アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

284 40階層 水晶玉の報告

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 「「「お帰りー」」」
 「「「ただいまー」」」


 「ん?なんだなんだ?セーラとシャンクはずいぶん晴れやかな顔してんな」
 「「はいっ!」」

 「トラウマなんかものともせずだったんだな」
 「セーラは?」
 「大丈夫でした。シャンク先輩は?」
 「僕も大丈夫だったよ」
 「ん。2人ともスッキリしたいい顔なの」
 「それに引き換えアレク、なんだよお前のその微妙な顔つきは!」
 「あは、あははは‥」
 (どうせ俺だけたまたま勝てたんですよ!)



 「40階層はよ、25階層に似ているんだよな。何がって言ってもあんまり覚えてないんだけどよ」
 「「「うんうん」」」

オニール先輩が言うことに他の先輩たちが激しく賛同していた。そのくらい40階層主戦と25階層主戦は似てるんだっていう。でも俺たち25階層主戦は闘ってないからわかんないや。あっ!でも今回俺がたまたま勝てたんだとしたら来年25階層はどうなるんだろう。あーなんかドキドキしてきたよ。記憶がイマイチな闘いってことや昔縁あった人が出てくるってことはどっちも深層心理に働きかけるVRなのかな?




40階の休憩室には魔法陣もあった。

 「去年はね、ここに来たときみんなヘトヘトだったのよ。しかも食糧も尽きてたしね。だからここで魔法陣に乗って撤退したの」

この魔法陣に乗れば一瞬で地上に戻れるという。

 「今年は違うぜ!何せ食いもんはまだまだたくさんあるし俺たちも元気いっぱいだからな。まだまだ行けるぜ!」
 「「「そうだね(ああ)」」」
 「またオニールが調子に乗ってるの。調子に乗ってるオニールだけ先に魔法陣に乗って学園に帰ったらいいの」
 「なんで俺だけ帰るんだよ!」
 「さすがにそれはオニールでもかわいそうだなギャハハ」
 「でも本当に調子に乗ったらダメなの。何せここからはほとんど未知のダンジョンになるの。わかってる過去の先輩の記録だって1回だけしかないの」
 「そうだね」
 「ああそうだ」
 「だな。俺も気を引き締めていくわ」
 「それがいいの。素直なオニールはいい子いい子なの」

リズ先輩に頭を撫でられたオニール先輩はなぜか顔を赤くして喜んでいた。



そうなんだよ。みんな喜んでもいい記録なんだよ。この段階で歴代2位(去年と同じなんだけど)の学園ダンジョン記録なんだから。
もちろんこれからも学園ダンジョンの探索は続くから誇ってもいい2位だよね。


1位は今も行方不明のホーク師匠のお兄さんが記録を作った50階層。確かにここから先は過去の記録も少ないし対策も取りづらい。出たとこ勝負みたいなもんなんだ。
でもね、正直ワクワクするんだ。どこまで俺たちみんなの力が通用するのかなって。

 「俺頑張ります!」
 「私も頑張ります!」
 「僕も頑張ります!」


 「おいおいお前ら‥‥なんか頼もしくなったなあ」
 「ああ頼もしい後輩たちだ」
 「本当だなギャハハハ」

俺たちみんなあらためて気を引き締めたんだ。



 「さぁみんな集まって。水晶玉に手を置いて学園に報告するわよ」
 「「「はーい(おおー)」」」

休憩室の脇には水晶玉があった。
去年のマリー先輩たちが置いていった水晶玉だ。これにみんなの手をのせれば、なぜか学園に俺たちの居場所が伝わるんだって。本当変なとこだけデジタル化っていうか進化してるんだよなぁ。

 「みんな手を翳すよー」

10人の仲間みんなで水晶に手を翳した。

ピカッ!

