アレク・プランタン

かえるまる

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第2章 幼年編

352 仲間の想い

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学園ダンジョンから帰還したアレクとセーラの姿に1年1組10傑の仲間は心から安堵をした。そして。
安堵と同時に。学園に戻ってきた2人が宿す雰囲気がこれまでとは違っていることに皆が気づいていた。

 「ダーリン、なんか雰囲気が変わった」
 「ああ。セーラもなんか変わったよな」
 「何があったのかしら」
 「みんな担架で運ばれてたって言うしな‥」
 「「「‥‥」」」

 「「「聞かなきゃ」」」





 「ダーリン明日の午後3点鐘にトールの家に集合だからね」
 「わかった」
 「遅れるなよアレク」
 「大丈夫だよ」
 「セーラもな」
 「はい」

ダンジョンから帰還して。
クラスの学年10傑のみんながトールの実家の森の熊亭で帰還祝いのごはん会を開いてくれたんだ。

俺とセーラはそのとき、あらためてみんなに応援してくれたことへの感謝を伝えたんだ。

 「「みんなありがとう」」
 「みんなに手紙までもらったんたのに‥‥緊張してて‥‥さーせん」
 (うん‥‥手紙どこに失くしたんだろう)


 「「アレクちゃん(君)!セーラさんも!2人ともよく帰ってきてくれたね」」
 「おじさま、おばさまありがとうございます」
 「おじさん、おばさん今日は俺たちのためにありがとうね」
 「無事じゃなかったみたいだけど‥‥元気に帰ってきてくれて私はうれしいよ」
 「よ、よかったアレク君‥うう‥」
 「アンタ!なんでまた泣いてんのさ!縁起でもないこと考えてたんでしょ!」

 ワハハハ
 フフフフ

バチコーンとトールの親父さんの背中を叩くおばさん。2人のかけあい漫才のような姿を見てあらためて帰ってきたんだって思ったよ。

 「「アレクちゃんお帰りー」」
 
トールの双子の仔熊ステファンとステファニーもトテトテと迎えてくれる。

 (久々の仔熊だよ!)

 「ダーリン‥」
 「アレクお前‥」

俺は興奮のあまり、2人を抱きしめて熊吸いを始めていたそうだ。

 「ステファンちゃんも元気でちたくま?ステファニーちゃんも元気でちたくま?」
 「「キャッキャ。くすぐったい!やめてよアレクちゃん」」
 「2人ともかわいいでちゅねー!たまらんくま(すーはーすーはー)」

 「アレクちゃん‥‥」
 「母ちゃん‥ダメだよ」

スイッチが入った俺も見てみんなが引いていたそうだ……。

 「(変わんないわね‥‥)」
 「(変態よアレク‥‥でもちょっぴり安心したわ)」


 「「「で、どうだった?」」」

みんなの視線が俺とセーラに向く。

 「決まりだから具体的には言えないんだ。ごめんな」
 「ごめんなさい」
 「「ああ、仕方ないよ」」

みんな理解してくれたよ。でも言ってもいいことだけはざっくり説明しなきゃ。

 「魔物は魔法で倒したの?」
 「うん。魔法しか効かない魔物もいたし、魔法が効かない魔物もいたからね」
 「暑いの?寒いの?」
 「暑い所もあったし雪で一面覆われた所もあったよ」
 「どれくらい強い奴がいた?」
 「うーん具体的には言えないけど‥」

口籠る俺に、セーラがハッキリと言ったんだ。セーラもこのダンジョンの経験から思った言葉を溜め込まずに言えるようになったんだ。

 「アレクは2回死にかけたの」
 「「「マジか‥」」」
 「死にかけたって、アレクお前曲がりなりにもモーリス様にも勝って学園でも3位なんだぞ?」

焦ったようにモーリスの従者のセバスが怒ったような大きな声で言ったんだ。

 「本当だよ、セバス。俺は2度死にかけたんだ」
 「ほ、本当なのかアレク」
 「ああモーリス。本当のことさ」
 「「「‥‥」」」

あ~なんか雰囲気が悪くなったな。俺のせいだよ……。

 「じゃあさアレク、俺たち学年10傑も何年かしたら全員で探索できるよな?」

狼獣人のハンスが努めて明るく問いかけてくれたんだ。

 「「ああ!(ええ!)」」

俺もセーラも即答したよ。だってこのメンバーならって思ったから。

 「今から準備できることはある?」
 「いっぱいあるよ」
 「特に何が大事なの?」

火魔法を発現する赤髪のアリシアと風魔法を発現する銀髪のキャロルが準場に俺たちの目をじっくり見つめながら言ったんだ。

 こくん
 こくん

 頷きあってからセーラが言ったんだ。

 「1番大事なのはチームワークだと思いました」
 「「「チームワーク?」」」

俺も強く頷いて言葉を繋げたんだ。でも‥‥みんなには深く響いてないよな……。

 「1人では勝てない魔物も2人なら勝てるよね」
 「「「ああ(うん)」」」
 「2人では勝てない魔物も3人なら勝てるよね」
 「「「ああ(うん)」」」
 「でも5人のチームでも勝てるか勝てないかわからないとき‥‥そのときチームワークが活きてくるんだ。チームワークのおかげでギリギリ勝てたんだ」
 「「「それって?」」」
 「そのまんまの意味だよ」
 「私たちはこれからの学園生活をもっともっと仲良くしなきゃならないんです」
 「ああ。稽古や修練だけじゃなくってな。毎日を心から仲良く過ごすんだ」
 「「「???」」」

