アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

211 甲虫とヘルハウンド

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ブーン ブーン ブーン ブーン…

スカラベーだ。
標本は領都学園でも見たけど動いている実物を見るのは初めてだな。


◯甲虫(スカラベー)
別名弾丸虫。
高速で飛ぶ昆虫魔獣。
体温や音に反応して攻撃する。
高速飛翔時の破壊力は鋼鉄の兜や盾にさえ凹みを与える危険性があるため、防具なしの生身に被弾することはかなり危険。
飛行距離は最大で10メル程度。飛行前に垂直に羽ばたく予備動作の後、一気に加速する。そのため垂直飛行の予備動作中か、飛行直後の地を這う間に仕留めなければならない。
外皮は光沢もあり美しく、鋼鉄並に頑丈なため盾や兜の武具のほか各種装飾品の材料にも使用される。
食用不向き。



 「セーラさんはシャンク君と障壁の中へ。アレク君、スカラベーの倒し方は大丈夫よね?」

 「はいマリー先輩」

 「アレク、飛ぶ瞬間をよく見てろよ」

 「はい」


パンパンパンパン

キム先輩が見本を示すように、手を叩いて自身に注目を集めた。

5、6匹のスカラベーがキム先輩をターゲットに定めたようだ。

手のひらサイズ。特大のカブトムシ(雌)を思わせるスカラベー。
キラキラと輝く外皮は…確かに綺麗だよな。

1メル(1m)くらいを上昇飛翔。ここから一気に10メルほど飛行。落下するように着地。そこから再び上昇飛翔。
これを繰り返しながら近寄る5、6匹のスカラベーたち。


 「いいか。よく見ておけ。スカラベーは地面から一旦上昇、そこから一気に詰めてくるからな」

ブーン ブーン ブーン ブーン…

パンパンパンパン

手を叩きながら説明をしてくれるキム先輩。

 「あの真ん中のやつからくるぞ」

ブーンブーン と離陸したあと、ふっと間を置いて。

ギュイイイーーンッ!

弓矢と同じくらいの速さでキム先輩に向かったスカラベー。

サッ!

キム先輩が避けた。

ギュイイイーーンッ!

スカラベーはその勢いのまま、ゆるやかな放物線を描いてコツンと落下した。

 「あとは裏返せば簡単だ」

ヒュッ
ザクッ!

落ちたスカラベーを苦無の先で裏返し、そのままザクッと刺すキム先輩。
一連の作業のようだ。


 「同時に飛んでくる奴には気をつけろよ」

ギュイイイーーンッ!
サッ
ギュイイイーーンッ!

同時に飛んでくるスカラベーを右へ左へ、さっと回避するキム先輩。

 「飛翔する瞬間の進路を見極めろ。よく見れば十分避けられるからな」

 「わかりました」

 「慣れるまでは、飛び上がったとき、一瞬ふっとしたときに叩き落とすと楽だぞ」

 「やってみます!」

パンパンパンパン

キム先輩に避けられたスカラベー2匹に、俺も手を叩いて注意をひく。

おっ、2匹とも俺を向いたぞ。

ブーン ブーン 

羽を広げてヘリコプターみたいに上昇するスカラベー。

ふっ 

停止した。
ヨシ!
突貫!

ガンッ!

スカラベーを刀のみねで叩き落とした。
おぉ、これは硬いな。
まるで鉄の塊か岩を叩く感触だよ。

ゴロン

ラッキー。勝手に裏返しになったぞ。

ザクッ

剣先で刺した。
よし、もう1匹は避けてみるか。

もう1匹のスカラベーから5メル程度の距離をとる。

ブーン ブーン 
上昇して
ふっ 
一瞬、ホバリングしてから

ギュイイイーーンッ!

サッ

速っ!

矢と変わらないな。てか、小さいから余計速く感じるよ。

でも、避けられないほどじゃない。しかも真っ直ぐの直線軌道だから。

うん、大丈夫。
闘える。

避けたあと、裏返してザクッと刺した。
腹から刺したけど、やっぱり外皮はかなり硬いな。
色もキラキラとして綺麗だし。

表面外皮は鋼鉄並に頑丈だから、こいつらもまた使い道があるかな。

収集、収集と。
ふんふーん。

 「アレク、のんびり拾ってたらケツにぶち込まれるぞ!」

 「は、はいー!」


なぜかその瞬間、レベッカ寮長の笑い声が聞こえた気がした…。


ブーン ブーン 

ふっ 
ギュイイイーーンッ!
サッ
ふっ
ギュイイイーーンッ!
サッ


うん、何匹いようが充分避けられるな。
ないとは思うけど、一斉に10匹くらいに囲まれたら別だけど。

コロンコロンとひっくり返してっと。

ザクッ、ザクッ!

うん、問題なしだ。


 「スカラベーはゴーストやスカルナイトのアンデットと一緒に現れることが多々あるからな。気をつけろよ」

 「はい」


あーなるほど。
ゴーストやホネなら、通り抜けるし、当たっても大丈夫だもんな。同士討ちにならないんだ。


 「行くぞアレク」

 「はい、キム先輩」







ますますエジプトのピラミッドっぽくなってきた。
って言っても、もちろん行ったことはないんだけどね。


キャンキャン キャンキャン キャンキャン キャン…

索敵にひっかかるのは犬型の魔獣。
鳴き声もまんま犬のヘルハウンドだ。

 「ヘルハウンドだ。コイツはわかるかアレク?」

 「はい、闘ったことあります」


◯ヘルハウンド
別名黒い犬。大型犬サイズ。
全身が黒く、赤い目が特徴的なヘルハウンドは常に鳴くことから鳴き声からも接近が容易にわかる。
爪や牙の物理的攻撃に加え、口から炎を吐くのが要注意の魔獣。
毛皮には耐火性がある。
食用不向き。


いいタイミングで来てくれたよ。
ヘルハウンドの皮は耐火性が高いから欲しかったんだよね。


 「俺がやります」

 「任せたぞ」

 「はい」

キャンキャン キャンキャン

ヘルハウンドが7、8匹。
まんま大型犬だけど、コイツらも目が怖いんだよな。真っ赤に血走ってやがる。

俺を半円で囲むように寄ってきたけど、火を吐く時間はあげないよ。

「スパーク!スパーク!スパーク…」

バチバチバチッ…!
ビリビリビリビリッ!

ギャンッ ギャンッ ギャンッ ギャンッ…

あっという間に7匹のヘルハウンドは全滅した。

我ながら雷魔法は容赦ないよな。
少しずつ、力の加減もできるようになってきたし。





回廊が見えてきた。

 「じゃあ今日はここで野営しようか?」

 「「「はい」」」

 「じゃあ野営食堂作りますね」

 「セーラさん聞いた?ついに野営食堂だって…」

 「ふふ。マリー先輩仕方ないです。だってアレクは…」

 「「「変態ですから(だ)」」」

 「へっ?何?」


ズズズズズーーーーーーッ!

 「できました!野営食堂!」

 等身大フィギュアのレベッカ寮長が見守る寮の食堂だ。
 
どうかお化けから俺を守ってください、レベッカ寮長さま~
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