一瞬水晶玉が光った。これで俺たちが40階層にいることが学園に伝わるんだ。



 「さあ学園にも私たちの位置が伝わったわ」
 「ああそうだな」
 「じゃあこのままこの階で2日休憩しましょうか。心も身体もしっかりリフレッシュして次を目指すわよ!」
 「「「はい!(おお!)」」」


 「アレク新作めし期待してるからな」
 「2日続けてうめーもん食わせてくれよギャハハ」
 「美味しいのがいいの」
 「リズ先輩の言うとおりなのです!」

 「はい、精一杯美味いの作りますからね」
 「僕も手伝うからね」
 「シャンク先輩あざーす」
 「アレクわたし‥」
 「セーラハウス!」
 「はいセーラさんはこっちよ」
 「セーラ早くマリーの横に行け」

 「くっ、チキショー‥」







【  ヴィヨルド学園side  】

それは午後2点鐘のこと。学園長室に置かれた水晶玉が突然ピカピカと点滅をしだした。

 「サ、サミュエル学園長!」

副学園長が驚きの声を上げる。

 「!」

思わず座席から立ち上がるサミュエル学園長。

 「学園長、今年の子たちがやってくれましたな」
 「ええ。特にマリーさんやタイガー君たちは2年続けてよくやってくれました」
 「これで歴代2位の記録確定ですな」
 「副学園長、早速花火をお願いしますよ」
 「もちろんです学園長。これは学園生、卒業生のみならず領全体にも明るいニュースになりますなぁ」
 「ええ、ええ。明るいニュースです」

10傑による学園ダンジョン探索40階休憩室到達の知らせ。それは50数年にわたる実質学園2位を知らせる記録。朗報だ。



ドーンドーンッ!

ドーンドーンッ!

この日ヴィヨルド学園に花火が上がった。
定期的に上がる花火は
2発ずつ。
それはヴィヨルド学園生のみならずヴィヨルド領すべての卒業生、領民に伝わる学園生の偉業を知らせる花火だった。



1年1組の教室では。

 「モーリス聞こえたか?」
 「もちろんだハンス」
 「やってくれたなアレクとセーラが」
 「モーリス様なら来年には同じくらい行けます!」
 「セバスお前どんだけモーリスが好きなんだよ」
 「うるさいセロ!」
 「でもさすがはアレク君だよね(シャンク兄ちゃんもだけど)」
 「トールの言うとおりだよ!さすがダーリンなんだよ。やったやったー!」
シナモンが雄叫びを上げる。
 「シア、アリシア?ちょっとアリシア聞いてる?」
 「えっ、ええ‥」
 「何よ!あんた泣いてるの?」
 「な、泣いてなんかいないわよキャロル!目に何か入って痒かっただけよ」
 「ふーん、泣いてないんだってシナモン」
 「ふーん」
 「「ニシシシ‥‥」」



学内の各所でも。

 「アレク来年は俺も続くからな。待ってろよー!」

ハンスが雄叫びを上げる。
 

 「おめでとうアレク隊員‥」

寮の先輩ユーリ隊長が女子寮をはるかに覗ける岩陰から小さく呟いた。

 「ビリーやったな」

6年1組のイケメン、スマイリー・フロストが空を見上げて呟いた。

 「やっぱりアレク君はすごいわ」

シナモンの先輩である学園No.1女子獣人のライラが呟いた。

 「へぇーあの変態君がねー‥‥おめでとう変態アレク君わんわん」

犬獣人のミックス、芸術クラブのステファニーちゃんも呟いた。



学生寮のあの2人にも聞こえた。

 「お兄ちゃん!」
 「ええ、ええ、ナタリー‥‥うっ、うっ‥」
 「もう!お兄ちゃんが泣いたら‥‥気持ち悪いわよ!」
 「だって、だって‥あの子は、アレク君は!アレク君はあんなに緊張してたのよ!それがよくぞ‥‥うっうっ‥‥どっせぇぇぇーーいっ!」

