が速く、誰もが一目置く存在なため、それだけに彼女に意見を言える者がいない、正確に言えば彼女の意見がこのクラスのすべてだった。
「さすが美岬、今日も完璧だ」
お気に入りなのだろう、教師の声が弾んで聞こえる。
「やだ、ほめられるほどでもないです」
美岬の誇らしげな声が響き渡る。
その日からだ、楓へのいやがらせ、そう、いじめが始まったのは。
「あの子、ちょっと調子に乗ってるんじゃないの」
「そんなにかわいくもないくせに、まじキモい」
それまで陰で言われてきたことが、本人に向けられるようになってきた。それも目の前で。あるときはひやかされたり、あるときは筆入れを隠されたり。その行動は徐々にエスカレートしていき、足を引っかけられたり、机に虫の死骸を入れらりたりするまでになっていった。それでも楓は抵抗することなく黙っている。
そんなとき真崎が、美岬から思いも掛けないことを言われた。
「真崎、楓に告ちゃいな。でもほんとうにじゃないよ、そのあとすぐにウソだと言ってやるんだ」
真崎に断れるはずがない。その日の放課後、みんながいる前での真崎は告白には大勢のギャラリー幾重にも取り囲んでいて、そこにはもちろん美岬たちの姿もあった。
「楓、話があるんだけど、俺、俺・・・お前のことが好きなんだ」
事情を知っている傍観者たちは、互いに目を合わせてくすっと笑い合っている。
「えっ、そんなこと急に言われても・・・」
「なんて、ウソ~」
ギャハハハ。教室いっぱいに笑い声が巻き起こり、そこには大粒の涙を流しこぶしを握りしめる楓がいた。
「わたしが何をしたっていうの、石田君まで」
そう叫ぶと、楓は教室を飛び出して行った。
楓の声を学校で聞くのは、これが最後となった。
「やったあ、楓と握手した、俺手を洗わないぞ」
「ねえ、そういえば美岬って、いじめが原因で転校したんじゃなかったっけ」
そんな噂が立っていた美咲の姿がそこにはあった。
「そうそう、自分がいじめっ子だったのに、いつしかいじめられるようになっちゃって、結局は登校できなくなり転校してったんだよね」
「あのとき、みんなざまあ見ろって思ったんじゃなかった?」
「それにしてもよく同窓会に来られたもんだ」
「さすが未だに鋼の心臓か、ハハハ」
美岬と楓が笑いながら話している様子を見て、級友たちは不思議な気持ち、いや寒々しささえ感じさせらてしまった。
次は真崎の順。彼が並んだには理由がある。手は緊張で汗だく。それはアイドルに近づけたから出る汗では決してなかった。
「楓ちゃんの活躍、テレビで見てるよ。あのね、楓ちゃんに伝えたいことがあって並んだんだ。それは楓ちゃんに謝りたくて。本当に中学校時代にしたいじめ、マジでごめん。ず~っと引っかかってたんだ。今さらだけど許してくんない?」
まともに顔を見られないまま、とにかく気持ちだけは伝えようと真崎は懇願した。
すると楓からは意外な答えが。
「ぜ~んぜん。それよりそんことあったっけ?あったとしても気にしてないから」
その一言で、この五年間の後悔の念が、音を立てて消え去っていく気分となった。
「ありがとう。だよね~そんな昔のこと気にしてるわけないよね」
さらに真崎には意外な言葉が。
「さっきも美岬が来て同じこと言ってたよ。気にしてないでと言ったら喜んでた」
「そうか、美岬も気にしてたんだ」
そう思うと肩の力が急に抜け、立ってるのがやっと。
「楓、これからもファンとして応援するからね、俺のこと忘れるなよ」
真崎は調子に乗ってしまう。
「ありがと、ファン会員ナンバー1番あげるね」
楓が怪しく微笑んだ。
「やった~。今日来てほんとよかった」
握手する手に自然と力が入る。懺悔がかなった真崎は喜び勇んで仲間のもとにかけて行った。
楓の前には変わらず列ができている。笑顔を振りまきつつも、左手はポケットに入れたままの楓。
ポケットの中にはしわくちゃになった1枚の紙切れがあった。
1 美岬 × 2 真崎 × 3 ・・・・・・・・・・
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