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第2章 幼年編
287 41階層にむけて(前)
しおりを挟む思い思いに過ごした2日間の休憩室。ゆっくりしなきゃって思うんだけど、やっぱりずっと動いてしまってたよ。マリー先輩もキム先輩も呆れてたけど、楽しかったからいいよね?
「故郷の味に近かったぞ。うまかったよ。アレクありがとうな」
2日めのお昼は椰子の実から採ったココナッツミルクを使ったエスニック風のスープ麺だ。
麺料理は今回初登場した。
お米の麺(たしかベトナムではフォーって言ってたっけ)をラーメン風にしたんだけど海洋諸国出身のキム先輩からココナッツスープが故郷の味によく似てたと喜ばれた。みんなからも大好評だった。俺的には麺だからお箸で食べたいんだけどね。さすがにこれはムリかな。どこかお箸を使うところがあればいいんだけどなぁ。
ココナッツ。
グリーンカレーも作りたいよなぁ。まだ唐辛子以外の材料が見つからないけど。
みんな大好き別腹は2日続けてクレープ。飽きるどころか大食いのみんなからは歓迎された。結局俺とシャンク先輩でクレープを焼きまくったよ。
▼
食後、みんなで打合せ会議となった。
「さて‥‥明日の41階層からは誰もがみんな初めての探索よ。何せ過去のダンジョン探索記録も1回しかないんだからね」
マリー先輩が真剣な表情で会議を取り仕切っていく。楽天家のオニール先輩もさすがに真面目な顔で頷いている。
「ビリーあらためてみんなに説明してくれる?」
「いいよ」
学園随一の頭脳派でもあるビリー先輩は過去の学園ダンジョンの記録も研究してるみたいだ。
だからビリー先輩の考えや指針は絶対に聞き逃せないよ。
「ここから先に残る記録は51階層の途中までだね。でも1回限りの記録だから差し引いて考えたほうがいいのかもしれないね」
「「「うんうん」」」
「或いは先輩たちの総合力に僕たちが大いに劣っていることも考えられるよ」
「「「うんうん?」」」
「これからオイたちが苦戦するかもってことだな」
「そうなの。だからオニールは油断しちゃダメなの」
「ああ、わかってる」
おおー!オニール先輩がいつもと違う真面目な人みたいだよ。
「ん?なんだアレク?」
「い、いえ。なんでもないです‥」
「当時総隊長だったデューク・エランドル先輩が、51階層のトラップを踏んだ仲間を庇って今も行方不明なのはみんなも知ってるとおりだよね」
「「「うんうん」」」
「だからここからはトラップにも充分気をつける必要がある」
「「「うんうん」」」
トラップ。
なんか響きが怖いよな。魔法陣でいきなり知らない場所に飛ばされるのは絶対嫌だよ!
「で、このあとの41階層は魔物はでないけど雨と風がすごいみたいだね。油断してたわけじゃないんだろうけど突風に飛ばされた女子もいたって記録があるよ。僕たちも人はもちろんリアカーと荷物が飛ばされないような対策がいるだろうね」
「でもよ、雨は我慢すりゃいいけど風はどうする?リズなんかすぐに飛んでっちゃうぞ」
「ん。じゃあオニールにおぶさっていくの」
「ちょっ!おま、おまえ‥」
ふふふふ
フフフフ
リズ先輩とマリー先輩が頷きながら笑っている。オニール先輩はなぜか顔が赤くなってたけどなんでだろう。
ビリー先輩が俺を見て言った。
「リアカーについてはアレク君何か考えてるよね?」
「はいビリー先輩」
「じゃあリアカーについてはあとでアレク君から話をしてもらうね」
「わかりました」
「回廊を挟んでその次の42階層は高低差のある火山帯。地面も熱い。ここではゴーレムが出現するみたいだね」
「ゴーレムか‥俺の槍じゃキツいんだよな」
「アレク君の土魔法で進行を妨げられればいいんだけどね」
「ああそうだな」
同じボル隊のマリー先輩やキム先輩はそう言ってくれるけど‥‥。
「タイガーはどう思う?」
「アレクの土魔法やリズの重力魔法が十全に発現できたらゴーレムもそれほど問題はないだろうな。でも、もしなんらかの状況で土魔法や重力魔法が使えないことも考えとく必要があるな」