男子寮寮長レベッカと女子寮寮長のナタリー。2人の兄妹も抱き合って喜び合うのだった。




【  領領ヴィンランドside  】

冒険者ギルドでも。

花火を聞きつけた受付嬢ヒロコがギルド長室に駆け込んだ。

 「顧問、ギルド長!今学園から2発花火が上がりました。アレク君が、アレク君がやりました!」
 「ロジャー、あのクソガキ1年めで早くも頭角を表してきたな」
 「タイラー、当然だろう。でもな6年までに銀級に上がれって言った話、下手すりゃもっと早くなるぞ」
 「ガハハハ。おもしれーじゃないか」
 「ハッハッハ。だな」



商業ギルドでも。

カミール・ミョクマルギルド長とミランダ受付嬢も話に花が咲いた。

 「ギルド長聞こえましたよね?」
 「ええ花火が2発聞こえましたよ」
 「ミランダさん。アレク君が帰ってきたらびっくりすることが2つ増えましたね」
 「2つ?」
 「ええ。アレク商会のメイプルシロップをが想定以上に業績を上げていることだよ。でもう1つのほうがアレク君にしたらもっとびっくりするのかな?クックックッ」
 「もうギルド長ったら!」



鍛冶屋街でも。

ヴィヨルド領刀鍛冶の至宝の2つ名を持つドワーフのヴァルミューレも刀を叩きつつ、ニッコリと微笑んだ。

 「やったねアレク君」



それは大人気の食堂森の熊亭でも。

女子3人組の冒険者マジックラブのアリス・フローラ・タマラが今まさに店を出るときだ。

 「おじさんおばさんごちそうさま、王都に帰るね」
 「うっ、うっ。3人とも元気でな。また必ず来てくれよ。うっ、うっ。おじさんは寂しいよ。」
 「だからなんでアンタは泣いてんだよ!
アリスちゃん、フローラちゃん、タマラちゃん元気で頑張るんだよ。また必ず会いにきてくれよ」
 「「「ええ」」」

ドーンッ ドーンッ

 「あら花火?お祭りでもあるの?」
 「!あれは‥アレクちゃんだよ!アレクちゃんがやったんだよ!花火2発だから学園ダンジョン50年で2番めの記録を立てたんだよ!」
 「「「すごーい!」」」
 「へぇーやっぱりアレク君はすごいわね。帰ってきたら私たちからもおめでとうって言っていたって伝えといてね」
 「わかったよ!」
 「「「じゃあね」」」

そんなマジックラブの3人が森の熊亭の開き戸を開けたときだ。

 「あっ!」
 「「わっ!」」

そこに急に店内に飛び込んできた若い女性2人とあわやぶつかりそうになるマジックラブのアリス。

 「あっ、ごめんなさい」
 「いえ、こちらこそごめんなさい」
 「ごめんなさい」



 「見たタマラ?今の獣人の2人?」
 「見たわよアリス!なにあのきれいな肌!」
 「それに引き換え私たちはどんどん黒くなってるわ‥‥」
 「フローラそれは言ったらダメよ‥‥」




3人組と入れ替わるように森の熊亭に飛び込んできた若い女性の2人組。
それ蛇獣人の双子ローラとマーラだった。

 「おばさん、花火聞いた?シャンク君すごいわね!トール君はまだ学校なのね」
 「あらローラちゃんとマーラちゃん」
 「トール君も嬉しいでしょうね」
 「シャンクはトールにとっちゃ兄ちゃんだからね」
 「ローラちゃん、マーラちゃんお祝いだよ!好きなもん食べてくれよ!」
 「いいのおじさん?」
 「当たり前だよ」
 「「やったー!」」
 「何にすんだい?」
 「もちろんパンケーキよ!」





10傑が40階層休憩室に到着したニュースはあっという間に領都に広がった。それはメイプルシロップが生み出したヴィヨルド領の活況とあわせて誰もが笑顔になれるニュースとなった。



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