そりゃそうだよな。チームワークって言ったってわからないよな。
俺もリズ先輩から契約魔法をかけられるまではそこまで大したことないって思ってたもん。だいたいみんなにはまだ契約魔法の存在については言ってないんだし。


そんな中、オニール先輩の後輩、モンク僧見習いのセロが一言一言を噛みしめながら問いかけるように言ったんだ。

 「だってお前の魔法にマリー先輩の精霊魔法、リズ先輩の重力魔法や火魔法だろ。それだけでも凄いよ。さらにそこにタイガー先輩やゲージ先輩の体術、キム先輩の斥候にオニール先輩の棍、ビリー先輩の矢だから‥‥歴代でも有数の強さだから2位なれたんだな?」
 「「違うよ(違います)」」

セーラと俺は即答したんだ。

 「たしかに先輩たちの力はすごかったよ。魔法も体術も弓術も槍術もどれも歴代の学園でも屈指だと思う‥」
 「だよねダーリン」
 「そうだよアレク」

シナモンやハンスの気持ちもわかる。目に見える力の強さは何よりも俺たちみんなが目指す強さの指針になるってことも。

 「それでもね‥‥最後は逃げ帰ったんだ。最高の先輩たちと挑んだ最高のチームワークだったんだよ。それでも‥‥足りなかった」
 「「アレク君(ダーリン)‥‥」」
 「俺は死にかけたよ。セーラやリズ先輩がいなかったら‥‥死んでたよ」
 「「「‥‥‥」」」
 「死にかけた俺を救ってくれたのは力の強さじゃないんだ。みんなの信頼、チームワークなんだ」
 「マリー先輩やタイガー先輩も言ってました」
 「私たちが6年1組になったときは先輩たちの6年1組よりも絶対強くなってるって」
 「ああ。だから今回の2位の記録を超えられるのは俺たち1年1組だって」
 「それとトール。もうポーターは要らないからね」
 「えっ?」
 「ポーター無しで荷物を運べる手段も見つけたんだよ」
 「そうなのアレク君?」
 「ああ。だからトールも含めて全員で闘うんだ」
 「アレク、お前変わったな」

モーリスが俺と肩を組み、微笑みながら言ったよ。
 (俺からすればお前も変わったよ。だいたいお前、そんな優しい目をしてたか?)

 「変わったのかな。自分ではわかんないけど」
 「変わったよ」
 「めっちゃ変わった」
 「セーラも変わった」
 「「「2人とも変わった」」」

「でも俺はもっともっと努力する。もう泣きたくないからね」
 「「おおー!」」
 「にゃー!」
 「「うん」」
 「シャーっ!」

みんなの気持ちが1つにまとまったんだ。


 「というわけで、今日はすごいものを食べてもらうからね。ダンジョンで見つけた米っていう主食なんだ」
 「ククッ。こんだけ盛り上げといて飯の話かよ!まったくお前らしいよ」
 「ダーリンこめ?」
 「うん。米、またはご飯」
 「残念ながら今日は1回限りだけどね。麦みたいにこれから植えるから次は秋にお腹いっぱい食べられるよ」
 「「「へぇー」」」
 「おいしいのアレク君?」
 「間違いなし!秋には森の熊亭でみんながパン以上に食べてるよ。絶対に」

あー領民みんなが丼抱えて食べてる光景が目に浮かぶよ。

そんな米を俺はオーク肉から揚げたカツとタマネギーとコッケーの卵でとじたもの、カツ丼をみんなに振る舞ったんだ。帰還祝いで散々食べた後だったのに、みんなが完食してたよ。

 「「うまっ!」」
 「何これ!」
 「オーク肉を揚げたものにこんなに合うなんて!」
 「本当だ。この料理ならパンより絶対ご飯?だね」
 「「「旨~い!」」」

トールの双子の仔熊にも食べてもらったよ。
喜んでカツ丼のスプーンを上下する仔熊2人。

 「おいちいでちゅかー?」
 「「うん、おいちい!」」
 「よかったでちゅねー!」
 「「うま、うま」」
 「おいちいでくまーか。よかったでちゅくまー」

 「(なあアレクってますます変態になってねぇか?)」
 「(セロしーっ)」


こうして1年1組の仲間とも再び仲良く話せたんだ。



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