「うん、そのとおりだね」
これまで以上に対策が必要ってことなんだろうな。
「それと次の41階層からは1つの階層の探索に何日もかかるみたいだね。僕たちもそのつもりでいたほうがいいだろうね」
「「「うんうん」」」
「あと階層と階層を繋ぐ回廊もこれまでとは違うね。どうやら回廊では魔獣も出てこないみたいだよ。直線1エルケ(1㎞)だからここでしっかり休憩して先に進む方向でいいだろうね。まずはこんなとこかな」
「みんなわかった?」
「「「ああ(はい)」」」
「じゃあアレク君リアカーについて話してくれるかい」
「はい。えーっとリアカーもなんですけど他にも提案があるんです。いいですか」
「なにアレク君?」
「明日の出発をもう1日2日延ばせないですか?」
「それはどうして?」
「はい強風対策でリアカーはアラクネ糸で全体を縛れば大丈夫だと思います。ですが41階層は強風プラス大雨の心配もありますよね」
「そうだね」
「雨も長時間濡っぱなしだったら体温を奪われることにも繋がります」
「そのとおりだね」
「だから全員の雨除け合羽をセーラに作ってもらいたいんです。材料の蜻蛉の翅はいっぱい確保しましたから」
「セーラさん1日でできるの?」
「はいみなさんのサイズもだいたいわかってますし、切って縫うだけです」
「すごいの!」
「ええすごいわ。私なんか決まりきったものを縫うことしかできないわ」
布さえあれば服まで作っちゃうんだもん。俺も縫い物を教えてもらおうかな。
「それと火山の42階層では火傷したりリアカーの荷物が燃えたりする可能性もあると思うんです」
「可能性は大いにあるだろうね」
「そこで考えたんですけど、耐熱性、耐水性のあるヘルハウンドの毛皮もたくさん積んでありますからこれでみんなの上着と2台のリアカーを覆うものをセーラに編んでもらいます。それもセーラできる?」
「はい大丈夫です」
「みんなの服とリアカー自体の防御力を上げるってことね」
「はい。それとリアカー自体も仕様を変えます。今までは2輪だったリアカーの輪を4輪に変えます」
今の一輪車のリアカーを金属の輪にした4輪にするんだ。4輪なら安定性があるから転け難い。矢尻用に蓄えた金属の備蓄も2隊分あわせてけっこう増えたからね。ここからは出し惜しみはしない。
それとリアカーの金属輪にはゴムも貼りたいし。
「あとみんなの戦闘靴にも着脱のできる脚絆とアイゼンを作ります」
「アイゼン?脚絆?」
「アイゼンは風で持ってかれないようにする金属の棘です」
「「へぇー」」
「脚絆は?」
「大雨で戦闘靴に水が溜まらないようにする足首を守るものです」
「これもヘルハウンドの毛皮で作ります。止め金を付けるだけですから縫い物のできない俺でも作れますし」
「ダメです!アレクは字と同じでセンスのカケラもないんですから私が手伝います!」
「字と同じって、センスのカケラもないって酷くない!」
「ああわかる!あのゴブリンの落書きみたいな看板、あれアレクの字だろ?」
「えっ?!」
「あれ字だったのかギャハハ」
「‥‥」
「でも横の絵はうまかったな」
「「「うんうん」」」
「あーわかった!あれは絶対シャンクだろ?」
「はい僕が描きました」
「「「やっぱりな」」」
「クククッ。じゃあその脚絆はアレク君、セーラさんにも手伝ってもらおうか?」
「はい‥‥」
屈辱だよ!俺の字がゴブリンの落書きだって……。
でもこれで41階層の雨風対策に42階層の耐火耐熱対策もできる。
「じゃあもう1日どころか2日にしたらいいんじゃないかな。マリー、タイガー?」
「ええいいと思うわ」
「ああ俺も賛成だ」
「じゃあ今日からはあと3日、アレク君とセーラさんにはよろしくお願いするね」
「「はい」」
そんなわけで41階層42階層対策が始まった。
「他には何かない?」
「あの‥‥」
それはシャンク先輩からの提案だった。
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