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第2章 幼年編
353 ミューレさんの想い
しおりを挟む鍛冶屋街のミューレさんのところにも帰還の報告と相談に行ったんだ。
ドワーフのヴァルミューレさんは兄ヴァルカンがヴィンサンダー領の至宝と呼ばれるように、ヴィヨルド領刀鍛冶の至宝って呼ばれてる。2人とも俺の大好きな兄妹なんだ。
カーンッ カーンッ カーンッ‥
ミューレさんの工房からはいつものように刀を叩く規則正しい音が聞こえる。なんか良いよな。俺はこの音を聞くと心が落ち着くんだ。
「ミューレさんただいま」
「まあアレク君お帰りなさい」
「おおアレク帰ったかギャッギャッ」
ミューレさんに憑くトカゲも笑った。
「ずいぶんと永い間‥‥よく頑張ったわね」
そう言って俺を抱きしめてくれたミューレさん。ドワーフ族のミューレさんは俺と変わらない背の高さだ。横幅はしっかりあるけど。
「よく頑張ったね。えらいぞ‥」
ミューレさんが俺の背中をさすってくれる。
なぜかな。涙腺がヤバい。やっぱ俺にとって大事な人なんだよな、ミューレさんも。
「どうだった?」
「うん‥‥2回死にかけたよ。ははは」
「それで!?」
「うん。油断はしてなかったよ、もちろん。それでも‥‥思ったとおりにいかなかった。‥‥ごめんね。ミューレさんの言うとおりだった。もっと身体を守る防具を考えなきゃいけないって思ったよ」
「良いのよ。行く前にいったよね。毎年改良してけば良いんだって」
「うん‥‥」
▼
「それでねミューレさん」
ドロップ品の時計について話をしたんだ。
「あの時計塔はアレク、お前が発現したんだよな?」
「うん。ノームにも手伝ってもらったからね」
「お前ヒューマン(人族)だよな?ギャッギャッ」
「うん人族」
わははははは
ふふふふふふ
ギャッギャッ
ドロップ品の時計はダンジョンから出すときに、一旦バラして同じ部品も発現してあるから同様のものを再現できるって話をミューレさんにもしたんだ。ものづくりに長けた鍛冶屋街の人たちなら大きさや形を変えた時計まで作れるだろうし、そう言ったさまざまな時計で産業化できないかって。
「それはすごいわね」
「うん。学園長にも相談したら快諾してくれたよ」
「ご領主様と商業ギルドはどうなの?」
「うん。まずは領内の各町にも設置できるようにご領主様に話をしてくるって。商業ギルドのミョクマルさんのとこにも行くって」
「まあ。ダンジョンで死にかけたって言ったアレク君がそんなことまで。ふふふ」
「鍛冶屋街の人たちは協力してくれるかなあ?」
「そうね。時計作りはドワーフに限らず若い職人の育成にもなるし、逆に歳をとって体力に自信が無くなった年寄りにもいいことかもしれないわ」
「じゃあミューレさん‥」
「ええ。鍛冶屋街は私が責任をもって話をまとめておくからね」
「うん!」
このあとミューレさんとは時計の可能性についても話をしたよ。領内各地に時計台を置くことから、いずれは領内各戸の壁に柱時計やさらには腕時計も普及させたいって話にまでね。
「じゃあミューレさん。俺一旦田舎に帰るからまた来月から手伝わせてください。よろしくお願いします」
「アレク君忙しいでしょ。鍛治仕事はもうやらなくていいのよ」
「違うよミューレさん。俺、ここで刀を叩くのが好きなんだ。たしかに忙しいだろうけど、また普通にここで過ごしたいんだ。ダメかな?」
「ダメなわけないわよ。ええ、ええ。またこれからも来て手伝ってね。こちらこそよろしく」
春からまた俺の大好きな鍛治仕事もできる。
アレクが去った工房の扉を見て。ヴァルミューレが独言た。
「本当に良い子を紹介してくれたわ。お兄ちゃんにしては良い仕事をしたわね」
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